第32話 初デート?

 俺は冒険者ギルド長のパウルさんに呼ばれた。

 話の中でアレンの領主、ドゥメルグ公爵様より呼出しが掛かっている事を知った。

 俺は公爵家に行く事になり、礼服がないことに気づいた。

 俺はそうしたことに疎く、パウルさんがアリッサさんを付けてくれた。

 こうして俺とアリッサさんは、礼服を買いに行くことになった。



 俺達はギルドの1階に降りた。

 そしてアリッサさんは他の受付の人に、外出することになったことを話した。


「え~、それってどういう事?今は時間中だよね」

「ギルド長の指示なのよ。ヘルガ」

「じゃあ私が行くわ」

「なんであなたが行くのよ」

「洋服屋に行くなら私でもできるわ」

「そ、それは。ギルド長の指示だから私が行くわ。行きましょう、エリアス君」

 そう言うとアリッサさんは俺の手を取りギルドを出た。


「ほんと、困った子ね。ヘルガは」

「アリッサさんはヘルガさんと、仲良くないんですか?」

「そんなことはないわ。彼女とは長い付き合いだもの」

「ヘルガさんて、ギルドに勤めてどのくらいなんですか?」

「そうね。かれこれ40~50年…えっ、何でもないわ忘れて」

 40~50年?ヘルガさんもエルフなのか?


 そしてギルドを出てから、ずっと手を繋いでいるけど?


 2人で歩いて行くと洋服屋に着いた。

 この世界の洋服は千差万別だ。

 地球の中世ヨーロッパ的な服があると思えば、近代的な服もある。

 きっと転生者などが持ち込んだものだろう。


「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか?」

 金色の髪の奇麗な店員さんが出てきた。

 アリッサさんが代わりに対応する。

「公爵家に呼ばれても、恥ずかしくない礼服が欲しいわ。すぐ着れる服とオーダーメイドを各一着ずづお願い」 

「公爵家ですか。ではこちらなどは、いかがでしょうか?」

「そうね~」

 それから俺はアリッサさんの着せ替え人形になった。


 結局、いつ呼ばれても良いようにと中古品はネイビーグレーのスーツを。

 そしてオーダーメイドは濃紺のスーツで、出来るまでに1週間かかるそうだ。


 俺達は店を出た。

 来た時と同じようにしましょうね、とアリッサさんに言われ、手を繋いで歩いた。

 これはあれか。

 俺が不慣れだから、迷子にならないようにか?


 そして広場の前を通りかかると、大道芸人がいた。

 ピエロやジャグリングを見せ、集まった人達を楽しませている。


 そう言えばこの世界は娯楽がない。

 TVもPCもないから夜もつまらない。

 動画配信で音楽でも聴ければいいけど。

 暗くなると明かりを点けるのに、油代がかかるから早く寝る。

 だから早起きなんだけど。


 お酒を飲む男なら酒場か、女の人が居るお店に行くのもありだけど。

 みんな空いている時間は何をしてるんだろう?


 疑問に思ったのでアリッサさんに聞いてみた。

「アリッサさん」

「はい、なんでしょう?」

「夜とかお休みの日は何をしてますか?」

「えっ、夜とか休みの日ですか?」

 なぜ疑問形を疑問形で答える?

 聞いてはいけないことだったのか?


「そ、そうね。夜はご飯を食べてから、お酒を少し飲むくらいかな。休みの日は買い物です」

「そうだよね。どこに行くにも街の中だけだし。芝居小屋とかあるのかな」

「あるわよ。芝居に興味があるのエリアス君は」

「いや~そう言う訳ではないけど、空いた時間は何をしているのかと思って」


(えっ、そんなに私のことが気になるのかしら?)

「そんなに気になるの?」

「うん、とっても気になる」

(いやっ、エリアス君てもしかしたら、独占欲が強い子なのかしら。会えない時の私がどうしているのか、気になるのね)



「ねえエリアス君」

「なんでしょう」

「これって初デートだよね?」

「えっ」

「でも今度はちゃんとしたデートがしたいな。エヘッ」

「うん、そうですね」

 恥ずかしそうにうつむく、アリッサさんの可愛らしさに見とれた。


 俺達は冒険者ギルドに戻ってきた。

 俺は途中で帰っても良かったが、最後まで送らないといけないような気がして。


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