第2話 会う約束をした
「はい、ここ来週の小テストに出るからしっかり復習するように」
放課後のチャイムが終わり最後の授業である社会科の先生が教室から出ていくと生徒達は一斉に帰り支度を始めた。
部活に入っているやつはそのまま校内に残ってスポーツや文芸に打ち込むのだろうが俺はそんな非効率的な事はしない。帰ったらサブスクに上がっているアニメを見るという仕事があるからだ。
「ん?」
スマホがポケットの中で振動している。取り出して画面を見た瞬間俺は思わず地面に落としそうになり慌てて持ち直した。
『今週の土曜日の昼、秋葉原で会いませんか?色々とアニメの事リアルで語りたいです!』
バードさんからのツブッターのダイレクトメッセージが届いていた。
これは……リアルで会いたい、という事なのか?いやそう書いてあるからその通りだろう、頭が混乱してまともに考えられないのだが。
今までネット上の交流はあったが現実で会おうという考えはなかった。バードさんとは好きなアニメのジャンルなどが被っているから話が弾んで何回もアニメの感想などをツブッターや掲示板を中心に語り合う親友といってもいい。
そのバードさんが会いたいと言っているのだ。俺も勇気を出さなければいけない。それに実際俺と同じ陰キャ属性のオタクの姿をしているに違いないのだ。
そう、バードさんは今まさに帰りもせずに他人の机に堂々と腰かけながら馬鹿話をしている陽キャ共とは違う。好きなものを共有する同士なのだから。
「よし……」
俺は震える手でバードさんに了承する旨のメッセージを送ると、1分も経たずに返信が画面に表示された。
『良かった!じゃあ、秋葉原駅の電気街口に12時でいいかな?』
『おっけー!それで行こう👍』
文字だけでは冷たい印象を与えるのではないかと思って絵文字を入れてみたけど、これバードさんドン引きしてないかな……。そもそもこうして他人に見えないダイレクトメッセージでやり取りするのは家族以外にバードさんしかいないから正解が分からない。いかん、考えると余計に不安になる。
しかし、秋葉原駅を指定してきたという事はバードさんも同じく東京に住んでいるという事なのだろうか。だとしたら案外近所に住んでいる可能性もある。
「万叶~、帰りにカラオケに寄ろうよ~」
「あ~……、今日はちょっと家で復習しなくちゃいけないからパス」
「えぇ~!?万叶って別に勉強しなくても満点とってるじゃ~ん」
「はいはい、
陽キャ達の会話を片隅で聞きながら俺はバードさんとの会合までに視聴しているアニメを予習する為足早に教室を後にした。
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