第15話 ハイオーガと人助け

街道でオーガに襲われている豪華な馬車を見つけた。


オーガの魔石が欲しい。


防御のためヘラクレスガードを発動して、草むらの中を15メートルまで近づいた。


この辺の領主関係者かな。でかい馬車に護衛騎士が15人くらいいる。だが・・


「ガアアア!」


「げっ、前に遠目に見たオーガと何か違う。うわっ、もう10人くらいやられてるよ」


ゴオン!ドコン!


「ハイオーガの奇襲だ。隊長と副隊長が飛ばされた!」

「オスカー様、私達では倒せません。私達が囮になりますのでお逃げください!」

「ダメだ。私も戦う」


ゴンゴン。


ドコン!ザザザザ!


吹き飛ばされた小柄な兵士と、ヘラクレスガードで真っ黒な私と目があった。


「そこの色黒女性、危険ですから逃げてください。ここは危ない」


そうだ、陽光の下で黒光りする私は隠れてもいない。

むしろ兵士の声でオーガが「女」の私に気づいた。


にやあっとして、ターゲットをこっちに変更したようだ。


「逃げなさい!みんな、色黒女性が逃げる時間を稼げ」

「はい、オスカー様」

「鬼のバケモンが、こっちこいや!」

「ケント、色黒女性を守れ」


「はい! 色黒女性よ、私の後ろに隠れて下さい」



む~ん、騎士道だ。人にかばわれたりとかないから、こういうのに弱いんだよ。

それにもう、オーガが走ってきてるし。


よし、考えていたアサシンを名乗るか。


「私は東の国から来たアサシンのアヤメ、ここは私に任せなさい」


やべっ、本名を使ってしまった。まあいいや。


「ええ?無茶ですよ」


「大丈夫。熊力、ボイズンニードル発動」


格好つけて肉弾戦を挑んだが、私の攻撃は単調で大ぶり。


対するハイオーガは、修羅場を潜り抜けてきたオーガの進化種。

化け物のクセに、柔術家のごとく、流れるような動きで私の両手をつかんだ。


「ああっ、離せこの鬼が!」


どんっ。


私を助けようとしたケント君は、鬼の膝蹴りを食らって血を吐きながら転がっていった。


「やばっ。一瞬だけ口からスライム酸」


ビシュッ!ハイオーガの右目に強酸を浴びせた。


「ギエエエエエエ!」


「手を離したねハイオーガ君。胸を使わせてもらうわよ。トノサマホップ、とぅ!」


オーガの後ろ斜めに飛びながら、ポイズンニードルを発射。


どんっ、どんっ。


「ご、ゴァ、ゴァ・・」



「す、すげえ」

「魔法の威力が半端じゃない」

「彼女は何者なんだ」


「ケントお、しっかりしろ、死ぬな!」


称賛の声に混じって、不吉な響きが聞こえてきた。


「ケント、ケント」

「オスカー様、あの女性、アヤメさんは・・」


「大丈夫だ、危機は去ったぞ」

「はあっ。良かったです。オスカー様もおけがは・・。ごぷっ」


「ケント!」


復讐をまだ遂げていない私からしたら、このまま去るのがベスト。


だけど、彼は私を助けるために怪我を負った。


私は異形変身もするけど、心は乙女。


「もしかしたら、私ならケント君を助けられるかも知れない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る