秘密の共有
第25話 見開かれた目
ルークが立ち去った後、僕はムクリと人間になって起き上がって、念のために部屋の鍵をカチリと掛けた。突然入って来られるより、鍵が掛けられている事への疑惑の方がマシに思えたからだ。
自分が全裸のせいもある。さっき慌てて脱いだシャツとズボンを何とかしなければ…。ヒタヒタとガブリエルの眠っているベッドに近づくと、そっと様子を伺った。7歳のガブリエルはぐっすり夢の国のはずだ。
その時、緑色の瞳が油断している僕をじっと見つめている事に気がついた。僕は思わず凍りついてしまった。するとガブリエルはゆっくりとベッドから起き上がって、口を開いた。
「…誰?なんで裸なの?」
僕はどうしたものかと頭をフル回転したけれど、ここでガブリエルに叫ばれるよりも、正体を明かす方がきっと勝算がある気がしたんだ。僕は大袈裟に肩をすくめると、一歩下がって言った。
「ガブリエル、出来れば叫ばないで欲しいんだけど。僕の正体を教えてあげるから約束してくれない?誰にも言わないって。」
すると、ガブリエルはキラリと目を光らせて頷いて言った。
「…うん。僕約束する。誰にも言わないって。…念のために聞くけど、あなたは僕に危害を加えないよね?」
僕はクスッと笑って言った。
「勿論!僕が大好きなご主人様に、危害なんて加える訳ないじゃないか。」
するとガブリエルは、首を傾げて僕をじっと見つめた。
「僕はあなたの様な人のご主人様になった覚えはないけど…。まぁ、話を聞くよ。その椅子に座って?」
うっ、ほんとやらかしルークと違って、何て出来の良い弟なんだろう!僕は思わずにっこり笑って、ガブリエルの指示通りティーテーブルの側の椅子に座った。子供用だったから、ピッタリでプリケツがハマってしまった気がするけど…。
興味津々で僕を見つめるガブリエルの視線が僕の身体をなぞるので、僕は脚を組んで股間は見せない様に頑張った。ガブリエルが怯えるといけないからね?
「ガブリエル、僕はジュニだよ。おっと、口を開くのはまだ待って?ひと通り説明させてくれる?僕がサウリ山の滝壺で捕まったのは知ってるよね?僕はコツメカワウソという動物なんだ。そして、この通り人間にも変身できる。
でもどうしてそうなのかは、僕にも分からないんだ。気がついたらそうなっていたから。サウリ山でも人間になったりしていたけど、なんせ山深いからね。ほとんどカワウソだったよ。
あの日は大雨のせいで、僕は慣れ親しんだ滝壺から流されてしまった。流石に大岩に叩きつけられるかと思ったよ。何とか力を振り絞って安全な場所に辿り着いたのは良いけど、気がついたら捕まって檻の中さ。
とは言え、店の主人には良くしてもらったし、人間の街は楽しかった。そしてガブリエルが僕のご主人様になった。僕はガブリエルが大好きだから、今の生活はとっても気に入ってるんだ。ビショップも可愛いしね?
ああ、後でカワウソに変身するけど、証拠を見せてあげるよ。ほら、左腕の蛇に噛まれた傷。人間になっても傷は残ってる。こんな話をしても、信じられないだろうね。僕がガブリエルだったら、絶対信じられないと思うよ?」
僕はそこまで一気に話して、ガブリエルのびっくりしてまん丸な緑の瞳を、優しい気持ちで見つめた。さぁ、ガブリエルは僕をどう扱うかな?
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