第12話 サボサの街とダンディー

前にギルドで見た簡易地図の形を思い出してみた。


記憶が正しいなら、サボサの街は今いる川を下ればいい。そのままサボ川を下れば海辺の街サボサにたどり着く。


ヘラクレスガードで体を覆って水面を泳げば、そこまで危険はない。膜呼吸も60分続くと思いながら、水に入った。


道中の川辺の小さな甲虫から「ホタルピカリ」を得た。くれたのはホタルだったようだ。

前に見たホタルが光ってたのはお腹から下。指で発光させても範囲が狭い。大規模ならどこが光るのか想像できたので、発動させるのは保留してサボサの街に向かって泳いだ。


◆◆◆


結局、ラッキースライムに『神ノ技能 魔方陣転写』をもらって10日後、サボサの街に到着した。


地上の移動スキルがないから「フロッグキック」で川を泳いで、いろんな獲物を捕まえながら移動した。


一度、得たスキル全部を発動させて水に姿を映してみたが、これを人に見られたら討伐依頼が出ると思えた。


サボサに到着する前に、殺した奴から剥ぎ取った服を着た。ズボンもはいたが、スカートを買うまでは下半身でスキルを発動させないことを誓った。


サボサの街に到着したら、門番さんがいた。


「この辺で見かけない奴だな。冒険者か?」

「いえ、田舎の村出身ですが不作で食えなくなって、働きに出てきました」


「おおそうか。この街なら冒険者ギルドも商業ギルドもあるからな。早く仕事が見つかるといいな」


門番さんにお礼を言って街に入った。


現金を作るために熊をガマ収納してきたが、弱そうな私が冒険者ギルドで出したら騒ぎになりそうだ。


殺した「鬼の牙」からぶんどった金も合わせて10万ゴールドしかなかった。


金策をする。


久々にベッドで寝たいのもあったから、2日分の宿を取った。

欲しい金額は、旅用品の調達、初めてのぜいたくをすることも考えて30万くらい。


道具屋でふたつきの木製容器を10個購入。容量はひとつ500ミリリットル。


宿屋の部屋に鍵をかけて、生産タイムだ。


「指から「極上蜂蜜」を出しても容器10個は無理。異形変身しかない」


一応、私自身をきちんと洗って、下半身をミツバチに変えた。ヘラクレスガードと同時発動だと真っ黒だけど、今は黒と黄色のツートンカラーだ。可愛くはないが・・。


とぽとぽとぽとぽ。


「手からは自分つかい。お尻の針からは売却用でいいか」


ただ、香りが漏れて、宿屋がざわついたようだ。


次の日、商業ギルドに行った。

「あの、森の中で運良く蜂蜜を手に入れたから売りたいんですが」

「はい、ギルド会員でない方は少し買値が安くなりますが、よろしいでしょうか」


「構いません。これなんですが」

「むむ、これは。鑑定ができる副ギルマスを呼んできます」


鑑定?まさか蜂蜜が、私が異形変身をして生み出されたととばれないか、ヒヤヒヤしたが問題なかった。


「おおっ、これはまさに極上のビーハニー。少し味見させてもらっても?」

「ど、どうぞ」


ダンディーなおじさまが、木のスプーンに付いた蜂蜜をクンクンしたり、ペロペロした。


ケツといえば、ケツと言える場所から蜜を出してるから、股間がキュッとなった。


「う~む。これほどの品質のモノは数年振りです。恐らくセチバの森で採れたものですね」


微笑むダンディーを見て尻がむず痒かった。セチバの森ではなく、私のどこかから採れたものだ。


なんと木の容器10個で40万ゴールドになった。


次の持ち込みはあるのかと何度も聞かれたが、ここで身ばれしたくないからためらった。




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