第39話 公爵家へ
俺は朝食を取り部屋でマッタリしていた。
〈〈〈〈〈 エリアスお兄ちゃんにお客さんが来てるよ~ 〉〉〉〉〉
宿屋の一人娘のアンナちゃんが、ドタドタと足音をさせ俺を部屋まで呼びに来た。
誰だ?とても慌てているようだが。
宿屋の入り口に行くと執事の様な男性が立っていた。
「エリアス様でしょうか。私はこの街アレンの領主、ドゥメルグ公爵様の執事でアルマンと申します」
やっぱり執事!
「はい私がエリアスです。どのようなご用件でしょうか?」
「ドゥメルグ公爵様がお呼びでございす」
「どのようなことなのでしょうか?」
「分かりかねます。ただお招きする様にとの事でしたので」
「今すぐでしょうか?」
「はい、今すぐです」
「分かりました、伺います。着替えてまいりますので、お待ちください」
やっぱり頼んでおいた礼服は間に合わなかったか。
仕方なく中古の礼服に着替えた。
俺は出かけてくることを、オルガさん達に伝え馬車に乗った。
公爵家まで一時間くらいかかるそうだ。
それまで馬車の中はアルマンと俺の二人きり。
(き、気まずい…やはりここは寝たふりでもするか?)
「それにしても見事ですね。伺ったお話しでは、冒険者24人でゴブリンの群れを中央突破し、誰も欠けることも無かったとか?」
「それは冒険者のリーダーの、コンラードさんの指示が良かったからです」
「そうかもしれませんね。その功績でコンラードなるものは、AからSランクに上がったと伺いましたから」
(へ~、Sランクか凄いな)
それからアルマンさんが公爵家に来るまでの話を聞いた。
12歳で中流階級の屋敷で仕事をし雑用をこなしながら、使用人の仕事を覚えた。
キャリアを積み大きな屋敷へ転職。
さらに経験を積み従僕として別のお屋敷へ転職。
従僕として仕事に磨きをかけ転職し、晴れて念願の執事に昇進できたとの事。
そんな話だった。
「ところでエリアス様は、どのようにしてこの国にいらしたのでしょうか?」
(そう言うことか。自分の身の上を先に話し、後から俺のことを聞こうて腹か)
「村とも言えないような名もない場所で育ち、両親が他界したのを機会に村の人から『外の世界を見た方がいい』と勧められアレンの街に着きました。まあ限られた土地を耕して生活していましたから、私一人ではとても耕せなかったでしょう」
「ではご両親が他界されたのをきっかけに、土地を村の人に狙われ追い出されたと言うことですね。お可哀そうに…」
この機会にアルマンさんに『様』付けは止めてほしいと言ったが、執事なのでお客様には敬意を示すそうで止められないと言われた。
その後、俺はアルマンさんに畑仕事や野菜のことなどを聞かれた。
そして都度『【スキル】世界の予備知識』で検索し視界の中に浮かぶ検索結果を、知っているかのように話していった。
畑の水は用水路を引き水車で脱穀、製粉をしていたことを話した。
(エリアス様はとても博学な方だ。貴族でもここまでの知識は普通はないだろう。どこでこんな高度な教育を受けたのだろう)
そんな話をしている間にどうやらお屋敷に着いたようだ。
門に入りしばらくしてから馬車が止まった。
馬車から降りると使用人4人で出迎えてくれた。
そして客間に案内されドアを開けると、30代前半の男性が座っていた。
「さあ、こちらに」とアルマンさんに促され席に着く前に挨拶をした。
「この度はお招きいただきまして、エリアスと申します」
30代前半の男性がソファーに腰かけており、アルマンさんが紹介をしてくれた。
現当主トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグ公爵だ。
ドゥメルグ公爵が口を開いた。
「で、アルマンどうだった」
「はい、とても博学で貴族にも劣らない知識をお持ちだと思われます」
「ほう、そこまでとは。まえ掛けてくれたまえ」
そう言われ俺はソファに腰かけた。
公爵は鋭い眼光で俺を見て話し始めた。
「騎士団の報告書は読んでいる。キングの斧の攻撃を素手の腕で受け止め、君の指先から魔法と思われるものがキングの体を貫き、徐々に切り裂いていきキングを倒した、と。そしてそれは君のスキルであるとな」
そして間を開けさらに言う。
「しかし、そこまでの力があるのに今まで名を聞いたことがないとは」
「それはアレンの街に来たのが最近だからでしょう。私は特に冒険者で名を売ろうとは思っていません。生活するために冒険者になり、強制要請だから仕方なく参加したまでです」
「強制要請?本当なのかアルマン」
「騎士団からの報告では、冒険者ギルドには出動要請はしておりますが、強制ではないはずです」
「いいえ、アルマンさん。私はあの場で聞きました。逃げた場合は逃亡罪になると」
「逃亡罪だと、何を馬鹿なことを。民衆である冒険者にそこまでの強制はできん」
「ナウム副長が私達、冒険者に指示を出していました。最初から俺達を捨て駒にして中央突破を冒険者に強要し、突破すると今度は私達を押しのけ手柄を奪おうとしてキングに殺されたのです」
「そんなことが。ナウム副長の独断かもしれん。アルマン後で確認せよ」
「は、畏まりました」
「そして今回の話だが。君は男爵になるんだ」
「は?」
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