第3話 楽しい土曜日
ふと、そんなことを思い出した。この時の私は小学六年生。
青chをしなくなってから、それとなく忙しい日々を過ごしていた。
友達との交換日記をしたり習い事でコンクール出場したり。
そして。小学四年生からこつこつ描き続けていた漫画を描き終えた。
いろんなことに一区切りついた、そんな時期だった。
無邪気だったあの頃がよみがえってくる。
苦い思いでが残った青ch。なんとなくで終わった青ch。
でもやっぱり楽しかった。
なりたい自分たちになれるわくわくが詰まっていた。
「また、したいな…。」
ふと漏れた独り言が、真面目にニュース原稿を読み上げる音声よりもいやに目立って聞こえる。一人だからか。
慌てて口を閉じて頭のなかを巡らす。
――テレビといえば、バラエティーにドラマにニュースだな。バラエティーだったらクイズとか、どっきりとか、お笑いとか…。あ、友達は……やめにしておこう。――
友達は誘わない。
だって、また青chしようなんて言うもんなら笑われるかもしれない。小学六年生にもなってごっこ遊びなんて恥ずかしい、と。
だから一人でやることにする。
――でも、全部をするのは無理だ。本当のテレビだってそれぞれ担当があるわけだし。じゃあドラマだけにしぼってやるのはどうだろうか。あの頃とはちがって無計画にやるんじゃなくて本物みたいに。それだったら季節ごとに一回、一年で四回放送しなきゃな。――
どんどん想像が膨らんでいく。
その脳内のわくわくを取りこぼさないように、いつの間にか握っていた鉛筆をまだ罫線だけのノートに滑らせる。
――ドラマっていったらジャンルがあるよな。月9はれん愛ドラマ、みたいな感じで。でもそういうの興味ないしな…。だったらけい事ドラマは…!本物のけい事さんみたいにかっこよくなれるかも。――
その頃の私は歳に似合わず刑事ドラマにはまっていた。
この私の考えには、憧れの刑事さんになれるのかもしれないという浮かれた気持ちが入っている。
――よし、これからけい事ドラマを季節ごとに一個考えよう!そしてノートに書いていって青chが残ってるんだって記録に残そう。ああそうだな…土曜日だったら明日も休みだしいろんな人が見てくれるよね。――
気がついたらノートはぐちゃぐちゃの文字でいっぱいになっていた。
それでも鉛筆は走り続ける。
「これだ…!『青ch土曜九時の刑事ドラマ』。」
まだまだ鉛筆は走りをやめない――これからもずっと。
これが、私の青ch第二章の始まりである。
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