ドキドキの種類

『早く！早くってば！』

僕が後ろを振り返りつつ、ガブリエル少年とデカわんこのビショップ、そしてなぜかケインと召使い二人を急き立てた。

「ふふふ。本当ジュニ、凄く張り切ってるね。もう水辺の匂いがするのかな？ケイン、ビショップの引き綱離してあげても大丈夫じゃないかな。最近のジュニとビショップは本当に仲良しだから。」

そうガブリエルが言うのを聞いて、僕は大男のケインは護衛兼犬係なんだと理解した。今日は敷地内の小川に散歩に行くと聞いて、朝から落ち着かなかったんだけど、急にケインが現れたからちょっとびっくりしたんだ。

ケインは最初キョロキョロして、誰か探している風だったけど、よく考えたら僕の事探してたのか？そう言えば、人間型ジュシアはガブリエル少年の遊び相手兼子守だって言ったんだった。

そりゃ、こんな遊びの散歩には勿論ジュシアが居るだろうと思うよね。まぁ、居ますがね、ここに。ケイン、心の目で見るんだ。お前なら見える！なんてね。

僕はすっかり浮かれていた。何度目かの小川遊びは、勝手知ったる何とやらで、それこそいそいそとダッシュしては皆が来るのを待つと言った具合で、埒があかなかった。

ようやく皆で小川にたどり着いた。この城の小川はまさしく小さな川というか、水路だった。敷地の中ほどを輪っかの様に通っていた。しかも水路に囲まれた程よい広さの敷地には、子供の好きそうな小さな小屋があって、ガブリエルのお気に入りの場所でもあった。

「僕ね、ジュニが城に来てくれてから、本当にここで過ごすのが楽しくて仕方がないんだ。ジュニの張り切って泳ぐ様子も見ていて楽しいしね。今日はビショップも一緒で、もっと楽しいよね？」

そう言って僕に手を伸ばすので、僕は機嫌良くガブリエルの手に抱きついた。本当良い子だな、ガブリエルは。まさに天使の様じゃないか？空いた手で僕を撫でてくすぐるガブリエルに、愛想を振り撒くと、いそいそと水辺に急いだ。

『おーい！ビショップ！一緒に入ろうぜ！』

僕が大声で呼ぶと、ちょうどリードを外してもらったビショップが、興奮気味にガブリエルに挨拶のモフりだけさせると、急いで僕の側から小川に飛び込んだ。

ビショップはまだ幼いせいか、自分の身体の大きさをあまり考えてない。お陰で、僕は水に入る前からずぶ濡れになってしまったけれど、僕はケラケラ笑って追いかける様にスルリと水の中に入った。

『ジュニたん、つべたくて気持ちいいねぇ！』

ビショップは大きいので、ほとんどの場所で背が立つ。水を掻き分けて歩き回るので、その周りを僕がスイスイと泳いで鬼ごっこをするのがいつもの楽しみだった。

ひとしきり、鬼ごっこやら、橋の上からガブリエルの投げ込む木の球を追いかけたりしているうちに、僕らは敷地を取り囲んだ水路の端の方まで来てしまっていた。敷地の向こうは薮が深くなっていて、僕たちは戻るようにガブリエルに呼ばれた。

その時、敷地との境目に何かがうごめくのを感じて、僕がハッと身体を強ばらせた瞬間、それが僕らの方へ飛び掛かってきた。

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