第56話 フランソワとの戦い

アマゾネスの里までもう少し。休憩中にローズちゃんによく似た残念美人が現れた。


「ローズ、遅かったな」

「すまん、怪我をして遅れた」


「そうか。それより、一緒にいる女は誰だ。膨大な魔力が接近してきて、アマゾネスの里が盛り上がってるぞ」


「彼女はアヤメ。恩人でもあり、大切なパートナーだ」


「ローズ・・そうか、お前は人化した龍と契りを交わしたか・・その女、底が見えんほどの魔力量だな・・」


格好よく勝手な解釈をしているが、お姉さんの目は、私の手元しか見ていない。


「ローズちゃん、あ~ん」


ぱくっ。


ローズは、蜂蜜付きのパンを頬張った。


たっぷりつけた蜂蜜が、口元からこぼれて、地面に落ちた。


にんまりした彼女の唇がテカテカして可愛い。



「ああっ、それはミドルビーハニーの蜂蜜だろう。貴重な蜂蜜を惜しげもなく・・」

「へ?」


「ローズ、勝負だ!」


なんだかローズちゃんとお姉さん、思考回路が同じ過ぎる。


「お姉さん、ローズちゃんは右足に重症を負ったばかりだから、無理させたくないんだけど・・」


「それならアヤメ、お前と私フランソワで勝負だ!」


ぼそ。

「ローズ、フランソワ。何で肉弾戦闘民族が、その名を選ぶかな」



まあ、殺し合いはなしということで、お互いに木の棒を握って戦うことになった。


「おい姉様、アヤメはある意味、魔法特化型だぞ。近接戦闘も魔力を消費して戦うのだ」

「うむ。そんな感じはしている。龍化以外は、何を使ってくれても構わない」


「だからドラゴンじゃないっつーの。ヘラクレスガード。行くよ!」


「来い! って、素人臭い踏み込みだな」


まずヘラクレスガードのみ。この状態では、フランソワ姉さんが、何をしているのか分からないまんま、転がされた。


身体強化、熊力、トノサマホップ、猪突猛進と追加していくが、相手にならない。


「うりゃっ」

「ほいっ」

「ぶべっ」


スパイダーネットだとフランソワ姉さんがベタベタになってしまう。


残りの引き出しは、殺傷能力が高すぎる。


「もう降参か。参ったと言って、極上蜂蜜を出したら許してやる」


「姉様、本音がだだ漏れだぞ・・」


蜂蜜、蜂蜜・・。それだ!


「異形変身、ミドルハニービー!」


ヘラクレスガードを解いて変身すると、私のお尻が丸く大きく膨らんで、黄色と黒のツートンカラーになった。そして先端には太く短い針。


「む、アヤメよ。昆虫変化もできるのか。さあ、その蜂のケツで何ができるか見せてみよ!」


「ミドルビーハニーのスキル全開!」


お尻の針の先に魔方陣が浮かんだ。


「え?、あああ、もったいない!」


とぷ、とぷっ、トポトポトポトポ。


魔方陣から溢れ出る「極上蜂蜜」が草地に垂れ流しになった。


目の前にいたフランソワが消えた。


かと思うと「予想通りに」私の後ろに回っていた。


そして、どこから出したか皮袋を構え、流れ出る蜂蜜を受け止めていた。


「一発だけ返すよ」


ぷす。


お尻を突き出し、自分からミドルビーハニーの武器の前に座り込んだフランソワの額に、針を突き刺した。


「ぐえっ」


「生産スキルでローズちゃん並みの「大物」に一矢報いてしまった」


ちなみに、アマゾネスの里から東に標高を1000メートル下るとミドルハニービーの巣はあるらしい。だがアマゾネス対策なのか、とんでもない大きさの巣に5万匹の蜂が住み、水着を見ただけで大群が襲って来るらしい。


「それにしてもアヤメ」

「なに?」


「アヤメのミツバチ変身を初めて見たが、これもアリだな」


ちょっと頬が火照ってしまった。


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