第8話 最高の生産スキル

私は商人の悪徳息子と手下に復讐を誓った。



プランはこうだ。


◇森を無事に脱出する。

◇ラヒドまで逃げて、別人になる

◇陸上、空中、海上、海中で何でも倒して魔石を食う

◇できれば人外と呼ばれるSランクの力を手に入れる

◇帰って復讐する


まとめると、私の人間の浅さがみえてくる。残念だ。


寝床はトノサマホップを使えば、高い木の幹に作れる。


だけど気分的に疲れてきたから、森を出たい。



次の目的地、サボサには森の奥に入ってしまうが、湖から川に抜けるのがベスト。延々と森と岩山を降りるよりましかと思う。


適当に当たりをつけた方向に歩いていると、蜜蜂の巣を見つけた。


ただし巣がでかい。大木を利用して、その木を覆うように地面から直径5メートル、縦10メートルの円柱状に作られている。


蜂は15センチある。間違いなくミドルハニービーだ。


こいつらは何を食っても、スキルで蜂蜜を作る。絶品で、街で高値で取引きされる。


ただ、蜂自体が普通のスズメバチなんか比べ物にならない強さで、巣に近付く人間を一斉に襲ってくる。蜂蜜の取得難度は高い。


私は特攻あるのみだ。強引に蜂蜜を分けてもらおう。


「ヘラクレスガード」


黒光りする私が巣に近付いくと、蜜蜂が一斉に襲ってきた。


「問題ない。ヘラクレスガードが攻撃を通さない。いい匂いがするけど、巣のどの辺に蜜はあるんだろう」


蜜蜂にたかられながら、気づいた。


「蜂自体からいい香り。これは魔石だ」


早速、方向変換。蜂を1匹捕獲した。


「スライム消化」で魔石ごと食べた。「甘露」「ぬるぬる」などの魔方陣から狙った通り「極上蜂蜜」を覚えた。


「人間に生産不可能な蜜を作れる。金を作る目処もできたな。貴重なガマ袋といい、すげぇことになってるよ、私」


早速右手人差し指から出した。


ぽたっ。ぱくっ。


「おいし~い。2週間ぶりの甘味だ。ヤバイよ。これから、いつもこんなもん食えるの?」


ぽたっ。ぽたっ。


「少ないな・・」


私のつぶやきに呼応し、再び魔方陣が体の下の方に構築された。


お尻がスズメバチのときのように伸び、針が出た。その先からトロトロと蜜が流れ出た。


「そういや、ミドルハニービーって、針の先から蜜を出すんだった」


こっちの方が大量に出るが、正直に言うと異様だ。


「ま、いいもんが手に入ったし、湖の方を目指すか」


100メートルも歩くと、人がいた。


2人。蜂蜜採取の冒険者かと思ったが、装備が蜂対策に見えない。


「あ、あいつらは・・」


なんと「鬼の牙」のヤツが2人だった。



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