第26話 ガブリエルside驚きの夜
誰かの気配や廊下の足音、何だか騒がしい気がして、僕はゆっくり意識を浮上させた。すると僕の耳に部屋の内側からカチリと鍵を掛ける音が飛び込んできた。え?鍵?
それから僕のベッドに誰かが近づいて来る気配。僕は思わず目を開けて、兄上か、執事か、それから他の誰かなのか見極めようと目を凝らした。そしてベッドを覗き込んだ人に僕はびっくりしてしまった。
僕よりは遥かに年上の青年は、優しげな表情で僕を覗き込んだけれど、僕が目を覚ましていたとは思わなかったんだろう、びっくりした顔をしていた。その顔がとても可愛い気がして、僕は見知らぬ人を怖いと思うより、好奇心の方が優ってしまった。
ただ、その人は夜目にも全裸で、流石に子供の僕でもおかしな様子だと警戒心が湧き上がって来た。すると彼は僕から一歩下がって、事情を話してくれると言う。一応身の安全を確保したくて確認すると、彼はにこやかにご主人様に危害など加えないと笑った。
僕はいつの間に、彼の様な綺麗な人のご主人様になったんだろうと、首を傾げた。すると彼は僕に想像もしない事を言い始めた。ジュニ。僕の可愛いペットのジュニだって言うんだ。
僕が驚きで口も聞けないでいると、彼はペラペラと今までの事情を話し出した。それはまるで物語の中の話の様で、僕はますます混乱した。
けれど、彼もまた困った様に自分でもそうなった理由が分からないと笑った。僕がその様子を見て、彼が本当の事を言っている気がしてきた。そして腕の傷。確かにジュニと同じ様な傷だった。ジュニは毛に覆われていてハッキリとは見えないけれど、彼の白い腕の上にはくっきりと赤い新しい傷跡が出来ていた。
彼が話し終えると、僕はさっきからウズウズと頼みたかった事を言った。すると、彼はにっこり微笑んでスルリと、まさに時が入れ替わるようなそんな感じで、椅子の上にジュニが鎮座していた。
さっきまでの青年は居なくなってしまった。僕は想像が現実になる事の衝撃がここまでだなんて思わなくて、口が聞けないくらいびっくりしたんだ。ジュニはいつもの様に椅子の上に器用に立ってキューと小さい声で鳴くと、僕に手を伸ばした。
僕は部屋をキョロキョロ見回して、さっきまでそこに居た彼が居なくなったのを確認すると、ベッドから降りて、慌ててジュニの所へ駆け寄った。そしてよっこいせと抱き上げると、ベッドに連れてきて少し重くなった身体を撫でた。
「ジュニがさっきの彼と同じだとすると、僕の言う事がジュニは全部分かるってことなのかな?」
するとジュニは僕の指先に小さな手を絡めてモニュモニュと握ると、キューと鳴いた。僕はその様子にクスッと笑って言った。
「じゃあ、ジュニ、もう一度さっきの彼に戻ってくれる?」
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