第6話 迷い
まだ心は不安定なのに、もういろんなドラマが最終回を迎えようとしている。
青chの土曜ドラマは依然空白のままだ。
もういい加減書かなきゃな。取り敢えずでもいいから。
そこで生まれたのは「身体が弱くても」という病んだ作品だった。
――主人公の刑事大杉奈緒おおすぎなおは虚弱体質で、激しく動くことができなかった。念願の刑事となった今も、激しい息切れや頻繁なめまいに悩まされ同僚からは厄介な存在に思われていた。
上司 大杉ー!犯人はそっちへ向かった、追えーー!!(マイクを握りしめる)
奈緒 分かりましたっ。(耳元を抑えつつ全速力で走り出す)
曲がり角で犯人と鉢合わせる、奈緒激しい呼吸
奈緒 ま…って…(激しい呼吸、犯人の腕に手を掛ける)
犯人奈緒を全力で振り切って走り続ける
奈緒足がもつれ倒れ込む
奈緒地面に倒れ込んだまま動けず肩で激しく呼吸する
上司 何があった大杉!応答しろ!応答しろ!(マイクを強く握る)
奈緒 …犯人に、逃げられました(激しい呼吸)
その場にいる刑事どよめく
上司 くそっ…。(机を拳で叩く)
上司 肝心なときに使えないなんてよ。やる気あるのかよ!あぁだから
奈緒 Aスーパー方面に逃走しました。(呼吸がもっと激しくなってむせる)
上司 田中、林至急スーパーAだ!任せたぞ!(わざと声量を上げる)
奈緒 く、くる、しい……。(誰も聞いてくれない中、声を絞り出して)――
それからしばらくしてゆかりが部活をやめた。
顧問の先生からやめる旨だけ知らされて理由も分からずだった。
それからゆかりと関わることは無かった。
心の中にちょっともやもやするものはあった。
やるせないような気持ちもあった。
でもこれでよかったのだと自分の気持ちに無理やり蓋をした。
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