第58話 異形VSセクシーバッタ①

セクシーなバッタに変身したナズナさんに、いきなり必殺「バッターキック」を食らった。


彼女は驚いている。私の弱さに・・。


ざわざわ。簡単にとんだぞ。ざわざわ。油断しすぎか?


「ちょ、ちょっとアヤメ殿、手加減しすぎではないか?」

「ごめんナズナさん。今のでも本気なの。素の私は言った通りに弱いわ。ここから重ねていくから」


「重ねる?」


「ヘラクレスガードに「蟻マスク」追加」


蟻マスクは単なるお面かと思ったら、ヘラクレスガードには劣るが立派な防御スキル。ダブル発動が可能だし、マスクで誰か分からなくなるから、私には2度おいしいスキルだ。


「ほう、二種の混合降臨とは・・。防御重視か。いくぞ、バッターパンチ!」


「うおっ、トノサマホップ」


ナズナさんのパンチを跳んで避け、そのまま額から2本のエレキガン。

10メートル先で避けられたけど、着地しながら2本の先端を合わせて彼女の近距離でスパークさせた。


ビリビリビリ。感電したころに「蜘蛛の糸」を出し、ナズナの右手をぺたりして引いたが、これは悪手だった。


「力比べか。ぬん!」

「うわあ!」


ナズナの圧倒的パワーでぐいっと引かれ宙に舞って体勢を崩した。


とっさに糸を外し、「クラゲユラユラ」発動で浮かびながら体勢を整え着地した。


おおおおおおお!


「カブト、蟻、蜘蛛、バッタ、電気はナマズで透明な頭はクラゲか?」


一気に間を詰めてきたナズナに、手からスパイダーネットでけん制。5メートルの網を避けるために大きく跳んだところに水鉄砲を当てた。


「うわっ、すごい。試合なら、これで1本か・・」

「あなたのキックやパンチもすごい威力だったわ、ナズナさん」


「アヤメ殿・・武器を使ってもいいか」

「どうぞ・・」


彼女は1・5メートルの槍を持って構えた。変身も相まってローズちゃんより強くなった印象だ。


「そっちは素手のまま?」

「誤解しないで。武器を持っても本気を出すときの妨げになるだけ。これが真剣な証拠よ」


「行くよ!」


「私達1人」は役割分担をする。

「私」が防御重視。そして「メガスズメバチ」が攻撃役だ。


フェイントを入れながら走ってきたナズナが、槍を振りかぶって私の腕にたたきつけた。


ゴキッ。「ぐううう!」


「熊力」「身体強化レベル3」の発動から腕をクロスして頭をガード。防御全開で受けたのに、前に出ていた左手首から嫌な音がした。


2発目に左脇めがけて横回転のスイングが飛んで来た。とっさに額エレキガン2本で迎撃。


バチィ!


ナズナが電気で弾かれたかと思ったら、槍から手を離してキックに切り替えていた。


ドンッ!


ナズナが、腹を蹴られて後退する私を追撃に来たように見えたから、トノサマホップで回避。


「あっ!」

これを狙われていたんだ。


ナズナは先にジャンプし、トノサマホップで跳んだ私の上にいた。


「蹴られる!」


私は反射的に頭をかばった。


「甘いわ」


ナズナは私のお腹と胸の上に両足を乗せ、力一杯踏み込んで跳んだ。


「うわっ!」


万歳の格好で急降下しながら見た。


バッタの羽根を広げ、私のトノサマホップの勢いも利用して回転しながら高く舞うナズナ。

私のようなスキル頼みでなく、スキルに技を加えた美しい飛翔だ。


逆に私は地面に叩きつけられバウンドした。


やっぱり「私」が異形の能力を使っても、本物の戦士には敵わない。


ギャラリーはみな、ナズナの勝ちを確信しているだろう。


私のローズちゃん以外は・・


上を向くと、空に舞ったナズナが「バッターきりもみキック」を繰り出し、私に止めを刺しに来てる。


見とれそうになる。



「あとはお願い」

ぱきっ、ビキビキビキビキ!


「私じゃない方」は待っていた。


お尻からメガスズメバチの尻尾が平たく伸びた。頭上2メートルの頭上に迫ったナズナの脚を受け止めた。


ナズナは足先からバッタの鉤爪を出し、私のニードルにぶつけた。


ギイイン!


だけどメガスズメバチ主導の尻尾は、きしむ音を出しながらも完璧な仕事をした。ひねりを加えた。「パンチを左手で外側にいなすイメージ」で彼女の脚を受け流した。


きゅおううううう! どんっ、どんっ。


ナズナは回転しながらバランスを崩し、地面にキックをかまして2回バウンドした。


どちらも大怪我をせす、引き分けた。


うおおおおおおおおお!


「トカゲ再生」で手首を治しながら、ギリギリだったと思った。



アマゾネスの里のみんなが駆け寄ってきた。私の異形変身を誰も怖がっていないのがうれしい。


だけどペタペタとメガスズメバチのお尻を触るのはやめて欲しい。



変化しているとはいえ、感覚はしっかりとある。


そこはローズちゃんに操を捧げた私のお尻なのだ・・・



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