第2話 出会い

「つまりはん人は…まどからにげていったんです!」

いつも通り芽衣と楽しくドラマをしていた帰りだった。

通称「山」も人の通りは少ないが、みんなの帰り道からひとつはずれたところにある今通っている道も人通りが少なく結構穴場だ。

人目を気にせずできるいいスポットだった。

……。

なぜここにいるのか。

そしてなぜ声をかけられたのか。

……分からない。

「ねえ何してるの?!」

クラスメイトのがそこにはいて。

見られた。確実に見られた。

私たちはふうかと同じクラスというだけでそれ以上の関わりはない。

クラスでは隅のほうにいる日陰組の私たちと、クラスの中心でおしゃれな太陽組のふうか。

クラスメイトに言いふらされでもしたら、変だとバカにでもされたらどうしよう。

明日から学校へ行けなくなる!

でも純粋でとっさに嘘をつくなんて技を持っていなかった私は小さな声で、でも正直に答える。

「ど、どらましてて…。たんていの…。」

三年生になってなり得もしないテレビのなりきりなんて恥ずかしい。

アスファルトとじっと見つめあう。

「え!それ面白そう!もまぜてよ。は…ゆうかいされちゃったおひめ様!」

予想外の反応に困った。

バカにすることもなく、しかも一緒にしたいと(というかやるらしい)。

でも仲が良くない人と帰るだけでも嫌なのに、私の楽しみを奪うのか!

しかし、ふうかは「山」の頂上に住んでいる。

「急いでいるから」「帰り道違うから」などと断る理由を考えてみるが嘘なんてつけない。

結局「いいよ」としか言えなくて、芽衣と苦笑いしながらも三人で帰ることになった。


ふうかとの三人でのドラマ大体こうだった。

ふうかが大体いい役―お姫様とか、人気アイドルとかのヒロイン役を持っていく。

でもってふうかにとって有利な展開になるのだ。

そんなのちっとも楽しくなかった。

でもふうかは怒ると怖いのだ。何度か怒って机やらを投げ倒していたのを見た記憶がある。

結局断れないままずるずると三人でのドラマを続けていた。

楽しくなかった。



それから、四年生になった。

ふうかともやっとクラスが離れた。

ふうかは新しいクラスで一緒に帰る友達ができたらしい。

だからもう一緒に帰る必要もなくなった。

とても気が楽になった。

ただ。

二人であんなに楽しくやっていたドラマも青chも。

なんだか気まずくなってしまって。

もう小四だからと言い訳をつけて自然消滅させた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る