第53話 抱き締めてあける、ローズちゃん

ローズちゃんを救護院から連れ出して、街を出た。ギルドの人にも救護院の人にも反対されたが、私の治療は人には見せられない。


そこそこレベルアップした体に身体強化をかけ、170センチあるローズを軽々と抱えた。その姿に周囲の人があっけに取られているうちに、喧噪から抜け出した。


街から出て森の大きな木の陰で「カプセルホテル」発動。ローズの使用可能時間は23時間以上残っていたし、私も1日分を追加した。


これで、どんなに声を出しても構わない。


彼女の下着も全部脱がせて、私も全裸になった。


高級布団の中にローズと一緒に潜り込んだ。



「起きて、ローズちゃん」

「ぐ、ううう。アヤメ?いたた・・」


「ごめん、起こして」


「・・いや。アヤメが助けてくれたんだな」


「ごめんね。駆けつけるのが遅くなって・・」


「謝ったりしないでくれ。私は刺し傷が肺を傷つけて、死んでいるはずだった。なのに背中の傷もなくなっている。アヤメが治してくれたんだな。ありがとう」


「言ったでしょ。パーティーは解消しないって」


「もちろん、と言いたいとこだが、もう右足がダメだ」

「私が治す」


「気持ちはうれしい。だけどな、夜中に目が覚めたときに確認した。太もも、その下の骨折もなんとかできる」

「問題は、その下のアキレス腱、足首ね」


「ああそうだ。あのクズどもに激しく抵抗したから、傷が悪化した上に何度も切りつけられた。だからもう、アキレス腱も関節も周りもずたずただ。もう壊死しかけているし、小指もない」


「ローズちゃん・・」


「そんな顔をするな。今はまだ無理だが、また鍛錬する。そしてアヤメと一緒に冒険者をやれるくらいに、力を取り戻すつもりだ。右足がダメになったくらいじゃ負けん」


どこまでも前向きなローズ。私は彼女の頬に手をやった。


「アヤメ?」

「今から、やる・・」


「・・今か?」

「そう、今よ。素肌を密着、させたい・・」


「足は痛いが、血は止めてもらったしな。それもまた一興。求められるなら・・いい」

「気休めにしかならないけど、スライムヒール3回」

「お、足の痛みがかなり収まった・・きてくれ、アヤメ」


ローズの股の間に私の左足を割り込ませ、上半身を密着させた。ローズは私を迎え入れると右手で背中、左手で頭をぎゅっと抱いてくれた。


軽く唇を重ねた。


「ん・・」

「はむ。んん・・」


「・・ん、ローズちゃん」

「ん?」


「先に謝っとく。これからすごく痛くする・・」


「・・そうか」


甘い声で答える彼女は綺麗だ。



私は、彼女の右脚に意識を向けてスキルを唱えた。


「トカゲ再生、1000回」



「え?アヤメ?」



魔法が発達した今でも「欠損」だけは誰もまだ治した記録がない。


そして、次に困難とされるのが、腱や神経の修復。高レベルの義手、義足で補うしかないとされている。


だが、私は偶然から、オスカー様の腕を治した。


そのとき秘かに、欠損していた肘のパーツを作っていた。


間違いなくローズも治せる。


だけど、その過程がどうなるか知っている。



「ぐうううう。アヤメ、いたい、いたい、いたい、足が、足首がいたい。いいいい!」


アキレス腱は切れるとき、張り詰めたゴムを両断するように弾ける。


ギュギギギ。


「う、うう、いいいい」


その神経に触れたゴムを肉の中から引きずり出し、上と下から無理矢理引っ張って、くっつけているのだ。


さらに周囲のずれた筋肉、血管が元の位置に戻される。


そして壊死した部分を捨て、新しく同じものを作り出すために、組織分裂が進んでいく。


ただ、断面には新品の血管と新品の神経が剥き出しで伸びていく。


上下の組織が出来上がる前に、神経が打ち付けるように付けられる。


ぐしゅっ!

「いぎぎぎいい」


「我慢して、ローズちゃん。私にしっかりつかまって」

「アヤメ!いたい、いたい、アヤメ、許して、もう許してくれえ!」


ガリッ。


ローズが背中に回した手が、私の背中に爪を立てる。背中の肉をえぐるくらいの力で引っ掛かれる。


ゴキゴキゴキゴキ。


「アヤメ、アヤメ、助けて、離してくれ。膝がねじ切られるように痛い。ダメだ、漏れる、ダメだ、いやあああ」


ちょろ、じょじょじょ。


「ダメ、離れて効果がなくなると、神経剥き出しのところで止まってしまう」


「トカゲ再生」は強力すぎるゆえに、微調整が難しい。


ローズちゃんの脚に魔法をかけると、足全体に効果が出てしまった。


骨に達するほど切れた太ももを押さえ付けて融合させた。複雑骨折した脛、脛がねじれた時に破損した十字靭帯を再びねじって元に戻している。


「はあああ、ううううくっ、くっ」


びくんっ、びくんっ。


トカゲ再生500回分を使い、無くなった足の小指が作られる。

段差に当たっただけで激痛が走る小指の神経が、空気にさらされたまま、まず伸びていく。


傷ついた足に何本もの針を突っ込まれるような苦痛に、身体が跳ね上がった。


ぱきっ、ぐぎっ、ぐぎっ。


「あやめぇ、助けて、いたいい、また漏れるぅ、ああああ、うわああ、む!」

「あむ、む、んん。ローズちゃん、暴れてもいい。あと少し、少しだけ耐えて」


「はあっ、はあっ、アヤメ、はあっ、いぎぎ!」


がりっ。唇を噛まれた。


「うっ、うっ、あ・・」


じょろじょろ、じょろ。


失禁してもいい。私を傷だらけにしてもいい。何分の一にもならないけど、一緒に痛みを味わってあげる。


気の遠くなるような20分間だったろう。


「ん、はあっ、はあっ、あっ、はあぁぁ・・・・」


「終わったみたいね」


「・・・・」



ローズは眠りに落ちていた。


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