第17話 魔法の常識を教わる

「申し遅れましたアヤメ殿。私はラヒドを収めるカフドルス侯爵家の次男、オスカーと申します」


げ、思ったより身分が高い。


「ご丁寧な挨拶、痛み入るのですでございます。ど平民のクロビカリアサシン、アヤメです」


今、ハイオーガと戦った場所から2キロほど移動した村の一角に、天幕を張ってオスカー様にお茶をいただいている。


なぜこうなった。


ハイオーガを倒して「トカゲ再生」で怪我人を治した。


一件落着かと思えば、オスカー様と騎士隊副隊長ジョイの治療でやりすぎたことを知った。


2人の傷は2年前のもの。


経緯は省くが、オスカー様の腕は神経が切れ、高位治療師もさじを投げた。副隊長の目も完全に失明していた。


ケント君からそれを聞き、ヤバいと思った。

「トカゲ再生」がそこまでやれる子だとは、思ってなかった。


緊急離脱しようとしたが、オスカー様以下、隊員全音が私に膝をついて頭を下げていた。


なんだか聖女のように扱われている。


「私は聖女でもないし、最近まで魔法が使えなかったんです」


「だから、アヤメ殿は自分の実力を知らなかったと」


「言葉も普通でお願いします。年下で平民ですから」

「そうさせてもらうよ。それより、お礼がしたい」


「う~ん。それならハイオーガの魔石と魔法の常識、私の魔法の変なとこを教えて下さい」


「魔石なんて魔道具の燃料にしかならないし、なんて欲がない・・」


「回復魔法についてですが、おかしかったですか」


「まず、君は魔法を重ね掛けして効果を出したよね」

「はい、私の回復魔法一回ではケント君が死にそうだったので」


「普通の回復魔法はヒールで切り傷が治せるくらい。重ねがけの効果も、治る範囲が広がる程度だよ。同じ傷に三回もかけると、もう効果はない、というのが「普通」だね」


「なんか、違いますね・・」


「それに、君が使ってくれたのは3段階上くらいのグレーターヒールに見えたよ」


「じゃあ。それでお願いします」


「それでって・・。そのグレーターヒールだって、この国に10人くらいしか使い手がいない」


「結構、ヤバい気がしてきました」


「そして、国の最高医療機関が「不可能」と判断した私の腕、副隊長の目を簡単に治した」


逃げたい。だけど、話を聞いて余計な危険を避ける知識も欲しい。


「そんな顔をしないでくれ。私達は命の恩人を利用するほど腐ってはいない」


「はあ・・」


「客人として我が家に来てもらうのが一番だがな」

「あはは。こんな出所も分からない人間をお貴族様の家に連れて帰ったら、問題になりますよ」


「まあ、結構本気なんだけど、仕方ないか。メモしながら説明するから、参考にしてくれないか」


◇MP量・中級魔法使い900~1000未満、上級魔法使い1000~5000、特級5000~


◇MP使用量・中級魔法ストーンショット15、初級回復力魔法ヒール50、中級回復魔法ハイヒール150、グレーターヒール公開情報なし


◇複数魔法属性の割合・2属性魔法使い100人に対して1人。3属性魔法使い2000人に対して1人。なお聖属性と他属性の2属性持ちは確認されていない



目の前でメモを作りながらオスカー様が、頭を押さえている。


それは、私を心配してくれてる証拠だ。


『神ノ技能 魔方陣転写』のお陰で魔法のようなものをポンポンと使える。


ちょっとだけ常識とは違うかと思ってたが、ここまで違うとは。私のMP使用量もおかしい。


それが、最初の方に分かって良かった。


貴族なんて、と思ったけど、助けて正解だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る