3
「
約二十分後。教室に戻ると、いつも落ち着いている
それが逆効果……火に油を注ぐ行為だと、知らないまま。
「
あんなの、気にしちゃ
酷く悪趣味な、単なる
「激しく同意。
ところで、
写真なら
「え!?
それは、その……!」
「クラスの
別に、ほら、何も不自然じゃないでしょ!?」
「へー、そう。
じゃあ、確認しまーす。
思った通り、一人として挙手する者は
「だってよ。
もう一度、聞く。
「ごめん。
やっぱ、答えなくて
「そ、そう! そうなの!
今日、偶然、一番乗りで来て!
でもあれ見て驚いちゃって、どうして
ガンッ!!
激しい音が、教室を駆け巡る。
「
こっちは
親友だと思ってたあんたに、
まだ痛みが走っている足を戻し、
ひょっとしたら最後に交わした事になるかもしれない、言葉を。
「あんたなんでしょ? 犯人。
あんた、あの日……現場に
陰でコソコソ、
客観的に見たら、視線だけで人を殺めそうな目をしていただろう
けれど、
そのスマホに表示されていたのは、あの日、
「な、
口を滑らせた
しかし、それは余計、自白してる
「
個人情報だから
これは、
まぁでも、証拠をくれたってのも問題かもだけど、今回ばかりは、その限りじゃないわね。
そりゃあ、そうよね。だって、あんたがしてたのは、完全に犯罪だもの」
俯いていた
何枚かのプリントを抱えて。
「
けど……あんたは、俺が考えてたよりずっと早く、易々と一線を越えた。
俺の親友を、汚い方法で酷く傷付け、あまつさえ
だから、俺達は……あんたに寄せていた期待と信頼を裏切られた分も上乗せして、倍にして、やり返す。
罪を償い、やり直して
言いながら
そして、ギャラリー達の視線を一斉に受ける。
それは、大人っぽく変装した彼女が、あの本屋で買い物してる所を、隠しカメラで撮った写真。
それだけなら、別に、ここ以外でも取り沙汰される
ここで問題なのは、彼女の購入している物、そして彼女の年齢だ。
なぜならーーそこに写っていたのは、共通してAV。
しかも、
けど……ここから導き出される結論は、ただ一つ。
「あんた……そうだったの?
だから、ちょっとスキンシップが過度だったの?
何より……特に仲良かった
腐女子だからって男子にも女子にも敬遠されて居場所無くして、絶望した
だから、こんな馬鹿な真似、したっての?」
ゴミ箱から引き上げた写真を構え、
「だとすれば……あんたの計画は、最初から破綻してるわ。
だって、空晴 《すばる》が買ってたのは、『ひじうえ』や『ふつかぞ』、それに『ナツモン』……
その後、
この日を堺に、
教室に、何とも言えない、
※
その週の土曜日。
そして、恐る恐る接しようとする
意外な事に、
そして
「軽蔑した……わよね?」
やや経過してから、先に沈黙を破ったのは、
彼女は、ベッドのシーツを掴み、下を向きながら、不安そうに
「しかけた。
でも、
言い
あぁ、と思った。
いや……違う、かも。或いは
でも、そんなのは、
「だって……言える
言える
「分かってる。
今まで
でも……それでも
どこまでも自分勝手、自分本位な、単なる我儘、綺麗事に他ならないとしても。
その
繋ぎ止められる
「
そのスタンスは、
友達としてじゃなく、生涯の友……親友として」
「……っ!! 違う……!!」
感情的になった
ベッドのスプリングが音を立て、釣られて
その顔は、まだ恋を
「違う……!
私と
だって、私はぁ! 私が、
真実を知るまでの
作り笑いって言える
その
感情と、本能との、嵐さえ巻き起こした、熾烈なせめぎ合いによって。
それを見て、
「良いよ」
「
そんな
心の整理だって付けて来たし、ちょんと一張羅で来た」
そう。4月から始めたバイトによって得た、使い道に困っていたので貯金しとこうかと思っていた人生初のお給料で、
他にも、それに合った、肩とか臍とか
改めて考えると、
「おまけに
気になるなら、見てみれば?
「……!!」
どんどん体が強張って行き、緊張と震えで脳と心が異常を来たし、五感が徐々に抜けて行き、現実と夢の区別が付かなくなくなり、リンクし、混ざり合って行く。
「〜っ!?」
彼女の息がかかり、
自分の恋愛対象どころか、自分の性別さえ、曖昧になって行く。そんな感覚、錯覚に陥る。
「……」
そうして無言を貫くも、それ以上は何もされなかった。
「ゆか……り……?」
視界を取り戻すと、気付けば
けれど
「
その手を
今度は、優しく、暖かく、愛おしそうに。まるで、ガラスに触れるみたいに。
「愛してる……。出逢った時から、ずっと……。
今まで、この部屋で、夢の中で、それ以外でも、何度、逢瀬を重ねたか分からない……。
数字とか、言葉とか、時間とか。そんな有り触れた概念なんかじゃ全然、足りない、表せない……。
悔しい
今直ぐに、根こそぎ奪い去り、私だけの物にしたい……。
私以外の誰かと、心から笑ってなんて、欲しくない、でもっ……それでも、
だって
私を、親友としてしか見られていない……。
そんな不鮮明、不安定、不健全、不条理、不平等な状態で、あなたと結ばれたくない……。
何より、あなたを……あなたの心も、体も、壊したくない……。
もう二度と傷付けたくない、傷一つさえ付けたくない……」
「……うん」
「……ごめん。今、
だって、必要な事だから。これからも、
……ごめん」
それでも、まだ目線を下げつつ、返す。
「……謝らないで。先にあなたを陥れたのは、私だから。
私の方こそ……ごめんなさい。今も、この前も……」
「私……! ……もう、限界だった……!!
だって
現に、恋バナとか、全然、した事無かったから……!!
ひょっとして、男の人に興味無いのかな、って……! もしかして、私と同じなのかな、って……!
でも、
私とじゃあ、そういう関係には
そんな現実を思い知らされて私、怖さと嫉妬で、どうにかなりそうで……!
いつも通り年齢と見た目を
「それだけじゃないでしょ?
まぁ確かに、普通なら、あそこまでされたら、もう仲良くなんてしない。ともすれば、転校だって有り得る。
けど、残念だったわね。
だって、
やっと、
「気付いてる? この、中途半端な喋り方。
全部、
ほら……『
でも、
お陰様で
分かる?
ちょっと他の女子とタイプの趣味が変わってるからって、何よ?
それ
そう。今なら、分かった。
だって、知ったから。仮に繊細な悩みの壁に立ち塞がれようとも、
本屋ての件は結局、
頃合いだなと思い、
クラスメイト全員、そして担任、さらに部活仲間からの、
「見てよ、これ。
おっかしいでしょ?
何分デリケートだし突然過ぎたし衝撃的過ぎたから、ちょっと時間かかっちゃったけど、
特に、ヤッシーなんて酷いよ? 衆道の起源とか、微妙に外れた事も含めて書き連ねて、一人で一枚、埋め尽くしちゃってんの。
見え辛いったらありゃしないのに、裏にも書いてんのよ。こんなん、ただの国語の授業よ。
で、それでもスペース足んなくて、最後グダっちゃってんの。
ヤッシー
我ながら、超恥ずかしい。まぁ正直、これでも全然足りない
だから、これ
「……なつ、きぃ……!!」
「ねぇ、
『空気、読めない』って、『自己中』って、軽蔑してくれても良い。『弱ってる
「……何?」
「これからも、ずっと……
今はまだ、最高の親友として。
でも、もし
もし、仮に
……図々しいって、分かってる。虫が良過ぎるのは、百も承知。
それでも
どんな時だって。
……
「
あなたって人は
ハーレムでも築きたいのかしら?」
「
「はいはい」
茶化した
「その役目……謹んでお受けするわ。
だって、逃げるなんて不可能だもの。私はもう、あなたに
でも、覚悟しておく事ね。こっちだって、甘やかされる事に永住してる
こうなった以上、私はオープンになり、今まで以上にあなたと親しくする。
そうなれば、あなたが私と恋に落ちるのは、時間の問題かしらねぇ?」
「一応言っとくけど、
「あら、残念。言わなきゃ良かったわ」
などと
「……
こんな私だけど……これからも何卒、宜しくね」
「末永く?」
「ええ。その通りよ」
手を放した彼女は、勢いよく
そして、目と目が合い、二人で恥ずかしがりながら笑い合った。
それから、やっとジュースやお菓子を挟みつつ、初めての恋バナ(っても、
そして目を覚ましてからカラオケに行き、これまた初めて、アイドルや西野カナ以外のラブソングを幾つも熱唱した。
カラオケでは基本、空気を読んでポピュラーな、けれど個人的には大して好きでもない曲(上述を参照)で適当に流し、日を改めてアニソンや特ウタでヒトカラ祭りをしていたので、人前でやるのは新鮮だったし緊張した。
けど、
この子がモテないのは、単に高嶺の花過ぎるからだと思った。
もしかしたら
だって
こうして、
それ以上の、もっと親しい、裏表の無い、親友としての間柄となった。
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