2
「よぉ。やっと起きたか。
お
相変わらず、タフだなぁ。羨ましい……。
「ていっ」
その、
軽く声を掛けてから背を向けていた
「
そんなに
「……別に。ただ、もう少し気を遣って欲しいだけ」
「そういうのは、その時、直接、本人に言え。
少なくとも、俺には無関係だろうが」
……んにゃろう。しらばっくれおってからに。
まぁ、変に反論しても面倒なだけだし、この辺にしとこう。
「その、大好きな大好きな先生と、もう少しで会うんだろ?
だったら、そろそろ、そのボサボサ通り越してボサノバな髪、整えて来たらどうだ?」
「相変わらず、詰まらないギャグ。
それでも、シナリオ·ライターですか〜?」
「俺の持論では、物書きは大きく二種類に分けられる。アドリブが上手い人間と、そうでない
分ぁったら、とっとと顔洗って出直して来い」
「いつ
「お前こそ、いつ俺に勝ったんだよ。
そんな調子で軽くジャブを食らわせ合った
その際に、何となく浴室を覗くと、まるで年越しの大掃除でもしたかの
が、攻撃すべき相手は今、目の前に
※
「お前さぁ。もう少し、俺にありがたみとか、感じたらどうなの?」
テーブルを挟み座って向かい合っていると、唐突に
「……何が?」
「『何が』、じゃねぇよ。
こっちは仕事の合間を縫って、高校も卒業して本来なら疎遠になってもおかしくないってのに、未だに寝ぼすけの面倒、見てんだぜ?」
「しゃしゃんな、在宅が。てか、別に頼んでない。
そもそも、そのシチュー作ったの、
あんたこそ、タダ
「温めたのは?
具材、買って来たのは?
さらに、費用を捻出したのは?」
「じゃあ、
「……」
「……」
まぁ、そんな事を考えてられるのも、
って言っても、それを初めて早数年、未だに他者に胸を張って自慢する
そして何より、そのお金が、使う事も
と、
まぁ、ともすればのうのうと惰性、慢性的に生きている私と、今を必死に生き抜こうとしがみついている
それから数分、
テレビも点けていないので、車の音だけが、
やがて、
決して、表情を見ずに、そして見せずに。
「一応これでも、感謝はしてる。
手を拭き、横目で盗み見ていると、
「……んなん、俺も一緒だよ。お前がいなけりゃ今頃、食いっぱぐれてた」
「
あんた、処世術に長けてるって意味では器用だし。
本当にやりたい
「それでも、お前は、文句を言いつつも、何だかんだで、まだ
与えられた千載一遇のチャンスを、ちゃんと物にしてる。
本気で好きでもない
「違う。
七光りみたいな物でしょ?
代わりなんて
「だからぁっ! そういうんじゃ、なくって!」
……追加。
そして高確率で、
「……悪い。熱くなっちまった。
もう、良い年した社会人だってのに」
「良んじゃん?
扱い易くて」
「上げてからドン底に突き落とすスタイル、嫌いだわぁ……」
「ん。褒め言葉、ありがと」
「うーわ。
こりゃ、出身地は風○で確定だな」
などと互いに抜かしつつ、
「なぁ? 今日、だよな? 決行日」
やがて飲み干した頃、
余談だが
どうせ付け上がるだけだから、
「……ん。
向こうも丁度、フラれたらしいし」
「……早過ぎじゃね?
確か、付き合い始めたの、3日前だよな?」
「ん。大丈夫。
「いや……あんなん更新されても、困るんだが……。
で、それなのに帰って来てお前に泣き付いたりしてないのを見ると……」
「ん。まーた別の男に乗り換えた、って線が濃厚、てか特濃。
いや、ひょっとしたら元カレかもね。
「で、相手も諸々承知で、面倒を避けるべく、初対面の
相変わらず、興味の薄い
「ん。そもそも、覚えようとすらしてない。あと、今に始まった事じゃない。
てか、恋人の名前なんて
買い物に行ったら、社会人にもなって勝手に行動し
しかも、スマホまで忘れたもんだから、迷子のアナウンスで呼ばれる
極め付けに、合流した時には、道案内してくれた素知らぬ相手を彼氏として紹介する
「……
俺より余程ガキな人が、
今話してるのは
熱し易くて冷め易い彼女は、恋愛方面でも苦労している。
具体的には、出会い→交際→同棲→破綻という一連のプロセスを、物の一時間で通過した事も有る
おまけに飽きっぽくサボり症で、家事も不得手なもんだから、家でぐうたら悠々自適に過ごしていた結果、母親の怒りを買い追い出され締め出され。
絶縁にまでは至っていないものの、「家に居るのを許すのは、戻って来てから1ヶ月間だけ。なお、次に戻って来るまでに1ヶ月、クッションを置く
おまけに、そんなんの
と来たもんだから、
お
話は変わるけど、森 絵都さんの短編集に、そんなパティシエ
「まぁ、それは置いといてだ。
お前……本気なんだよな?」
それがどういう意味なのか、
察せられない
「……ん。
そろそろ、
震える手を、私《あたし)はテーブルの下に潜めた。
その原因が、恐怖か、喜びか、悲しみか、絶望か、興奮か。
それが読み取れない、見当も付かない
「……そっか。
まぁ、
……頑張れよ、
中々に引っ張った割には、
急に空気が台無しになったのを理解し、
「
もうちょっと気の利いた、エモい一言位、言えないん?
しかも、何? その、謎の上から目線」
「……っ
こっちゃ、これでも全力だっての!」
「はいはい、分かってる、分かってる。
おー、よしよし。
エライネー、ガンバタネー」
「
テーブルの上から身を乗り出し撫でると、キレた
そんな事をしても色気がまるで無いのは、
「
「……ん。サンキュ」
数分間じゃれ合った
気の早い事に、祝勝会をする
一体、
……でも、まぁ、これも悪くない。
だって、こんな
そんな
「「乾杯」」
と、最後だけは真っ直ぐに、言葉を届け合った。
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