第38話 防具屋

 今度は防具屋へきている。

 小柄で髭もじゃの男が出てきた。

 たしかこの人はドワーフではないと、以前言ってたな?


「おう、いらっしゃい。どんな防具がお望みだい?」

「狩人の防具と魔術師用のローブが欲しい」

「狩人と魔術師用ね。じゃまず、狩人の方から行こうか」

「狩人は私よ」

「どんな防具が良いんだ?」

「私は動きやすい防具が良いわ」

 ルイディナさんが言う。

「私も軽くて動きやすい方が良いわ」

「予算はどのくらいなんだい?」

「50万よ…「200万だ!」

 俺とオルガさんの声が被る。


「そんな高いのはもらえないわ」

「さっきも言ったけど、武器と防具はお金を惜しんだらいけないんだよ」

「でもお金が。討伐報酬が無くなってしまうわ」

 なんだ、そんなことを心配してくれていたんだ。

 優しいな、オルガさんは。

「大丈夫ですよ。実はレッドキャップの斧を、売ったお金が別に700万あるです」

「「「えっ、別に700万も!」」」

「えぇ、だから心配しないでください」

「なら、なおさら使わないで貯めておきましょう」

「でも防具は良いものを着ないと」

「でも、もったいないわ」

 そんなことを言い合っていると、防具屋のおやじさんが言った。

「それなら2人で150万でどうだい?安くしてやるよ」

「どんな防具ですか?」

「狩人の防具はパープルワームでどうだい?さ。軽くて丈夫だ。それで肩、肘、膝、腕と腿当て付さ」

「パープルワーム?」

「これだ。軽くて丈夫で着やすい。それで肩、肘、膝、腕と腿当てを作ってやる」

 少し茶色の皮で厚みがあり、柔らかそうだった。

「それで良いわ。私」

 ルイディナさんは良いと言う。

「魔術師用は?」

「これはタラテクトの糸で編んだローブだ。丈夫で動きやすい」

 奇麗なわずかに光る生地だった。

「奇麗。私もそれで良い~」

 パメラさんも納得したようだ。


「じゃ、サイズを測るからこちらに来てくれ」

 奥から女の人が出てきて、ルイディナさんとパメラさんの採寸が始まった。

「そちらのあんちゃんと、彼女は作らなくていいのかい?」

「エリアスです」

「ま、彼女だなんて」

 クネ、クネ、クネ~。

「知ってるよ。俺の名はブラートだ。Miracle manミラクル マン(奇跡の人)のエリアスだろ。黒髪、黒い瞳の少年て有名さ。武器屋のおやじがエリアス御用達の店だって自慢してたからな」

「そんなに有名になってるんですか?」

「あぁ、この街を救った英雄だからな。どうだい、彼女は剣士だろ。彼女のプレートアーマーと、エリアスは動きやすい方が良いんだったな。じゃあ狩人と同じ素材のパープルワームで作るライトアーマーだ。合わせて150万でどうだい?」


「わかりました。お願いします」

「エリアスのは以前、測ったからサイズはわかる。あとは彼女の分だな」

「か、彼女だなんて」

 クネ、クネ、クネ~。

 日の光を浴びると踊る人形か!


 そしてオルガさんの採寸も終わった。


「あと、スモールシールドが欲しいのですが。防御力よりも、あれば良いので」

 これは収納防御をした際に、腕で攻撃を受け止めていることになる。

 だが通常は腕で攻撃を受け止める事などできない。

 今回のレッドキャップ戦で痛感した。

 そのため、ダミーで盾を装備しようと思ったんだ。

「これなんかどうだい?3万でいいぞ」

 店に置いてある木で作られた鉄枠の小さい盾だ。

「はい、それでお願いします」


「ま、1週間後くらいには、できていると思うぜ。期待してくれ」

 どうしてどの店に行っても納期は1週間なのか。

 とりあえずで言ってない?


 俺達は防具屋を出た。

 武器と防具で700万使った。

 お金はあると思っていると、すぐになくなってしまう。

 残りは後1,000万だ。

 オルガさんが言う事もわかるな。

 そんな事を思って歩く帰り道。


 オルガさんが一言。

「やはりエリアス君は駄目ね」

「なにがですか?」

「お金の管理よ。放っておいたらすぐに無くなりそうだわ」

「そうかもしれませんね」

「私が預かります」

「そうですね」

「えっ、いいの?」

「今日、つくづく思いました。誰かに管理してもらわないと俺は駄目だと」

「そ、そうなの」

「オルガさんに預けますね。1,000万」

「はい、ありがとうございます」


「オルガ結納金、もらったのね」

「良かったわ。行き遅れなくて私達」


 もう、どうでも良くなった。

 好きにしてくれ。


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