第59話 蜂蜜生産マシーン

アマゾネスの里でナズナさんと戦い、異形変身で辛うじて退けた。勝った訳ではない。


五分に戦えたのは100パーセント、スキルのおかげ。アマゾネスの里の人たちと、私の底力の違いを改めて思い知らされた。


だから健闘をたたえ、壺にあふれるくらいの「極上蜂蜜」をナズナさんにあげた。


そしたら私に「蜂蜜プラス対戦希望」の挑戦者がずらりと並んでいる。


順番逆だろ・・


「アヤメ、どうする。また何人か対戦するか」


「どうしよう・・。奥の手を隠したままのナズナさんに手首を折られてる。最初から槍で頭かお腹を狙われてたら、最初の一撃で詰んでた」


「けどアヤメもポイズンニードルの殺傷力が高い使い方をしていない。それに迎撃スキルの「背中電池」も使ってない」


「それはお互い様。ナズナさんはバッタの鉤爪を使ってない。武技とギアも更に二段階以上は持っていると思う」


「よく見抜いたな。アヤメが冷静さを失って「メガスズメバチモード」に切り替わらなくて良かった」


修業と勉強気分で里に来たけど、私が持っているのは完全に制御できていない過剰な力。その状態で実力者の中に入る怖さも分かった。


それから10日、8人の猛者と手合わせをした。

最初からメガスズメバチ変身をして、ポイズンニードルに鞘を被せて殺傷力を落とした。


ガルボ母さんの熊変身と戦ったときは、追い詰められて「スライム酸」と「背中電池」まで使って引き分け。

2人とも重症で「トカゲ再生」を使ったが、誰もガルボさんを心配しておらず、再生スキルを興味深そうに見ていた。


みんな頭のネジが飛んでいる。


戦いのあとは魔力の抑えかた、私の利点を生かしたスキルの応用などもアドバイスしてもらった。


その合間は、熱望されて「極上蜂蜜」の生産マシーンになっていた。600人分の蜂蜜を生産するのは大変だった。


ミドルビーハニーに変身しても、誰も怖がらないのはうれしい。


やって良かった。


私の希望を聞いてみんなが魔石を持ってきてきてくれた。村で魔物の素材を取ったあとに、まとめて置いてあったやつだ。


大半はすでにスキルを取得したり、スキルをくれない魔物の魔石だった。それでも、スキル進化や新スキルに繋がるやつを30個くらいもらった。


木の化け物「トレント」から1つ有用スキルを手に入れた。


◆◆◆


「離れるのは寂しいけど、今度こそラヒドのガスドルフ侯爵家に行ってくるよ。ラヒド自体に用もできたし。2か月後に迎えに来ると思う」


「おう、それまでに強そうな精霊を降ろせるようになっているからな」


「うん。楽しみにしてる。必ず見せてね」



私はラヒドで「食」に関する新スキルも狙っている。


それをローズに言ったが、フランソワ姉さんに聞かれていて、里のみんなに伝わってしまった。大きな期待を抱かれている。


敵ができたら、みんなで駆けつけてくれるそうだ。


◆◆


とりあえず、戦闘に関しては課題山積みだ。


それは置いておくとして、マイリの街に到着した。移動スキルを駆使したから、2日と早めだった。


「ハドソンさんが近くの街にいたらいいな」


ダークネス商会のハドソンさんを訪ねると、ハドソンさん本人がいた。


そんなに暇な人ではないはずだ。何か問題でも起きたのだろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る