第56話 フランソワとの戦い
アマゾネスの里までもう少し。休憩中にローズちゃんによく似た残念美人が現れた。
「ローズ、遅かったな」
「すまん、怪我をして遅れた」
「そうか。それより、一緒にいる女は誰だ。膨大な魔力が接近してきて、アマゾネスの里が盛り上がってるぞ」
「彼女はアヤメ。恩人でもあり、大切なパートナーだ」
「ローズ・・そうか、お前は人化した龍と契りを交わしたか・・その女、底が見えんほどの魔力量だな・・」
格好よく勝手な解釈をしているが、お姉さんの目は、私の手元しか見ていない。
「ローズちゃん、あ~ん」
ぱくっ。
ローズは、蜂蜜付きのパンを頬張った。
たっぷりつけた蜂蜜が、口元からこぼれて、地面に落ちた。
にんまりした彼女の唇がテカテカして可愛い。
「ああっ、それはミドルビーハニーの蜂蜜だろう。貴重な蜂蜜を惜しげもなく・・」
「へ?」
「ローズ、勝負だ!」
なんだかローズちゃんとお姉さん、思考回路が同じ過ぎる。
「お姉さん、ローズちゃんは右足に重症を負ったばかりだから、無理させたくないんだけど・・」
「それならアヤメ、お前と私フランソワで勝負だ!」
ぼそ。
「ローズ、フランソワ。何で肉弾戦闘民族が、その名を選ぶかな」
まあ、殺し合いはなしということで、お互いに木の棒を握って戦うことになった。
◆
「おい姉様、アヤメはある意味、魔法特化型だぞ。近接戦闘も魔力を消費して戦うのだ」
「うむ。そんな感じはしている。龍化以外は、何を使ってくれても構わない」
「だからドラゴンじゃないっつーの。ヘラクレスガード。行くよ!」
「来い! って、素人臭い踏み込みだな」
まずヘラクレスガードのみ。この状態では、フランソワ姉さんが、何をしているのか分からないまんま、転がされた。
身体強化、熊力、トノサマホップ、猪突猛進と追加していくが、相手にならない。
「うりゃっ」
「ほいっ」
「ぶべっ」
スパイダーネットだとフランソワ姉さんがベタベタになってしまう。
残りの引き出しは、殺傷能力が高すぎる。
「もう降参か。参ったと言って、極上蜂蜜を出したら許してやる」
「姉様、本音がだだ漏れだぞ・・」
蜂蜜、蜂蜜・・。それだ!
「異形変身、ミドルハニービー!」
ヘラクレスガードを解いて変身すると、私のお尻が丸く大きく膨らんで、黄色と黒のツートンカラーになった。そして先端には太く短い針。
「む、アヤメよ。昆虫変化もできるのか。さあ、その蜂のケツで何ができるか見せてみよ!」
「ミドルビーハニーのスキル全開!」
お尻の針の先に魔方陣が浮かんだ。
「え?、あああ、もったいない!」
とぷ、とぷっ、トポトポトポトポ。
魔方陣から溢れ出る「極上蜂蜜」が草地に垂れ流しになった。
目の前にいたフランソワが消えた。
かと思うと「予想通りに」私の後ろに回っていた。
そして、どこから出したか皮袋を構え、流れ出る蜂蜜を受け止めていた。
「一発だけ返すよ」
ぷす。
お尻を突き出し、自分からミドルビーハニーの武器の前に座り込んだフランソワの額に、針を突き刺した。
「ぐえっ」
「生産スキルでローズちゃん並みの「大物」に一矢報いてしまった」
ちなみに、アマゾネスの里から東に標高を1000メートル下るとミドルハニービーの巣はあるらしい。だがアマゾネス対策なのか、とんでもない大きさの巣に5万匹の蜂が住み、水着を見ただけで大群が襲って来るらしい。
「それにしてもアヤメ」
「なに?」
「アヤメのミツバチ変身を初めて見たが、これもアリだな」
ちょっと頬が火照ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます