第34話 冒険者ギルド長 パウル

 私の名は冒険者ギルド長パウルだ。

 若い頃はアリッサと他に剣士とハンター4人でパーティーを組み、冒険者をやっていた。

 魔法も使えたが、魔法はエルフのアリッサが担当して俺は剣士になった。

 そして35歳の時、Aランクになった。

 それからは魔物討伐や護衛依頼をこなす日々だった。



 そんなある日、前のギルド長が引退した。

 そしてランクの高かった俺が次のギルド長になった。

 年齢的にもキツイものがあり、引退を考えていた時だったからだ。

 パーティーは解散。

 アリッサに副ギルド長を勧めたが、現場が良いと受付になった。


 そんなある日、アリッサが面白い少年が居ると楽しそうに話していた。

 アリッサは面食いだから、美少年かな?


 数日経ち、その少年が他のパーティーと協力してトロールを倒したと言う。

 それは嬉しそうに言っていた。

 どうせ倒したのは他のパーティーだろう。

 その少年もいい経験になったと思う。


 そして今度は冒険者パーティーを助けるために、バグベアを単独で倒したと言う。

 見ず知らずの他人のために、バグベアに立ち向かうのか。

 しかも冒険者になりたてのFランクがだ。

 どこかで剣術でも習っていたのかもしれない。

 しかしあまりにも軽はずみだ。

 一つしかない命なのに。


 しかもバグベアが収納できるマジック・バッグを持っている、だと。

 それだけで一財産築ける。

 運び屋としても生活できるくらいだ。



 今度はなんだ?

 なに、ジャムをもらっただと!

 しかもその後、イチジクを皿に山盛りもらい、挙句の果てに『森の果物は季節ごとに違うから、その都度たくさん採ってきますね』と言ってくれたんです、だと。


 その少年はエルフキラーなのか?

 本来、森の住人である森妖精エルフには果物は森の恵み、宝物なのだ。

 その宝物を山盛りにして差し出すとは。

 金貨を目の前に山積みにして差し出されたら、女はどう思うか?

 それと同じことをしたと言う。


 プロポーズをしているのと同じだぞ!!

 しかしアリッサがエルフとは知らないはず。

 では無意識にやっているのか?

 だとしたら天然の怖さだ。


 砂糖や果物は高級品だ。

 町娘でもそこまでされたら、堕ちるだろう。


 

 そしてスタンピードの件だ。

 騎士団のナウム副長にハメられ、冒険者24人で中央突破した。

 しかも全員無事だとは。

 キングを我々が知らない魔法で倒している。

 もう個々の問題ではない。

 騎士団が出てくるだろう。

 そして少年をめぐり国とギルドの争奪戦になるだろう。


 

 一度話してみたいと思い、少年が目が覚めたらギルドに来るように伝えた。

 騎士団からの報奨金を渡すためと、少年の人柄を知るためだ。

 そして今日、少年はやってきた。


 アリッサが気に入る訳だ。

 黒髪、黒い瞳の美形の少年。

 エルフは美形が多い、そして奇麗なものが好きだ。

 それは人に対しても同じで、だからこそ面食いなんだ。


 それに少年は私の鑑定眼を弾いた。

 部屋に入ってきた時に鑑定したが、見事弾かれた。

 と言う事は彼も鑑定を持っており、私よりレベルが上だと言う事だ。

 私よりはるかに若いこの少年がだ。


 騎士団からの報告書を読み上げ、検証を取る。

 スキルと言っているので、それ以上は聞けないな。

 騎士団にはうまく言っておこう。

 どうやらエリアスという少年は、剣士ではなく魔術師のようだ。

 彼は年齢のわりには世間を知らないようだ。

 悪い虫が付かない様に、そうだアリッサを付けておこう。

 彼女なら腕も立つからな。

 

 アレンの領主、ドゥメルグ公爵様より呼出しがかかっている。

 どうやら礼服がない様だ。

 アリッサと2人で礼服を買いに行かせるか。

 そしてもっと仲良くなってくれると助かる。

 ギルドのためにな。


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