第16話 マルタ村

「見えて来たわ!!あれがマルタ村よ」

 遠くに見える村をアンジェラが指を指す。

「さあ、あと少し頑張ろう、と」


 見えてきたのは20~30世帯の家が建つ農村だった。

 村の周りには魔獣防止なのか木の柵で覆われている。

 レオは目立つからポーチに入れて、と。


 門の前には男が1人が立っている。

「止まれ!この村になんのようだ?」

「私です、ライアンさん。雑賀屋の娘、アンジェラです」

「アンジェラ?なんだアンジェラか。一緒に村を出たドリク達はどうしたんだ?」

 私は黙り首を横の振った。


 この国では命は軽い。

 明日はどうなるかわからないのが普通だった。


「そうか、まっ、お帰り。さあ、中にお入り」

 そう言うとライアンさんは門を開けてくれた。


 私は村の中を歩いて我が家の向う。

「まあ、アンジェラちゃん。お帰りなさい」

「おお、戻って来たのか」

 道行く人が声を掛けてくれる。


 そして小さい店が見えて来た。

 ここが私の実家だ。

「ただいま!!」

 そう言ってドアを開ける。


「まあ、アンジェラどうしたの?お父さんアンジェラよ」

 奥から父が出てくる。

「なんだと。おぉ、アンジェラ4年ぶりか。大人になったな」

「それで今日は里帰りかい?」

「いいえ、おかあさん。そうではないわ。ここに戻って来たの」

「戻って来たと言っても、ここでは生活が成り立たないわよ」

「大丈夫、お金はあるわ」


 私はそう言うとこの村を出てからのことを話した。

 街に出て冒険者となり一緒に村を出たドリク、ウィリアム、クラレンスとパーティを組んだこと。

 ブラッディベアに襲われ、私を守るために相打ちになったことなど…。


「それは辛かったね、よく頑張ったよ」

「ドリク達の家族にも冒険者ギルドでもらった報奨金や、素材を売ったお金を分けて回らないと」

「それは少し休んでからにしたら」



「こんにちは!」

 ドアが開くとそこにはウィリアムの両親がやって来た。

「アンジェラちゃんが戻って来たと聞いたからさ。ウィリアム達はどうしたんだい?」

「それが…実は…」

「こんにちは!!あれあんた達もきてたのかい」

 ドリク、クラレンスの親達もやって来た。


 そして街へ出てからのこと。

 森で仲間に起こったことを話しだす。

「そうかい、そうかい。ドリクは立派にアンジェラちゃんを守ったんだね」

「うちのクラレンスも立派になったものだ」

「ウィリアムはどんな男に育ったのかい?」

 村をでてからの四年間のことをたくさん聞かれた。

 まるで空白の期間を取り戻すかのように…。


 報奨金のお金を各家に渡した。

 その金額の多さにみんな驚いていた。

 



 その晩は私の店でお酒を村人に振舞った。

 ささやかだけどみんなで食べ物も用意し献杯けんぱいをした。

 使者と語らう様に、思い出を語り合った。



 その頃レオは…。

 いつまで俺はポーチに、入っていればいいのかな?

 うっ、トイレに行きたい!!

 もぐすもれる!!


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献杯けんぱい

 亡くなった人を偲んで飲むこと。


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