第13話 サボサと普通のゴロツキ

サボサの街で商業ギルドに行った。


私が股間の魔方陣から出した蜂蜜を売って、金が増えた。


「いやあ金もできたし、猪の生肉以外のもんでも食うかな。その前に服屋だな」


服屋と言っても古着屋だ。

考えていた通り、ロングスカートを20枚買った。プラス上のシャツ、パンツも買った。

これでスキルを使っても、ズボンが弾け下半身丸出しになる心配もないだろう。


ところで、商業ギルドを出てから尾行しているやつがいる。


「気配察知発動。できねーよ。ソナー系のスキルならコウモリかな。そもそもコウモリって、どこにいるんだろう」


また独り言を言いながら歩いて、両側を石作りの建物に挟まれた路地に入った。


今のスキル構成で戦いやすい場所だ。


追跡者と向かってみると、鬼の牙の連中と雰囲気が似てる。


「要するに社会のゴミだね」


短髪で鼻が潰れた男に声をかけられた。


「お姉さん。さっき商業ギルドでミドルハニービーの蜂蜜を売ってたね」

「なんだ、そんな話か。ナンパかと思って期待しちゃった」


「えへへ。どこで採れたか教えてくれねえか。俺らも儲けたくてな」

「セチバの森。湖の近くに、すごく大きな巣があるよ。誰のものでもないから、勝手に採りに行けば」


建物の反対側から2人追加。路地で前後を挟まれた。


「案内してくれねえかな」

「ごめん私、もうこの街を出て森と反対側に行くの」

「この状況で強気だねえ。アホなのか」


「騒いだら、誰か出てきてくるよね」

「助けを呼ぶ気か。この辺りは廃墟しかねえ。住人なんていねえよ」


4人とも手慣れてるのか、ナイフを抜いた。


「それを聞いて安心したわ。建物を傷つけても怒られないね。熊力、ヘラクレスガード、同時発動」


腕が黒光りして膨れて、上着が弾けそうだ。ダボダボのローブでも買うか。


男が突いたナイフが左腕に当たった。


カ~~ン。


金属同士が当たったような音が、路地裏に響いた。


「ふんっ。くらえっ」


強化された右手で適当フックを食らわすと、1人目の歯が飛び散った。

次の奴に左ストレートを当てると胸がへこんだ。


「ぎゃっ!」

「ぶべっ!」


あっという間に2人分の血が撒き散らかされた。


ヘラクレスガードで黒光りする私に、残る2人は驚いて足が止まっていた。


その距離5メートル。


「トノサマホップ!」


腕を前に突きだし、胸の高さで水平に跳んだ。


「なんだこの女、ぐごっ!」

ゴン!


「やべぇ」


「猪突猛進!」


ドゴッ。


最後の一人が逃げたから、後ろから強烈タックルをお見舞いした。


完勝だ。


ロングスカートを翻し、ヘラクレスガード解除。


「やっと、普通に近い戦い方ができた・・」


普通って、素晴らしい。



満足した私は次の日、サボサの街をあとにした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る