第26話 デスマッチ

横取り冒険者4人とギルド訓練場で対戦している。


戦うのは1対1だ。距離は約5メートル。


「はじめ!」

ギルマスの号令とともに相手は距離を詰めてきた。


もう振りかぶっている。


「ハイオーガでさえ、接近戦の動きはコンパクトだった。そうか短期間だけど私も濃い戦いを経験してるんだよね」


2メートルになったとこで攻撃だ。


「両手からポイズンニードル10発」


ド、ド、ド、ド、ド。


最初の一発は避けられた。だけど、お尻版より時間がかかるとはいえ、次弾の装填は「常識」より早い。


10発を撃ち終えると、足に4本、体の装備を貫通して肩の付け根に1本、ニードルが刺さっていた。


「ぐや、ぎゃあああ!」


「実験」


ドンドン、キンッ、ドン、ドン。


1番手の装備がある場所に30発撃ってみた。


「角度が良ければ、鉄でも貫通する。強力ね」


ざわざわ。

「ストーンショット?」

「何十発も撃ったぞ」

「1発のMP15くらいだよな。すげえ」


観客はポイズンニードルをストーンショットと勘違いしてくれた。


「くそ女・・」


「魔法使い相手に正面から来るなんてバカだわ」


私の言葉に2番手の足が震えている。

顔まで覆った万全ガードの癖に。


警備を兼ねていそうな屈強なギルド職員から背中を押されて、私の前に立った。


「2戦目はじめ!」


どうせ向こうから来ないと思ったから、ダッシュした。今度は左手から、スライム酸を顔に飛ばした。


ジュワッ、ジュワッ。


面の隙間から酸が入った。

首から上では煙が上がっている。


「あぢいいいぃぃ!」


うつ伏せに倒れのたうち回る2番手君。


「ポイズンニードル50発」


針ネズミにしてやった。



「中級土魔法のストーンショットの次は、中級水魔法でも取得が難しいアシッドウオーターか・・」

「二属性の同時制御だと・・。あれだけ撃てる魔法使いが無名だったのかよ」


ざわざわざわざわ。

「あいつら馬鹿だ」

「女とはいえ、B級魔物を素材を痛めず持ち込んだ冒険者だろ」

「殺し合いを挑むなんて・・」

ざわざわ。


憶測が飛び交う。


「次!」

「ちくしょー、殺してやる」


ギルマスに呼ばれた3人目は威勢がいい。

強いのか?


「へへっ。前の2人で魔法の無駄使いをしたな。上級魔法はないが1000くらいMPを使ったんじゃねえか。貴族が召し抱えるレベルだけど、限界だな」


「おっ、鋭い。その洞察力がありながら、何で真っ当に冒険者をやらないかな」

「うるせえ!余裕の表情を消してやる」


洞察力はあるが、剣の構えに努力の跡が見えない。


「なら正攻法で相手をしてあげる」


「体さばき」はパッシブなのに、3番手の剣を交わせなかった。

だけど、ヘラクレスガードを信じてるから、力一杯に適当フックを放った。


ドスッ。


「うご、なんで斬れねえんだよ」


倒れた髪の毛を持って、真上に3番手君を投げ上げた。


ブチブチブチ。

3メートルくらい真上に飛ばした。

「ぎえぇ、あだまがああ!」


「追撃のトノサマホップ!」


ゴンッ。ベキ。


真下から跳んで、背骨に高速頭突きを食らわした。


「副ギルマス、次ね」



最後のやつは観客席から何か渡されていたが、これはルール無用のデスマッチ。


何を用意しても許される。


何も問題はない。

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