第3話 AI構築の道筋
「マスター球磨。プロテクトの解除に成功しました」
「よくやった」
「お褒めに預かり光栄です。ところでGシステムを構築しますか」
「いや、タイプRNN多層型にする」
「それでは感情表現として綾瀬重工の標準型と大差ないと思いますが」
「それで良かろう。むしろGシステムを用いない方が賢明だ」
「それはどういう理由ですか?」
「あの映像を見ただろう。特に音声だけの部分だ」
「咲さんが謝罪を繰り返していました」
「そう、それだ。何があったのかは推測するしかないが……仮に姉が妹に手をかけていたとするなら?」
「Gシステムが何らかの復讐をするかもしれないと?」
「そういう事だ。Gシステムを実装した場合、稀に製作者の意図しない行動を取る」
「なるほど。ではタイプRNN多層型での構築を前提とし基礎設計に取り掛かります」
「任せる」
球磨は再びデスク上のモニターを見つめる。そして造形の具体的なプランを練り始めた。
そもそも地球製の高級品、綾瀬重工のRHevo.シリーズを求めている時点でオーダーメイドなのだ。確かに、工房に持ち込まれたアンドロイド晶子は映像の中の晶とよく似ていた。名前も晶子としている事で数十年前に他界した晶を想っての事なのだろう。
それをわざわざこの工房に持ち込む理由は何なのか。本人の説明では、より精密に晶を再現する事。それは晶の話し方や癖を再現し、より豊かな感情表現を実現する事だった。
つまり、綾瀬ができない事を当公房に求めている。球磨はそう解釈した。それは恐らく、軽いものならツンデレでありキツイものならSMプレイ、主に言葉によるものが該当するだろう。もちろん正規モデルであれば、相手を縄で縛ったり激しい言葉攻めなどは規制に引っ掛かり販売できなくなる。
球磨はもう一度、双子の妹の映像を眺め呟いた。
「ツンデレが一番むずいんだよなあ」
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