第41話 準備

 俺は侯爵家に呼ばれ男爵と村を賜った。

 アレンの街から馬車で2日のところにある、ヴィラーという小さな村だ。


 そして俺はオルガさん達3人に、一緒に来てくれるように誘った。


「もし良かったら3人共、俺と一緒に来ないか?」


 オルガさんが口を手で押さえながら俺に聞く。


「それは同行者として、それとも…」


 や、やばい。そんなことまで考えていなかった。

 ただ今まで通り、みんなで楽しくやって行ければと思っただけだ。

 でも来ないか、と言う以上は形になるものを示さないと駄目か。

 俺は一瞬うつむき顔を上げ、オルガさんの目を見つめて言った。


「も、もちろん、男爵夫人としてだ」

「あぁ…」

 オルガさんは手で顔を覆い泣き崩れてしまった。


「良かったね、オルガ。エリアスと出会ってから、ずっと好きだったものね」

 そうルイディナさんが言う。

「私も勿論、一緒に行くよ。もう21歳だし。このままエリアスが、もらってくれなかったら行き遅れだからね」

「私もエリアスっちと一緒に行く。私は子供が欲しいだけだから三番目で良いわ」

「じゃあオルガ一番で、私は二番だな」

 パメラさんとルイディナさんが順番を決めている。



 あれ?

 結婚て、そんな感じなの?

「ルイディナさんにとって結婚てなんですか?」

「結婚ね。安定かな」

「私も~。将来の不安がない生活が一番よね」

「パメラったら。でもじじいや嫌いな人だったら嫌かな。でもエリアスなら優良物件ね」

 あぁ、生活するために結婚し、愛情はその次なのか。


「この国は一夫多妻制でもいいの?」

「経済力があれば何人でも奥さんはもてるわ」

 ルイディナさんが説明してくれる。

「私達みたいに3人いたら奥さんにするなら第一夫人、第二夫人とか。それが嫌なら2人目からは側室ね」

「みなさん全員、奥さんです」

「それならオルガ、私、パメラの順で良いわよね」

「あ、はい」


「エリアスっち、アリッサさんはどうするの?」

「どうするの?て言われても」

「私は一緒でも良いよ。聞いてみれば?逆に声を掛けないと怒られるかもよ?」

 怒られる?


「私も良いけど、順番はどうするのよ」

 パメラさん、ルイディナさんも賛同する。

 結婚てそんな感じなのか?


 

 オルガさんが言う。

「みんな平等に愛してくださいね」

「オルガさん実は公爵から、支度金と言う事で500万もらいました。このお金で、身の回りの物を買い揃えましょう。それと馬車かな。どこで売っているのかな?」

「馬は牧場、馬車は馬車屋ね。馬車屋は街中にあるから見に行くのも良いわね」

「さすがルイディナさん。冒険者ギルドに顔を出してから馬車屋に行きましょう」


 俺達4人では冒険者ギルドに向かった。

 受付にアリッサさんがいた。

 アリッサさんの手が空くまで、俺達は飲食コーナーで時間をつぶした。

 しばらくすると、アリッサさんの手が空いたので話しかけた。

「こんにちわ!」

「あら、エリアス君どうしたの?依頼?」

「いえ、個人的な話がありまして。今日は何時に終わりますか?」

「今日は早番だから17時には終わるわ」

「もしよければ終わった後で、お時間を頂けませんか?」

「分かったわ。向かいの喫茶店で待っててね」


 

「どうだった、エリアスっち」

「仕事が終わったら、アリッサさんと会う約束をしました」

「そう、頑張ってね」

 パメラさんが励ましてくれた。


 そして俺達は馬車屋に向かった。

 馬車屋に着くといくつか馬車がある。

 中に入り、声を掛ける。


「こんにちわ!」

 すると奥から60代のロマンスグレーの男の人が出て来た。


「いらっしゃい、馬車の注文かい」

「えぇ、そうです。お幾らくらいしますか?」

「そうだね。上を見ればきりがないけど、どんなことに使うんだい?」

「ヴィラーの村まで4~5人で行くのに使いたいのですが」

「荷物はどのくらいあるのかな?」

 俺のストレージに収納するからないな。

「ありません」

「ないだと!それなら馬車を買う意味がない」


 馬車は何頭の馬で引くかによって速さ違う。

 2頭で引いた場合は人が歩く速度とほぼかわらない。

 少し大きめの石を踏んだだけですぐに横転する。

 整備された道でしか使えないそうだ。

 しかも乗り心地は最悪。

 そして馬車はハンドメイドのため、中古でも200~500万。

 貴族用の豪華なものだと3,000万円にもなる。

 そして馬は1頭6~20万だ。


 馬車を使う場合は高貴な人を載せるとか、荷物を運ぶ場合だけだとか。

 荷物が手で持てる範囲なら、歩いた方が良いと言われた。


 店主にお礼を言い、馬車は買わずに店を出た。

 馬車は中古でも200~500万と、聞いた時のオルガさんの顔が見ものだった。

 ルイディナさん曰く、普通は商売優先でそんな事は教えてくれないと言う。

 良かった馬車屋の店主が良い人で。


 エリアスは知らなかった。

 が73もあることを。


 あまりなんでも揃えると、お金が無くなってしまう。

 俺達が住むところは前任者の男爵が住んでいたところだ。

 どの程度の家なのかが分からないから、最低限の生活必需品を買えばいいや。

 行ってから必要なものを揃えよう。

 とりあえず、服、着替え、寝具かな。

 後は野営用の寝袋やフライパンなどの調理器具だ。



 後はアリッサさんと話すか。

 案外ドキドキしないな?

 図太いのかな俺。


 俺達は宿屋に帰りアリッサさんとの、約束の時間になるまで待った。


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