第0話 エピソード零(前編)

ー数ヶ月前ー


「この指輪は────なの。だから…これを──君に託します。」



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「ユウ君‼︎」


「ぐぇあっ‼︎⁈」


いきなり大きな衝撃を受け飛び起き、げほげほと咳こみながら自分の腹にまたがっている美少女を睨む。腰まである綺麗な黒髪を持つ(ぼさぼさではあるが)彼女は悠馬の姉、久遠遥クオンハルカである。


「朝からなんなの…姉さん」


怒り4割呆れ6割の表情を向けると彼女はとくに悪びれる様子もなく


「もう朝だから起こしに来たんだよ〜!あ、ていうかユウ君今日『鑑定会』じゃん!ふふっ、自分のことじゃないのにお姉ちゃん楽しみだなぁ…」


「はいはい、だからって朝から突撃してこないでくださーい」


この国…『ロドニア王国』では16歳を対象に年に一度鑑定会を開く。

鑑定会ではプロ、つまり高ランクの鑑定士に鑑定してもらい自分の中にある魔力の『可能性』を固有魔法として発現させるのだ。


基本的に同じ固有魔法がこの世に発現することはなく、国同士の戦争において魔法が兵器より重要になった今、強力な固有魔法を発現すれば本人はもちろんその家族までもが他の国への流出を防ぐため国からの手厚い援助を受けることが出来る。


自分の可能性に期待する者、援助を受けたい者。理由はなんであれロドニア国民にとって今日はある種のお祭りのような物なのだ。


「鑑定会まで時間もあんまりないし早くご飯食べちゃおう、パンでいい?」


問いかける遥に「うん」と返事を返しながら自分の右手、中指にはまっている漆黒の指輪を見つめる。


(またあの夢…)


小さい頃、といっても10歳頃から同じ夢を何度も見るようになった。

知らない女の人が一方的に話しかけてくるのだ。こちらから返事はできず、しかも肝心なところだけノイズがかかったように聞こえなくなる。


「ご飯食べないとな…いくか」


そう言ってベッドから降り食卓へと向かう。


その後ご飯を食べ身支度をし、玄関へ。

目指すは鑑定会の会場であり春から俺の学び舎にもなる『王立魔法高等学校』(校長の名前が由来の『ミネルヴァ』、『ミネ高』という愛称の方が浸透している。)


「いってらっしゃい、頑張って来たまえよ〜久遠悠馬君っ!」


背中をバシバシ叩かれながら外に出る。

いつにもなくハイテンションな姉に若干呆れつつも悠馬も内心ワクワクしていた。固有魔法に関してはワクワクしない奴はおかしい、というのが悠馬の持論である。


玄関で手を振りながら見送ってくれる姉を背に歩き出す。


「いってきます!」


悠馬は鑑定会場にもなっている国立魔法高等学校へと歩き始めた。


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