第7話 冒険者ギルド

 アンジェラが解体を終えるのを待ち、俺達は街に向い歩き出した。


 彼女はブラッディベアの牙、爪、魔石を袋に入れ肩から下げ歩く。

 そして仲間の遺品。

 毛皮と肉は重くて剥ぎ取りや、持ち運びができそうも無いので諦めた。


 アンジェラはこれを機会に田舎に帰り、実家の雑貨屋を手伝いたいそうだ。

 持ち帰る素材だけでも、しばらく食べていけるくらいの金額になるみたい。

『モモンガのあなたに、お金の話をしてもわからないでしょう?』と笑っていた。

 わかりますよ、えぇ。

 働いていましたからね。


 俺達は何とか日が暮れる前に街に入れた。

 そのまま報告を兼ねてアンジェラは、冒険者ギルドに寄ると言う。


 俺はアンジェラの肩に乗り夕暮れ時の道行く人々を見渡す。

 買い物帰りの主婦、子供の手を引きながら歩く母親。

 どこの世界も風景は同じなんだな、と思ってしまう。

 まあ、建物はきらびやかではないけどね。


 しばらく歩くと他の建物に比べると、一回り大きい二階建ての建物が見えて来た。

「さあ、ここよ」

 アンジェラは俺に話しかける。


 スイングドアを開けそのまま中に入る。


 ここが冒険者ギルドか…。

 うっ、汗臭い…。

 雑巾の匂いだ。


 冒険者が戻ってくる時間だったのか、とても騒がしくたくさんの人がいた。


 わい、わい、がや、がや

  がや、がや、わい、わい、


 そんな中をアンジェラは受付に向い、荷物を下げ歩いて行く。


「おい、アンジェラ!!ドリク達は今日は一緒じゃないのかい?」

 知り合いだろうか?

 男が声を掛けて来る。


「ドリク達三人は私を庇って死んだわ」

「死んだだと?!」

「えぇ、東の森に入ったら…、ブラッディベアに襲われて…」


「「「 なに~?!ブラッディベアだと!! 」」」


 ギルド内に大きな声が響く。


「ブラッディベアだと」

「あのB級の魔物か!!」


「ブラッディベア…」「ブラッディベアだと…」

 「ブラッディベア…」「ブラッディベア…」

  「ブラッディベアか…」「ブラッディベア…」

 「ブラッディベア…」「ブラッディベアなんて…」

 「ブラッディベアが居るなんて…絶望的だ」


 その言葉が波紋の様にギルド内に広がって行く…。


「静かに、みんな静かにして!!」


 見ると凛とした感じの20代半ばと思われる受付の女性が一喝する。

「だってジェニーさん。ブラッディベアですぜ」

 ジェニーと言うのかこの人は。


「そこのあなた、詳しい話を聞かせて頂戴」

「はい、私達が森に入ると…私の仲間が…」


 事前に打ち合わせした通りアンジェラは淡々と話し出す。

 森でブラッディベアと遭遇したこと。

 仲間のドリク、ウィリアム、クラレンスの三人は勇敢に戦い、相打ちになったと…。


 そうでも言わなければ怪しまれる。

 ムササビが上位の魔物を倒したなんて誰も信じてくれないだろう。


「あなた達四人はEランクの駆け出しのはずでしょう。それを三人で倒したなんて」

「これが証拠です」


 そう言うとアンジェラは、受付のカウンターにブラッディベアの素材を置いた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 読んで頂いてありがとうございます。

 面白いと思って頂けたら★マーク、♥マークを押して応援頂くと励みになり嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る