第8話 がんばれ!セレナちゃん
《「時間になりましたが蒼歌ちゃんが席を外しているので代わりに私が始めさせていただきます。えー、それでは時間となりました!競魔会一回戦第四試合!それでは選手は入場してください。」》
「ま、間に合った…!後でお礼言わないとね」
アナウンスに従いセレナと天馬がフィールドへと入場する。
何も持たないセレナに対して天馬は右手に木製の剣を持っていた。
(剣士…まあ、好都合ね…)
近接戦闘を仕掛けてくる相手に対してセレナのとっておきは相性がいいのでまずは一安心するセレナ、しかし油断はならないぞ。とセレナの頭は警鐘を鳴らしていた。
(武器はない…魔法主体の戦闘スタイルか…?)
セレナが戦略を練る一方で、天馬も頭の中で考えを巡らせていた。
(仕方ない、少々手荒だが…全て撃ち落とすか…)
《「席を外してしまいすみません…!ここからは私、千島蒼歌が実況に戻ります。長らくお待たせしました!それでは、一回戦第四試合、緋村天馬君とセレナ=アレストレアさんの試合、スタートです‼︎」》
戻ってきた蒼歌が実況に戻り試合開始の宣言をする。
戦いの火蓋が切って落とされた。
セレナは身体強化を使い定石通りに天馬から距離を取ろうとするが次の瞬間、その目は驚愕に見開かれた。天馬もセレナから大きく距離をとるように後ろに跳んだのだ。
(え…⁈天馬君も距離を取った…⁇魔法を撃ち合う気…?剣士なのに?それとも…誘っている?)
魔法を撃たせてその隙を突く戦術は危険ではあるが無い訳ではなく、三回戦で悠馬が行った『相手が魔法を準備している時に距離を詰める』もこれに該当するだろう。
下手に手を出したら負ける、と何もしないセレナ。
天馬も何か仕掛けて来る予兆は無く、試合は膠着状態となった。
《「試合の動きが止まりましたし、選手の解説でもしますか?」
「そうですね、ただ私としては緋村君が自分から距離を取ったのが気になりますね…」
「セレナさんが魔法を発動するのに合わせて距離を詰めるカウンター狙いなのでは…?」
「普通に考えたらそうなんですけど…何かありそうなんですよね。」
「『剣聖』の勘ってやつですねっ!」》
蒼歌のボケにスタンド席から笑いが起こる。
こうやって競魔会を盛り上げるのも実況・解説者の役割である。
ちなみにスタンドとフィールドの間には試合開始と同時に遮音・防護障壁が展開されるのでフィールド上で起こった爆風等がスタンド席へ届く事はなく、逆に試合中の解説がフィールド内に聞こえる事はない。
閑話休題。
膠着状態が始まって5分、未だに試合は動きを見せていない。
が、静寂は突然破られた。
「ブリザードフレイムッ‼︎」
セレナの声を引き金に火と水の合成魔法が放たれる。
この膠着時間にセレナは何もしないのではなく、天馬に悟られないように少しずつ魔法の合成を行っていた。
しかしセレナの魔法が天馬に届く寸前に空中から現れた4本の大剣が地面に突き刺さり盾の役割を果たした。
セレナが再び目を見開き、スタンド席はざわつきだす。
(これは…っ、固有魔法…?)
おそらく剣を操る能力…と予想をしたセレナは手数重視で魔法を発動する。
「ウィンド!」
セレナから放たれた幾つもの風の刃は、今度は何処からか飛来した木剣に全て防がれてしまう。
「…っ‼︎」
セレナが危機感に駆られ魔力障壁を展開すると障壁に木剣が3本突き刺さっていた。
(違う…緋村君の固有魔法はただ剣を操る能力なんかじゃない…これは…!)
セレナが額に汗を滲ませながら睨む先には…
宙に浮かぶ15本もの木剣の剣先をセレナへと向け、不敵に笑う天馬の姿があった。
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