第7話 呼び出された

 昼間の奇妙な少女の事が気になりつつも授業が終わり放課後になった。

 

 飛鳥井は取り巻き達とカラオケに行くらしく、申し訳なさそうに片手を小さく上げて去っていった。


 さて、俺は飛鳥井から頼まれたシナリオを書き進めなくてはいけない。まだ一行くらいしか買いてないけどなんとかなる……なるよな?まぁ無理だったらその時に考えよう。


 教室を出て昇降口にある下駄箱で自分の靴を取ろうとドアを開ける靴の上に何か置いてあるのに気付いた。


 「なんだこれ……?」


 怪訝に思いながらも俺はそれを手に取り眺めた。どうやらルーズリーフを破った紙のようで二つに折りたたまれている。開くとそこには『東校舎三階の空き教室で待っています』と几帳面な文字で丁寧に書かれている。


 え、これってもしかしてラブレター……ってコト!?思わず小さくてかわいいキャラの口調が出てしまったがこの文言を見るとそうに違いない。


 いや、待てよ……。少なくとも俺に惚れる女の子っているか?普通に考えると想像できない。偽のラブレターで俺を誘って『引っかかったなバーカ!!』と俺をからかうパターンが一番可能性がある。


 暫く悩んだ末に俺は指定された三階の空き教室へ行くことにした。まぁ、まずは遠目で様子を見て罠だったらそのまま帰ればいいだけの話だ。


 放課後の校舎は様々な文化系の部活が活動していて吹奏楽部の下手な演奏や手芸部のミシンを使う音など様々な種類の音に包まれている。


 指定された三階のフロアは授業で使う多目的室などしか無い為ひっそりと静まり返っている。こうも静かだと夕方の時間帯でも少し怖い。


 俺は指定された空き教室の前まで来ると出来るだけ足音を消しながらそっと窓を除いた。

 夕日でオレンジ色に染まる室内は使わなくなった椅子や机などが乱雑に置かれていて廃墟のような雰囲気を醸し出している。そんな中に一人の女子生徒が緊張した表情でせわしなく自分のスマホと入口を交互に見ていた。


 「え……」


 何とあの昼間の少女だった。お腹の辺りにまで垂れ下がった髪を三つ編みにしており、大きな黒縁の眼鏡をかけている。怯えたような丸い目はネズミやリスなどの小動物を彷彿とさせた。


 俺は意を決して引き戸を開けた。その音にビクリと肩を震わせて少女はこちらを見ている。


 「えーと……この手紙をくれたのって、君?」


 「ひゃ、ひゃい!?」


 涙目になりながら返事をしたが俺ってそんなに不審者っぽく映っているのか?かなり傷つくが俺は先を促した。


 「俺に何か用?」


 「うぅぅぅ、そ、そのぉ~……」


 急に顔を真っ赤にして両手の人差し指をもじもじと合わせながらこちらをチラチラと見ている。え、もしかして本当に告白だったりする?


 「あ、あの!ま、魔女っ娘えすちゃん好きなんですよね!?」


 「えっ?あ、ああ……」


 「昼間にスマホを見て、待ち受け画面がかんなちゃんだったから……あ、スマホを勝手に見たのは本当にすみませんでしたっ!」


 高速で何度も頭を下げる度に三つ編みが激しく揺れている。


 「そのぉ……わ、私も好きなんですっ!」


 「は、はぁ……」


 「と、突然こんな事言うのはすごく変なんですけど、そのっ……わ、私と友達になってくれませんかっ!?」


 「え、えぇ?」


 俺は相当間抜けな顔をしているだろう。それくらいこの少女の発言は突拍子のないものだった。




 

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