第18話 ドキドキのステータス測定

侯爵家のオスカー様に魔法の「常識」を聞くと、私が手に入れたスキルが思っていた以上に破格だと分かった。


早くどこかで新しいギルドカードを作って、MP量を調べたい。


「オスカー様、ハイオーガの魔石ももらって、色々と教えてもらいました。これで貸し借りなしということで」


「いやいやいや!危機を救ってもらった上に、諦めていた古傷まで治してもらった。ケントの命も助けてもらったんだよ」


「気にしないでいいですって。それに、先を急いでいます」


「貴族家としても、人としても、このまま別れる訳にはいかない。そうだ。私が身分を保証するためのメダルがある。それを持っておいてくれ」


そうか、魔石がお宝なのは私だけ。

オスカー様からしたら、助けてくれた相手を無一文で放り出すようなもんか。貴族って難しいけど、この辺が妥協点か。


「ではオスカー様。そのメダルをお預かり致します」

「必ずラヒドに立ち寄ってくれ。それに、繋がりがある貴族にも、そのメダルを発行したことを通達しておく。貴族家のリストを渡すから、困ったことがあれば、連絡して欲しい」


初の貴族との邂逅は、いいものだった。

だけど、別れ際にケント君から聞いた話では、身分を笠に着る貴族の方が多いそうだ。


◆◆


「トカゲ再生は200回を越えて使った。他のスキルも使いまくり。まだMPが切れる気配がない。何かおかしい」


推察されることは・・。まったく分からない。ポイズンニードルも、見た目は中級魔法だけど、ギルド訓練場で見た使用MP15の中級魔法ファイアランスより破壊力がありそうだ。



中級魔法使いの下位で総MPが400。それで一目置かれるCランク冒険者になれるそうだ。


「ラヒドでは登録だけで有料の能力鑑定は避けよう。う~ん。けどMP量は知っておきたい。ここはアサシンに変身して行こうかな。いや、それだとアサシンが使いづらくなる」


という訳で、なんかに変身できないかと虫を探した。夜に森の木の上で寝床を作った。ここで「ホタルピカリ」の出番がきた。


「すげえな、蛍と同じようにへそから脚の付け根まで光ってるよ。これは恥ずかしい」


私の前には蛾の魔獣がわんさかいる。ウスバカゲロウの魔石から薄幸、美人薄命の魔方陣を得て「短命」を手に入れたが、絶対に口に出さない。


嫌になって寝た。


次の朝、30センチある魔蝶クロアゲハを見つけて倒した。魔石を食べると、妖艶、隠蔽、舞踏会の魔方陣から認識阻害用の「パピヨンマスク」を手に入れた。


やっとステータス測定に行くことにした。



バンカの街に到着した。少し海から離れた小高い場所にある街のギルドはざわついた。原因は私だ。


「私はアマゾネス一族の戦士アヤメ。冒険者登録とステータス測定を頼む」

「・・はい、ではこの水晶に手を置いて下さい。冒険者の登録は無料ですが、ステータス測定は20000ゴールドになります」

「頼む」


顔に真っ黒いアゲハが張り付いたような、エロい表情の女が現れたのだ。


「はい。お読みします。レベル21、HP235・・」


おおっ、レベル8でHP51、MP1から大幅に上がっている。


「カズナ様のMPは、えっ?水晶が故障したかな・・」


このMPに私がスキルを使いまくれる秘密があるはず。


「誤作動だと思うのですが、MP283259と表示されていまして・・」

「28万ね。そりゃありえない。あはは。ま、レベルとHPが分かったからいいよ」


たまげたよ。ラッキースライムには『神ノ技能 魔方陣転写』だけじゃなくて、スキルを使うためのMPも山ほどもらってたんだ。


中級魔法使いのMP総量が普通で400。上位に到達間近の一流冒険者、BランクでMP900とか聞いてる。私は桁違いだ。

端数だけで3259・・


急いでギルドを出ようと回れ右すると、進路を塞いで待ったをかけるやつがいた。女だ。


「ごめん、ちょつと急いでるの」

「ダメだ。お前は何者だ」


うわっ、面倒くさっ。



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