第6話 ハンカチ

 俺はアンジェラのぎごちない素材剥ぎ取りを眺めている。

 ブラッディベアは体が大きいから大変そうだ。


 その合間に色々、この国のことを聞いてみた。

 アンジェラの話では、ここはアンドレ大陸東のイサップ王国でエディト領。

 隣国ともここ数年大きな争いも無く、比較的穏やかに暮らしていると言う。


 しかし経済は厳しく、15で成人してもこれと言った産業もない。

 働く場所がないため冒険者になる者も多いと言う。

 アンジェラ達は15歳で村を出て冒険者になって三年目だった。

 18歳か、まだ子供なのに…。


 しかしこんな大きな魔物を倒したとしても、どうやって街まで運ぶのだろう。

 アンジェラに聞くとパーティなら何人かメンバーがその場に残り、他の人が街まで運搬を頼みに行くそうだ。


 少数パーティはその場で素材を剥ぎ取り、持てるだけ持ち帰る。

 残れるメンバーがいないと、また戻って来ても魔物に食べられているか、他のパーティにとられているそうだ。


 逆を言えば人数が少ないパーティは苦労をして強敵を倒しても、持ち帰れる素材は少なくなると言うことだ。

 だから冒険者はパーティを組み、組む相手がいない冒険者は簡単な依頼しか受けれない。

 その場合はレベルは上がらずお金もない、と言うことらしい。

 まあ、人数が増えれば分け前も減るけどね。



 どうやら素材剥ぎ取りは終った様だ。


『さあ、行こうかアンジェラ』

「えぇ、レオ」


 とは言ってもアンジェラごと、『滑空かっくう飛行』ができるわけではない。

 俺達は来た道を歩いて戻って行く。

 現場に近付くにつれ、その惨状にアンジェラは涙していた。


 仲間の遺品と冒険者カードを回収しまた街方向に向かう。


 アンジェラの話では街まで歩いて二時間ぐらいだそうだ。

 時間だけど、どうやってわかるのか聞いてみた。

 すると小型の携帯用日時計を持っているそうだ。

 それなら曇りや雨の日は駄目でしょ。

 まあ、雨の日は仕事は休みだから構わないとアンジェラは笑う。


 他愛のない話をしていたけど、段々とそのアンジェラから笑顔が消えた。

 それはブラッディベアを倒し、最初に仲間が倒されたところまで一旦戻る。

 そこから街に向うので二人目、三人目の仲間のところを二回通ることになるからだ。


 俯きうつむ歩くアンジェラからは、大粒の涙が落ちて行く。


 これでおきよ。


 俺の『ハンカチ』で…。


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