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「だ・か・らぁ!! 何っ度、言ったら分かんの!?
『達』って書いて『ら』って読ませるの、
「だって、『
「仮にもプロなら、私情を持ち込むな!」
「仮じゃないもん、ちゃんとプロだもん、クリエーターだもぉん!
それに、私情じゃなくて信条、ポリシーだもぉん!」
「何アドリブでそこそこ上手い事、言ってんの!?
そういうのは作品で使え、
それと、これも!『諦める』を『明らめる』と書くな!
「
絶望的なムードで明るく振る舞ったじゃん!」
「シン〇ン
『関わらず』は、『
『例え』は、『
『返って』は、『
ちゃんと、最初から、正しく使え!」
「もぉぉぉ!
そっちが無駄に日本語に詳しいだけでしょぉ!?」
「作家志望の日本人が日本語に明るくて、何が変だっての!?
てか
時間に追われながら一々、要らぬ修正押し付けられる方の身にもなれ、このアンポンタン!」
「何さ、アンパンマン!」
「誰がよ、スカポンタン!」
「そっちだよ、ポカホンタス!」
……訂正。
どうやら
「あ、あのぉ……そろそろ質問、よろしいでしょうか……?」
あ……完璧、忘れてた。
「「……」」
人様の前で繰り広げる事ではなかったと理解し、
「……どうぞ」
言いたい事はまだまだ有ったが、
どうせ、どんだけ言っても覚えようとしないんだし、この姉は。
そう決めた
彼は軽く一礼し、口を開く。
「すみません。
情報量が多く、それでいて全てがサプライズ
「ん。まぁ、そういう
ってもこの人、執筆だけは器用だから、ペン·ネームを
具体的には、今日センセが借りた本は全部、この人のだよ」
「だって、似た
だから、作家名も変えて、気持ちも実績もリセットした上で、新たにまた執筆してるー」
「はい。それは、理解しました。完全に、ではありませんが。
では、次に。
「ん。そんな
今のでセンセも何となく察したと思うけど、この人、誤字脱字は多い
「ぶー。そんなに酷くないしー」
「ん? それは、何?
ペン·ネーム変えて、
「そこまで!?」
知らなかったんかい。だと思ったけど。
まぁエゴサとかしないからこそ、未だにボランティア感覚で、そういう事が
「おまけに、締切は忘れたり間違えてばっかだし、ブッキング·ミスなんて日常茶飯事だし、遊んでばっかだしサボってばっかだし、家事はてんでしないし、したらしたで余計なトラブル起こして巻き添え食らって
いや
「まぁ、まぁ、
ね?」
「では、
「ほぼほぼ、この人の。
っても、面白いからってだけじゃなく、自分の仕事の確認って意味も有ったけどね。その頃から
「
その分、ギャラは弾んでるんだしー」
そう。
具体的には、先生とタメ張れる
まぁ、大して執着も興味も無いだろうけど……。
と、そんな
「大体、分かりました。
それで? どうして
僕が彼女の大ファンだからですか?」
あー……やっぱ、そう来るよね。知ってたし、覚悟してた。
だって、
決意を新たにした
「それだけじゃない。
センセ、アカちゃんのドタイプだから」
「え? ……そうなんですか?」
「はいっ!
私、
「えと……褒められてるんでしょうか?」
「
是非とも、私と付き合ってください!!
「……すみません。
……しくった。彼が鈍いのと、下ネタ好きじゃない事を、
これじゃあ、
などと
「えと……
何分、急だった物で、心の準備が……」
「えー?
「あれは、その、
煮え切らない返答をしていると、アカちゃんは先生から手を離し、笑顔で宣言した。
「まぁ、
どうせ
「あはは……。……お手柔らかに」
「……」
……やった。
ーーやって、しまった。
「あれ?
気付いたら
いや……違う。体が、心を、二人から、だ。
「……ん」
振り向き、余力を掻き集め笑顔を繕い、それでも上手く出来ないからシニカルさもプラスし、
「だって、お邪魔虫じゃん? 完全に。
キャンセラーとか呼ばれたくないし。
「何その、お見合いみたいなのー。
「そういうのは、
などと憎まれ口、減らず口を叩きつつ、
止めるな、どうか止めてくれるなと、死に物狂いで祈りながら。
「か、
念願叶わず、私は呼び止められてしまった。
しかも、よりによって、適当には返し
「……何?」
返事こそ返すものの、決して振り返りはしない。だって、自分の顔を正確に図れない。
その程度の気力さえ、感覚さえ、失っている。
「い、いえ、その……。……ありがとう、ございます。今回も。今までも」
……あぁ。
確実に浮かべているだろう笑顔を、何重にも覆って隠し通した本音の数々で
一瞬、そんな考えが頭を過ったが、唇を強く噛み締め耐え抜き、
「気にしないで」と、「いつもの事でしょ」と、愉快めいた調子で。
そして、
必死に頼み込み、「常連のよしみだから」という事で特別に隠しカメラまで切って
ともすれば、数秒後にでも彼が駆け付けてくれるかもしれない、その部屋で。
※
別に、カラオケの個室からワープして来た
単に記憶、五感が不鮮明、不安定なまま、ここまで歩いて来たというだけの話だ。
現に、部屋に置いてある電子時計が指す時刻は、既に夜となっている。
そんな、ともすれば事故に巻き込まれていたかもしれない
「おかえりなさい。遅かったですね」
そう……
それも、まだ少し見慣れない
衝撃、そして平衡感覚を急に取り戻した事により倒れそうになるのを
「……何してんの?」
「いえ。そろそろ、
良いじゃないですか。別に、今に始まった事ではないでしょう?」
……そうかい。あくまでも、そっちで貫くかい。
はっ……上等じゃん。
「ワーイ、ウレシー、キテクレテアリガトー」
我ながら色々と
「これで満足?
悪いけど、とっとと帰って。一人にして。
てか、アカちゃんとデートでもして来たら?
これで、
彼には悪いが、詳細はまだ知らない状態で
などと余裕を見せた
「残念ながら、まだ交際には至ってませんよ。彼女は、『お友達』……ですから」
「……!? あんた、
口を突いて出た言葉を右手で止め、後ずさる。
彼は、その隙を逃さず、こちらに詰め寄って来る。
壁際に追い込まれながらも私は、
「まさか、尾行した上に盗み聞き? ストーカーかよ。
そこまでするなんて、聞いても頼んでもないんだけど?
契約違反じゃない?」
「……?
……あー。そうかい、そうかい。今度は、そう来るかい。
いや……今度も、か。正確には。
どうせ、あれでしょ? 長年、積み重ねて来た時間で培って来た予測、勘でカマかけたってだけのオチでしょ?
相手を知り尽くしているのは、こっちも同じ。対等の関係の
「ふっざっ……けんなぁっ!!」
決して両目や頬に当たらない
彼の性格が変わるスイッチである、キー·アイテムを。
けれど、
一刻も早く、彼を
「もう、
……もう、充分なの、風月ぃ!!
これからは、彼が思っている通りの関係でいられるのぉ!
だからもう、あんたがそんな
恋愛関係でも
その
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