追われる

辻 褄

”誰か”

”誰か”が追ってくる。

 姿は大柄でガタイが良いように見えるが、遠くにいてはっきりとは見えない。


”誰か”が追ってくる。

 『ドスンドスン』という音がはっきりと聞こえ、遠くにいても振動がすごく伝わる。


”誰か”が追ってくる。

 電灯でチラチラと見える姿には、恐怖とカッコよさがあった。


 逃げるのに諦めて呆然とその光景を見ていたが、殺されるかもしれないという怖さが出てきて再び逃げる。


 しばらく“誰か”から逃げていると、ボロボロで寂れた町を見つける。ひとけがなく、音も自分の足音だけが聞こえるくらい静かだ。奥に進むと一軒だけ綺麗な空き家があった。そこには大きなクローゼットがあり、誰かの足音が聞こえてきていたので、上がっている息を殺して身を潜める。

 

 大きなもの音を立てて“誰か”が入ってきた。家の一つ一つを調べ、隠れているところに来ようとしていた。迫る“誰か”は、隠れているクローゼットを凝視する。私は逃げられず、クローゼットを開かれ「ぱあ!見つけた!」と大声で叫ばれる。

膝から崩れ落ちる、涙と一緒に失禁する。

 

 上を見上げると“誰か”の顔を見れた。それは、私が怖いと感じている仮面を被った“誰か”だった。

首根っこを引き抜く力で頭をデカい手でガシッと掴まれ、振り回された後、力強く床に叩きつけられ、頭を打ち意識を失う。


……

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追われる 辻 褄 @tuji_tuma

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