第25話 突撃

「騎士団、前へ!冒険者はその横へ並べ」

 ナウム副長の号令がかかる。

 その隣に、もう1人偉そうな身分の人がいる。


「私は騎士団長バルタザールだ。これよりゴブリン討伐に向かう。騎士の諸君、冒険者の諸君。共に生きて帰ろうではないか!!」


「「「 おぉ~~!! 」」」


「弓隊前へ!!」


 ザッ!!ザッ!!


「放て!!」


 シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

     シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

   シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

 シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

 シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!


沢山の矢がゴブリンに降り注ぐ。


 ギャアギャア!!ギャア!ギャア!!ギャア!!ギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャア!ギャア!!ギャア!!ギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャア!ギャア!!ギャア!!ギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャア!ギャア!!ギャア!!ギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!ギャアギャア!!



「「「今だ突撃!!」」」


 俺達は騎士団の先頭に立ち、8人の3列で走った。

 コンラードさん達の先頭がゴブリンに激突する。


 ドンッ!!ギャッ!グシャ!!ギャッ!ザッ!!


 ギャッ!グシャ!!ギャッ!バシャッ!!


 先頭のコンラードさん達が凄い。

 ゴブリンを叩き切り、舞い上げるように切り上げていく。

 AやBランクはこんなにも強いものなのか?

 

 俺達、中盤組はただ横に剣を振る、切り上げるのみだった。

 突き刺すと抜けなくなるからだ。


「「 ウォォォォ~~~!!行くぞ~~!! 」」


 俺は気持ちだけでもと思い、声を出しながら戦っていた。


  *    *    *    *    *


 俺はコンラード。

 冒険者達の先頭に立ちゴブリンの群れに突撃して行く。

 本当なら誰かが欠けてもおかしくない状況なのに。

 誰も欠くことなく舞うように剣を振るう。

 目の前のゴブリンの群れが、面白いように蹴散らされていく。

 一緒に戦っているBランク4人も、俺と同じようで普段以上の力が出ている。


 エリアスの励ますような声が聞こえる。


〈〈〈〈〈 ウォォォォ~~~!!行くぞ~~!! 〉〉〉〉〉


 その声を聴くたびに俺達は無性に気持ちが高ぶり、強くなる。

 まるで戦の神のような彼の声に導かれて進む。

 そしてこのまま、ゴブリンの群れを突っ切りキングを目指す!

 あと、少しだ。


  *    *    *    *    *


 ほう、思っていたよりやるな。

 わたしの名はナウム。この騎士団の副長だ。

 騎士団の損害を少しでも防ぐため、冒険者を先に行かせてはみたが。

 なんと奴らは飲み込まれることなく中央突破をしており、そのままゴブリンを蹴散らし進んでいるのだ。


 いや、冒険者が強いのではなく、所詮はゴブリンの集まりか。

 キングがいても、たいしたことはないだろう。

 規模が大きいからと言って、慎重になりすぎていたのだ。

 このままいくと騎士団の活躍がないかもしれん。

 それでは困るのだ。

 美味しいところは我々がもらう。

 そしてその功績は私の物だ。

 なら我々も突撃だ。


「バルタザール騎士団長、お話があります」

「なにかな、ナウム副長」

「は、冒険者のおかげで中央突破の目途がたちました。彼らも疲労していると思われ、ここからは騎士団が代わりたいと思います」

「ほう、そうだな。冒険者を気遣うとはさすがナウム副長。そのように致せ」

「は、これより騎士団は突撃致します」

 人が良いとはこのことだ。


  *    *    *    *    *


 ドン!ドン!ドンッ!ドン!ドン!ドンッ!

       ドン!ドン!ドンッ!ドン!ドン!ドンッ!


 太鼓が鳴り響く。

 後ろを振り向くと騎士団が突っ込んでくる。

 俺達、冒険者は脇に避けゴブリンと戦いながら進んで行く。

 立ち止まる方が集中攻撃され危険になるからだ。


 ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!

     ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!ドォ!


 騎士団の馬が駆け抜けていく。

 そして激しい剣戟音がしたと思ったら、道が開けた。


「キングの首は俺達の物だ。騎士団突撃~~!!」


     「「「「 ウォォォォォォ~~!! 」」」」


 その時、火の玉が飛んできた。

 ドン!ドン!ドバ~ン!

          ドン!ドン!ドバ~ン!

 

「ゴブリンウィザードだ!ウィザードがいるぞ!!」


 ドン!ドン!ドバ~ン!

 ファイヤーボールが飛んでくるたび、騎士団は盾で防ぎ剣を振る。

 所詮はゴブリンのウィザード。

 初級の魔法は使えてもそれだけだ。


「けちらせ~!奴らをけちらせ~!」


    「「「 オォゥゥゥゥ~~!! 」」」


 ゴブリンウィザードは次々に打ち取られていく。

 

「いくぞ~!われらの勝利だ~~!!」


      「「「 おぅぅぅぅ~~!! 」」」


 その時だった。

 グシャ!!バシャ!バシャ!!グシャ!!バシャ!バシャ!

           バシャ!バシャ!!グシャ!!バシャ!バシャ!


 騎士団の馬が吹っ飛び、騎士の手足がちぎれ血しぶきが舞う。

 

「な、何が起きたんだ」

 俺達、冒険者や騎士団の脚が止まる。




 その先を見ると何かが立っている。


 赤い帽子と鉄製の長靴を身に着けて、はすに構え斧をたずさえている。

 その奥に見えるのは長く薄気味悪い髪。

 燃えるような赤い眼、突き出た歯に鋭い鉤爪。

 

 醜悪で背の低い老人の姿をした魔物だった。


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