第55話 2人目の残念美人
ローズ救出から5日後、まだ一緒にいる。
カフドルス侯爵家に行く予定だったが、ローズが私を母と姉に紹介したいと言う。迷わずアマゾネスの里に進路を取った。
日程は20日を目安にしてて、ひとり旅はそれからだ。
マイリから50キロ。といえば近い距離だと思うが、尖った山を何個も超えて、標高1500メートルの火山が見える盆地まで行くのだ。
カフドルス侯爵家の訪問のことが頭をよぎったが、その侯爵家と繋がりがある貴族に身分証明用のメダルを盗られた。
あとのことは貴族間で解決してもらおう。
まあ、私が寄り道しまくってることで問題も起きるのだが、この時点では何も考えてなかった。
それに、つなぎ役をやってくれるハドソンさんのダークネス商会がマイリにもあったので、伝言しておいた。
『20日後にマイリに寄る予定です。そのときにハドソンさんの予定が分かるようにしていてもらえると、助かります』と。
ここまでの自分の動きを見ると、何も予定通りにいっていないから、確約はできない。
過去の自分にダンジョンの街クオーカはどうなった、とか言われそうだ。
◆
道は険しいけど2人旅。昼はひたすら歩く。
夜は夕食をとって、夜空を眺めたあと「カプセルホテル」を出してイチャイチャしてる。
夕べは私が攻めたけど、ローズの昼間とのギャップが・・うへへ・・
「どうした、ぶつぶつ言って」
「はあっ、はあ。何でもない。それにしてもローズちゃんはどんな段差も楽々と登っていくね」
「まあ、慣れだ。これも強くなるための訓練。アヤメはスキルを使えばいいじゃないか」
「いんや、ローズちゃんに普通に付いて行くためには基礎体力が必要と分かった。ヘラクレスガードは発動するけど、限界まで自分の体力だけで勝負したいの」
「なら、夜の営みはもっとソフトにするか」
「・・そこはハードでも・・。そこじゃない。分かってたけど、この3日間で基礎体力不足を痛感した。少しは底上げしたいの」
「それよりほら、山羊の魔獣が出たぞ」
「今度は私に任せて」
強力スキルのおかげだが、ハイオーガやなんかを倒して、私もレベルだけはBランク並なのだ。
ドシュッ。山羊の角をかわし、「新型ポイズンニードール」で頸動脈を狙って刺した。
◆
「やっと難所を越えたぞ。あの緩やかな丘を越えたらアマゾネスの里だ」
短い草が生えた平地に出た。
ローズちゃんの家族へのお土産は、極上蜂蜜だ。里の人間は肉は山のように取ってこれるが、甘味に飢えているそうだ。
「ふうっ、じゃあここで最後の休憩を取らない」
「おう。腹も減って来たしな」
「パンと水でいい?」
「おお。アヤメは空間収納まで持ってるから、いつも焼きたてパンが食えてうれいしな」
「えへへ。蜂蜜もたっぷり塗ってあげる。ちょっと待ってね」
「ふふふん、ふふ、む!」
ご機嫌だったローズの鼻歌が止まると、後ろに大きな気配を感じた。
振り向くと女がいる。
「接近が分からなかった」
だ、け、ど。
「この雰囲気は」
170センチの抜群プロポーションにエルフ顔。
背中にトマホークで強者ですって雰囲気。
しかし・・
ボサボサの銀髪で、目は私がローズちゃんのために用意している極上蜂蜜に釘付け。
「この残念美人は、間違いなくローズちゃんの身内だよね」
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