第5話 ムササビ流星拳

プシュプシュプツプツ、キュッキュッお怪我がありませんか? お嬢さん


 俺は思い切って助けた女性に声をかけてみた。

【スキル】異世界言語があるなら、理解だけではなく話せるはずだ。


「あ、あなたが話しかけているの?」

 おぉ~!通じた。

『えぇ、そうです』

「助けてくれてありがとう。あなたは、なに?」

『質問ばかりですね。まあ、無理もありません。俺は神獣?かな』

「神獣?どうして疑問形」

『それは色々ありまして』

「でも助かったわ。後もう少し遅ければ私は…」

『危ないところでしたね』

「本当にありがとう」


『いえ、こちらこそ』

 お礼を言うのはこちらの方だ。

 パンチを連打したおかげで新しいスキルを覚えたからだ。


 この技は体内の魔力を貯め、拳に乗せて叩く技だ。

 しかし、殴っているだけでは格好が悪い。

 まずはポーズを決める。

 右手を羽ばたくように動かし、その次に左手を羽ばたかす。

 そして技の名を叫んでから殴り掛かる。

 それがただ殴る力技『ムササビ流星拳』だ。

 ぶふっ!!



「あなたはこの森に住みついている神獣様なのかしら」

『いや、来たばかりで森を探索していたところだよ』

「そうなの。これからどうするのかしら?」

『特に予定はないけど』

「それならお願いがあるの」

『お願い?』

「私を仲間の遺体のところまで連れて行ってほしいの」

『護衛をしてほしいと言うことだね。いいよ、それくらいなら』

「ありがとう。仲間が三人居て私をブラッディベアから逃がすために、犠牲になってくれたの。だからせめて遺品とギルドカードを回収したいの」

 クッ、そんなことが…。


『わかった。一緒に行くよ』

「それとあなたでは変だから何か名前を付けないと」

『俺の名はもうあるよ、レオだ。よろしく』

「まあ、神獣様だから名前がるのね。私はアンジェラ、よろしくね」

『こちらこそ、よろしく』


「それと行く前にブラッディベアの素材を回収しないと」

『回収?』

「そうよ。私達冒険者は魔物を倒して素材を売って生活をしているの。それに売ったそのお金を、三人の実家に遺品一緒に送ってあげたいの」

 な、なんて良い子や…。


「ではまず牙からね。ブラッディベアは牙、爪と毛皮、肉、それと魔石ね。お肉もざんねんだけど街まで持って行けないわ」

 そう言いながら、ぎごちない手つきで彼女は解体を始める。


 あぁ、俺が収納魔法ストレージが使えれば…。

 異世界と言えばストレージだものね。


 転生前にお願いしておけばよかった。

 まあ、モモンガだから必要なかったか。


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