4章 者間距離 -side.M-
1
でも、中でも
「でさー。その上司がコテコテのセクハラ野郎でさー」
「えー、素でー?
でも、あんたの所はまだ
「その点、
来た。
振られた事で思わず身構えた
「……何が?」
「だって、あれでしょ? お姉さんの清書係なんでしょ?
そんなの、家で好きな時に自由に出来る上に、好きに休めるし、超楽じゃん」
「そうそう。相手が身内なら、気楽だろうしね。
納期に少し遅れたって、食事を奢ったりすれば許して
「おまけに、それでいて給料は公務員並? 何それ、嫌味かってーの。
そしたら、
「
それより、もっと生産的な話しよ。ほら、あんたの旦那の話とかさぁ」
「そうそう、忘れてた!
聞いてよ、
この前とか特にさぁ!」
「そういえば、
「あー……ごめん、遠慮。
「そっか。
でも、
「うーん……やっぱ
「ちょっとぉ! 振るだけ振って、流さないでよぉ!
「違うって。映画の前の予告みたいな物。
そう、カッカすんな」
丁度こんな風に、良くも悪くも、女同士の話というのは移り変わりが激しい。
まるでキューで突かれたかの
ピンチを切り抜け安堵した
その時だった。
反対側……男性陣が固まった方から、激しい音、続いて怒声が届き、全員の視線が問答無用で一箇所に注がれたのは。
「何をやってるんだ!」
「
こんな時までノンアルで流そうとする方が
「だからって酒が苦手な人間を煽って無理矢理、散々呑ませた挙げ句、『気分悪いから水くれ』と頼んでいるのに、水を渡す振りして
大体、君は昔っから!! 修学旅行の時だって!」
「ああ、そうかよ! 俺だって、あんたが未だにいけ好かねぇよ!
大して歳離れてねぇし、教え方だって上手い訳でも無ぇ
てか、いつまで過ぎた事、引きずってんだよ! あの件は、もう謝ったろうが!」
あれは、先生。
普段は幼児に対しても敬語を使う彼があんな、口調を荒げ、胸倉を掴むまでに激昂する所は、
そして、その相手は……忘れもしない、恨み深き主犯、坂井。
何かにつけて揉め事を起こしていた、
また何かやらかしたのか……と、
ああ見えて彼は、腕っ節は強いし、向こうも
でも、
彼が指差す先で、
「……
酔っ払ってもいないのに酔いから覚めた心境で、
彼は、
「
「謝んなくて
歩ける?」
「……どうにか……」
最低限の確認を済ませた
「あんだよ。まーだ、よろしくしてやがんのか。所構わずイチャイチ、イチャイチャ。
次は
聞き飽きてんだよ、こっちゃぁよぉ」
「坂井……酔い過ぎだ!」
「しゃしゃり出て来んな、元担任。
俺は今、そいつと話してんだよ」
止めようとした彼を突き飛ばし、坂井は
思ってたよりもずっと、酒臭かった。
「よく見りゃあんた、まあまあイケてんな。
どうだ? 俺と付き合わね?
そしたら、そいつには
「
付け加えとくと、
つー
「これだけ有りゃ足りんでしょ。
あと、
一方的に用件だけ
が、その前に坂井が立ちはだかる。
「だぁから。まだ話の途中だってんだろ。
てか、俺の
そして見下ろしながら、軽蔑する。
「あんたが誰か?
『過去の
あんたにとっちゃ、もうどうでも
あんたのやらかした馬鹿の
あんた、マジで終わってんね」
「ちょっと、
その辺で
女子の一人が
他の面々も、口々に言う。落ち着け、冷静になれ、大人になれ。そんな月並みな事を、
もう沢山だ。
「いいや、
うんざりしてい
「あんた達もだよ。
『仕事が超楽で
それでいて
あっそ。そんなにやりたきゃ、いつでも代わってやる。
金銀の伝説のポケ○ン並にあちこち動き回る、家事は
それが務まる
こっちとしては願ったり叶ったり、
ずっと秘匿していた、明らかに決裂、決別を
そんな捨て
「
彼は少し肩で息をした
「これは受け取れません……。
費用は僕が、開始前に
「あー……そういえばここ、飲み
「はい……。
それと、すみません……。僕の監督不行届きの
まさか、トイレで
……
それはもう、もし
「……別に。センセ、悪くないじゃん」
彼のお
「こっちだって、受け取っとけば良かったのに。知ってるでしょ?
っても、前述の通り、
女のネットワーク程、怖い物は無いよね。何たって、こんなに身近なんだから」
いつもみたいに長話をした
「
『先生は、
でも、もう
センセも、孤立したくないでしょ?」
「いや、でも」
これ以上、引き止めないでくれと。彼は首肯し、道を開けてくれた。
「来月でしたよね? お二人の誕生日。
期待していても、よろしいですか?」
「……」
……覚えてたんだ。まぁ彼これ4年に渡って、今までも学校には内緒で個人的に祝ってくれてたし、
内心、驚いたし、それ以上に嬉しかったけど。
「……ん。盛大な奴、お願い」
「畏まりました。
あ……でも、サシじゃないと
いや、呑むの前提か。まぁ、流れからして、そうなるか。
仕方ない……残念だし申し訳ないけど当日は、あんまり呑まない
「心配要らない。
「なるほど。確かに」
こういう、何も言わずとも手伝ってくれる、助けてくれる所が、本当にポイント高い。ありがた過ぎる。
「
「平気です。少し複雑ですが、元担任ですから。
それに、
意味は、よく分かりませんが」
「じゃあ、言うなし。でも、あんがと、センセ。
「畏まりました」
こうして
※
「
「気にすんな。
普段、こっちが助けられてばっかなんだから。こういう
隣に座り
それにしても、彼の帰りが遅い。
どこぞの長女みたいに道に迷ったってのは無いだろうから
「ごめん。ちょっと、
あんたは、もう少し休んでな」
そう言い残し、スカートを軽く払いつつ立ち上がり、
「……
そして、何歩か進んだ頃、
「お前、二言目には俺に言うよな? 『
……俺も同じだよ。お前は自分を下げてばっかだけど、俺にだって、お前が必要なんだよ。お前と同じか、
今日だって、こうして助けてくれたしな」
「……ん。あんがと。
けど、だったら余計、無茶すんな。休んでなってったじゃん」
「ああ……。……そうする……」
しおらしく
「のび○かよ」
悪態を
このポジションは是が非でも手放したくないと、改めて自覚させられながら。
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