第六章 男爵

第40話 男爵

 俺は公爵家へ呼ばれドゥメルグ公爵と話している。


「そして今回の話だが。君は男爵になるんだ」


「は?男爵ですか」

「騎士団や冒険者の活躍があったとはいえ、キングを倒したのは君だ」

「ですが、報奨金は頂いています」

「あのまま行けばアレンの街自体が、壊滅していたかもしれないのだ。それを救ったのは君だ。領主として功績があるものに報いなければ、私が信用されなくなる」

 そして公爵は一息ついた。

「男爵と言っても一代限りだ。それに領地も小さい。その間に今以上の功績を残せば子爵になれる。そうすれば君の子供達にも爵位は残せる」

「収入はどうなりますか?」

「村の収穫物の3~4割が君の取り分となる。実質年400~500万円くらいか。それと本来なら王都まで7日位かけて行き、王より拝命するのだが。今回はそんな面倒なことは無しでいいそうだ」

「それはいったい?」

「簡単な話だ、王国は君を取り込みたいだけさ。キングを倒すほどの力を、他の国に奪われたくないだろう。だから爵位も形式上のもで期待はしていないのだよ」

「そんな…」

「では君はこのまま冒険者のままで良いのかい?生活を共にする人はいないのかな?その人のためにも爵位は受けた方が良いと思うよ。世の中お金だからね」

 そう言われて俺は思った。


 オルガさん、ルイディナさん、パメラさん、アリッサさん。

 4人の顔が浮かぶ。

 俺は欲深いのだろうか?

 年400~500万円あれば、このまま冒険者をやっているよりは将来がある。


「ほう、君は4人も彼女が居るのかね。さすが英雄色を好むだな」

 な、なんと、ここにもオルガさんと同じように、相手の思考が読める超能力者が!


 受けよう。

「分かりました。このお話しお受けいたします」

「そうか、受けてくれるか。では姓を決めないとなそれからこれが男爵の紋章だ」

「姓ならあります。私はエリアス・ドラード・セルベルトです」

「ほう、姓を持っていたのか。まあ深くは聞くまい。それからこれが男爵の紋章だ」

「紋章ですか」

 メダルの様なものを手渡された。

 これが身分証になるのか。

「あぁ、貴族になった以上は必要になるからな。冒険者ギルドのギルド長パウルには男爵になったことを私から伝えておこう」




 今、俺がいるジリヤ国は内陸にあり、四方を山や隣国に囲まれている。

 王都を国の中心に作り、それを守るかのように周りに東西南北に6つの州を、更に王都寄りの東西に2つの州を置き公爵家を配置し外敵に備えている。


 俺が居るアレンの街は東端にある領で、俺が管理するのはここから王都に向かう途中にあるヴィラーという小さな村になる。


 アレンの街から馬車で2日のところだ。

 村には以前、男爵がいたが前任者は村の若い女を我が物にしようとしたり、国に無断で重税を課し、着服横領をした事が明るみになり爵位剥奪となったそうだ。

 そのため、今年は税を軽くし住民の怒りを抑えたそうだ。


「これは支度金だ、とって置いてくれ。500万ある」

「500万ですか」

「そうだ。今君が行っても収穫があるのは来年の秋だ。それまで、君は無収入だ」

 更に公爵は付け加える。

「それに来年から税率を戻すが、あまり高いと前任者の印象が消えまい。だから君の収穫物の取り分は4割ではなく3~3.5割位の方が反感を買わないかもしれん。それでも360~400万くらいにはなるだろうからな」

 今は秋だ。

 来年の秋まで無収入か。

 なんか面倒な村を、押し付けられたような気が。


 今、村は村長が管理しており、ドゥメルグ公爵より王都経由で村長へ手紙を出しておいてくれるそうだ。

 そのため、俺がヴィラー村に旅立つにはいつでもいいそうだ。

 いなくても良いってことでは?


 俺はドゥメルグ公爵家を出て、そのまま宿屋に戻った。




 そしてオルガさんたちの部屋を訪ねた。


 トン!トン!


「どうぞ!」

 ドアが開きオルガさんが出てきた。


「オルガさん実は3人に話があるんだ。ちょっといいかな」

「なんなの?どうぞ」


 部屋に入り3人部屋なので椅子が足りない。

 パメラさんがベットに座り、俺が椅子に座り話し始めた。


「実は今日、侯爵家に呼ばれたろ。そのことだけど」

「どんな話だったの?」

「実は男爵になった」


「「「 男爵!! 」」」


「凄いわ、エリアス君」

「凄いな、エリアス」

「エリアスっち、凄~い!」

 3人が口々に褒めてくれる。


「俺が貰ったのはこの街から馬車で2日くらいの小さな村だ。多分、収穫量もあまり無いはずだ。だが先が見えない冒険者よりは良いと思い受けたんだ」


 そこで一旦、区切り間を開けた。


「もし良かったら3人共、俺と一緒に来ないか?」


 言った瞬間、みんな息を飲んだ。


 オルガさんが口を手で押さえながら俺に聞く。


「それは同行者として、それとも…」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 読んで頂いてありがとうございます。

 面白いと思って頂けたら★マーク、♥マークを押して応援頂くと励みになり嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る