第10話 復讐3人目

復讐相手の2人目、剣の達人っぽいベンおじさんに「まともな」剣技はまるで通じないが、オリジナル剣技なら通じた。


手て闘うふりをして、お尻をスズメバチに変化させポイズンニードルを発動。トノサマホップで急接近して、腕の数倍速く動くお尻の針で右太ももを刺した。ちなみに手からニードルはきっちりかわされた。


「名付けて「異形剣」。20センチ、直径6センチの針が根元まで刺さったから、もう動けないでしょ」

「ぐあ、お前がやっぱり化け物なのか。なんでアヤメに化けたんだ」


「逆よ。私は正真正銘、アヤメよ」

「いでえ。くそ、見逃してくれ」


「都合がいい話ね。対価はあるの?」

「ヤリステだ、ヤリステの情報をやる。それでどうだ」


少し話してくれたけど、まあ「サハミ子爵」というのが、悪徳商会のヤリステと一緒に悪いことをしているということか。


「よし、助けてあげよう。スライムヒール」

「お前、回復スキルまで持ってたのか、まあありがてえ」


実はスライムヒールは傷口をふさいで痛みを軽減する程度の効果しかない。ベンおじさんの太ももの傷はふさがったが、中はずたずたで歩けない。


「ずんぐり君を始末するか」


倒れたままのずんぐり君は私を暗い目で見ている。


「こ、殺そうとした相手に攻撃をされて、片足ももうだめだ。助かると思う方が馬鹿だろ。もう殺せ・・」


「そう」

ドドドドドド!


私は復讐者だけど、鋼の心を持つファイター出身ではない。情に流されたくない。この男と長く話すことが心の揺らぎにつながるような気がして、ポイズンニードル10発で止めを刺した。


「つ、土魔法のストーンショット?」


ポイズンニードルを人前で使うときのことを考えてなかったけど、いいヒントだ。


スライム酸も何か似た魔法を見つけて、それだと言い張ろう。


「なあアヤメ、はあっ、はあっ」


考えごとをしていると、ベンおじさんに声をかけられた。


「まだ脚が動かねえ。回復魔法をもっとかけてくれ」

「ここからは有料よ」


おじさんにスライムヒールを3回かけてあげると、痛そうにしながらも立ち上がった。


ぼそっ。

「アヤメの化け物が、覚えてろよ」


私は100メートル離れたミドルハニービーの巣に歩いて行って、ポイズンニードルを一発撃ち込んだ。


怒った大きな蜂の大群がヘラクレスガードに守られた私にまとわりついてきた。


私は獰猛な蜂の塊に包まれたまま、蜂をプレゼントするために、ベンおじさんの方に歩いていった。


◆◆

「鬼の牙」が私を探しにきたといっても、生きてるのを確信してなかった。


崖下に私の死体がなかったのは、岩場に棲む大型トカゲが持ち去った可能性も十分にあるからだ。


思った以上に使えるスキルが手に入ったから恐怖にとらわれることもない。


復讐は必ずするけど、それだけにとわられる気持ちも薄らいできた。



まずはサボサに行きたい。




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