第51話 密室の殺人蜂

私のローズが、卑怯な手で死ぬ寸前まで傷つけられた。


足を失いかけてもなお、誇りを失わなかった彼女の代わりに戦う。


彼女を追い詰めた奴らを許さない。


ローズに害をなした男達の悲鳴が聞きたい。


そして、私は今まで以上に異形を受け入れた。


尻尾がメガスズメバチに変貌し始め、獰猛な昆虫が私を呼び掛ける。


全員、お前が望むように切り刻んでやる、と。


「化け物が、ハッタリだ!」


1人の兵士が私に剣を振りかざした。


ぶんっ。ぱしゃっ。


「あ、あ」

「ジョーの方が剣で切ったのに、なんで腹が・・」


新しいスズメバチの尻尾から出たニードルは平たくなり、鋭いエッジが付いていた。


そして尻尾も発動直後は前と変わらない形だったが、攻撃に移ると平たく細く伸びるようになっていた。


私の股の間を通った尻尾に付いた鋭いナイフ型ニードルで腹を裂かれ、転げ回る兵士。


ポイズンニードルの尻尾をさらに伸ばし、上から傷口をゆっくり掻き回してやった。


「うびょろうらぁぉ・・」


逃げ場がない子爵家の執務室。みんな青くなっている。


2人目は、蜘蛛の巣を張った出口に向かった。


手から女郎蜘蛛のスパイダーネットを撃って、サンドイッチにした。

丸見えの背中の装備を剥いで、肉を骨が剥き出しになるまで削った。


3人目は鉄の胸当てにニードルを刺して、そのまま天井に持ち上げた。


鋭くなった上向きのニードルが3人目自身の重みで、少しずつ鉄の胸当てに食い込みはじめている。


「す、少しずつ刺さっている。いて、痛い。降ろしてくれ!」


ずぶ、ずぶ、ずぷ。


「ぎゃああああ」



1人ずつ7人の兵を殺し、残りは4人。


「ど、どうなってるヤリステ」

「わ、分からないよ、パパ」


「こ、ここから出たら貴族に逆らったら、どうなるか教えてやる」


「子爵もヤリステもどうでもいい。俺だけでも逃げてやる」



リーダーが斬りかかってきた。


私より先に、尻尾のメガスズメバチが反応して、リーダーが剣を持つ右手を切り落とした。


「ぐぎゃあああ!」


「血止めだけしてあげるよ。スライムヒール」


戦意喪失のリーダーをメガスズメバチの尻尾で足払いしたあと、うつ伏せに倒してニードルで腰を押さえた。


「いでぇ、やめてくれ、腰に刺さってる!」


私は手持ちの中で1番錆びたナイフを出すと、リーダーの右足首に刃を当てた。


ごり、ごり、ごりっ。


「ひきぎぎきぃ!」


「ローズちゃんは泣いてなかったわよ。せめて彼女と同じ傷を付けるまで、耐えてよ」


ごり、ごり、ごり、ごり。


錆びたナイフでは簡単に切れない。


「ぎゃぎゃぎゃ、ぎゃあ」


「もう、いいや」


「え」



切ったのとは反対の左足のふくらはぎに、尻尾でニードルを刺した。


「いぎっ」


「ポイズンニードル発射」


ボンッ。


「うぎゃぁぁあえ!」


ニードルをリーダーのふくらはぎに刺したまま飛ばしたら、奴の膝から下が爆散した。



ヤリステは漏らしていた。


「うわあああ。謝る。金をやる。僕だけは助けてえ!」


さくっ。

「ひびゃああ!」


ヤリステの上唇を平たいニードルで切り取った。


腕が膨らんで、熊が手伝わせろのと言う。


ヤリステの指先を潰し、指の関節を折り、膝を反対側に折り、力自慢を主張する。


耳はちぎった。鼻は切り取った。女を悲惨な目にあわせてきたキ●タマは潰し、竿は切り取った。


「ローズの背中にナイフが刺さったままだったわ。返す」


口にナイフをねじ込んで、ヤリスての遺体はガマ袋に収納した。


リーダーもおびただしい出血に意識朦朧だったが、両手も破裂させた。



商会長と子爵に向き直った。


「お、おい。魔物に見えるがお前は人間なのだな・・」

「金ならやる・・」


2人には悪の繋がりを聞かねばならない。


だけど、理性的にはなれない。


ニードルで、手足から破壊していった。




終わってから、最後の仕事を思い出した。



魔法ソナーで見つけた、地下室に捕らわれている女性を助けることにした。


窓を割って、邸内から出た。


新しいポイズンニードルが馴染んだのか、頭の痛みはなくなった。


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