第54話『カプセルホテル』の中で

ローズが右足に負った重い傷を治療した。

体力を使い果たし、彼女は眠っている。


治癒場所に使っている「カプセルホテル」に敷いている高級布団も、何かが盛大に飛び散ってグショグショだ。


ローズが起きて恥ずかしい思いをしないように、寝てるローズの体を綺麗に拭いてあげた。そして、抱いて1度外に出て、一緒に「カプセルホテル」に入り直した。


「こうすれば、なぜかホテル内が綺麗になっているんだよね」


偶然にも、別れて数日でマイリの街で再会したが、2人とも本来の目的を果たしていない。


マイリを起点とすると、私は北西のラヒドにあるカフドルス侯爵家を訪ねる。

ローズは南の険しい山岳地帯にあるアマゾネスの里に、成人の儀式を受けるために帰らねばならない。



「まあ、ローズちゃんも見えないダメージが残っているだろうから2、3日ゆっくりしてから出発すればいいか」


治療して、ゆっくり待った。


彼女の寝顔を見ながら考えた。


ヤリステ達への怒りが限界を越えたとき、魔方陣の融合が起こった。


私の中に取り込んだメガスズメバチが、ハサミムシを食べ尽くした。


そういう「イメージ」が私の頭の中で作られただけかも知れないが、実際にメガスズメバチの「ポイズンニードル」にハサミムシの「ロングテール」が取り込まれた。


シャキッ。


左手でポイズンニードルを発動させると、円錐形だったニードルが、根元8センチのナイフ状になっていた。


カプセルホテル内で飛ばせないが、発射したら貫通力が上がっている気がする。


そして、「ロングテール」は発動できなくなっていた。



ローズと並んで横になると、眠ってしまった。



なんだかくすぐったくて目が覚めると、ローズが私の頬を撫でながらこっちを見ていた。


「あ、おはよ。ローズちゃん」

「・・おはよう、アヤメ」


「・・」


「アヤメには、助けてもらった上に、絶望的だった足まで治してもらったな。もう、頭が上がらんな。従者として仕えるか」


「やめてよ・・。私は手下なんて欲しくない。今まで通りの、ローズちゃんがいい。ううっ、うえっ」


「なぜ泣く」


「昨日から夢中だったけど、危なかった。ローズちゃんが死なないで良かった。本当に良かった。うう・・」


ローズは優しく抱いてくれた。


そして、女ばかりのアマゾネスの里で仕込まれたテクニックで、私を攻めたてた。


今度は私が、シーツをグチョグチョにした。


◆◆


「・・・すごくよかった・・」


「何が?」


「あ、いや、あはは。多分、夕方だよ。お腹すかない?」


「実はぺこぺこだ」

「じゃあ、どこかでご飯を食べよう」


「うむ。今さらだが、この部屋はどこの宿屋だ。狭いが、裸でも心地よいくらい快適で、布団もフカフカだ。それに出口もない」


「・・実は、これも私のスキルよ」


「ほう!すごいなアヤメ。これがスキルなら恐らく空間魔法の一種か。私はすごい相棒を得たのだな」


驚きはするが、私の異様、異形を何でも肯定してくれる。


「し、しかし今朝、私がその、治療中に、痛みのあまり、下の方から、アレで布団を汚してしまっただろう・・」


「お漏らしのこと?仕方ないよ」


「い、言わんでくれ」


「ふふ」


可愛くてチュッチュしたら、再び火が着いた。


外に出てご飯の準備をしたときには、2人のお腹からすごい音が漏れ出していた。



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