第52話 子爵邸襲撃終了
サハミ子爵邸を襲撃して、捕まっていた女の子2人を助ける。
ちょっと考え、異形変身を解かないことにした。
子爵邸に来る前に、わざわざ「化け物」となって、ギルド前でダンガル商会と子爵邸の襲撃をほのめかした。
彼女達を普通に助けると、ここまでの仕込みが意味をなさなくなる。
胸が痛んだが、ローズをカプセルホテルから出して、地下牢の入口に置いた。
右足は痛々しいままだ。
彼女は「被害者」でなければならない。
異形変身のまま地下室に降りると、5つの牢屋があり、牢番が1人いた。
「ひっ、化け物」
牢番の頭をつかんだ。
「ワルいヤツラ、女フタリ捕まえたとイッテタ。鍵空けろ」
仕事をさせると、牢番にポイズンニードルを撃ち込んだ。
女2人は同じ牢屋に捕まっていたが当然、牢から出てこない。
私を見て、抱き合って震えている。
「ワタシ、ここのやつに、子供殺サレタ。だからミンナ殺した」
「わ、私達は誘拐されて・・」
「ダカラ助ける。付いてこい」
先に地上に出て待っていると、2人が出てきた。
ローズを指差した。
「この女も捕まっタ。ヤツラに抵抗して足をキラレタ。お前達とイッショに助ける」
それ以上は言葉を出さず、ローズを抱き上げて子爵邸の正門まで行くと、反対側に多くの人の反応があった。新ポイズンニードル門の下の方に100発打って人を退避させ、それから門を粉々にした。
正門前を遠巻きにして人が集まっていた。
何人か、私が連れてきた女に気付いて恐る恐る近付いてきた。
先頭は冒険者ギルドのギルマス。彼に、解放した女2人とローズを託した。
「サンニン、捕まってた。タスケタ」
「お、お前は言葉が分かる魔物なのか。なぜ子爵邸を襲った?」
「ヤツラ、子供殺した。だからコロシタ。やつらの匂い覚えた。ヤツラの家族もコロス、かばったやつもコロス。そのオンナたちの恨みもハラス。みんな、みんなコロス」
言ってるうちに興奮してしまった。
女の子達を助けに来た人達に悪いけど、殺気を当ててしまった。
「ほ、本当にやつらの関係者しか襲わないんだな」
「ヤツラの匂い消えればイイ。キエルまで、こうスル」
収納していたヤリステの惨殺遺体を置いた。
「ひいいいい!」
「うえええぇ」
「あわわわ」
こうやっておけば、ダンガル商会、サハミ子爵家の残党を殺していっても「異形の化け物」のせいになるだろう。
それにこの状況なら、子爵邸で何人か殺したローズも、完全な被害者として扱われるはずだ。
ちょっとくどいが、急いで考えて仕込みをした。
そして私は 立ち去った。
◆◆
次の日の朝、私こと「鬼の牙に返り討ちにあったアヤメ」は胸を包帯でぐるぐる巻いて、マイリの街に戻った。
一晩中、早くローズの元に行きたい気持ちを押さえ、時間を数えた。
マイリの街で起こった「サハミ子爵邸襲撃事件」は、魔物の仕業となった。
それ以上に、ギルドの報告から魔物の再襲撃を恐れた人々は、子爵、ダンガル商会関係者の排除に動くだろう。
もし、奴らの擁護をする人間がいれば、見せしめに異形変身で抹殺する。
それだけは決めている。
◆
私はギルドに飛び込むようにして入った。
「ごめんなさい、受付嬢さん、このギルドでローズという女性を保護してもらっていると聞いたんだけど」
「あ、アヤメ様でしたね。ご無事で良かったです」
「それよりローズは?私の相棒なの」
「こちらです・・」
ギルドの近くにある救護院にローズは寝かされていた。
眠る彼女の頬に手を当てた。
「悔しかったよね」
私は救護院の人にお礼を言って、ローズを連れ出した。
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