第11話

「どういう事か教えていただきたい!」

朝からヘンリーの怒号が聞こえた。

「何の話かな?」

「とぼけるのはよしていただきたい。彼女をどこへやったのですか?」

朝日を浴びて、シシィの髪は深海のような深い藍色をしていた。

「いい天気ですな」

涼しげな顔をしてシシィは背を伸ばした。

昨夜、夕食を終えたヘンリー達がテントに戻ると、誰もいなかった。

やられた!と叫んだヘンリーは、あちこち探し回ったがビオラは見つけられなった。

「恐らく海上島の城に連れて行ったんでしょう?返していただきたい」

「嫌ですな」

「!」

ここは、海上島といっても端っこで、城壁の外側になる。

城に行くには城壁を越えなければならない。

「たとえ竜騎士と言えど、我が敷地内に勝手に入るとは、言うまい?」

ギロリと竜騎士団長レオンを睨んだ。

「何、竜騎士の方々が大きな魔物を倒せば良い事。大きな魔石が普通に手に入りますな」

シシィは手を日に掲げた。

ビオラを使うな、ということだ。

「…きちんと返していただけるのですね?」

「無論だ」

きびすを返して、ヘンリーが作戦本部のテントに向かった。

「ヘンリー様」

「仕方あるまい。手荒にはされないだろうし」

「わかりました。作戦を立てなおす。各班長を集めろ」

「はっ」

ざわざわと一団が歩いて行った後、シシィも動いた。

「後は、まかせた」


その頃、ビオラは、まったく見覚えのない部屋で起きて、別の部屋にいた侍女をびっくりさせるほどの大声を出していた。

まあ、そうですよねと笑いながら、昨夜眠り薬入りのお茶を飲ませた侍女が挨拶にきた。

「眠っている間に城に連れてこられたわけですか。重たくなかったですか?」

「軽いですよ、ビオラ様。大切におもてなしさせていただきます」

「仕事があるのですが…」

「魔物狩りは騎士団の方々にお任せすればよいのです」

「昨日の騎士様が気になるのですが」

「その方でしたら、無事に息を吹き返されたそうですよ」

「よ、良かった」

「よろしゅうございました。さっ、ビオラ様はごゆっくりなさってください」

お着換えをどうぞ、と言われ袖を通してみると…

「マーレ島の伝統的な衣装です。明るい色にしました」


ふわっとしたスカートにズボンをはき、刺しゅう入りのベスト。

その上に羽織る上着は、ガウンのような形でかなり軽い。

薄いベージュにオレンジ色の刺繡が映えている。

「かわいいです!それに動きやすいですね」

坂道が多い島なので、スカートだけではなく下にズボンを着るようになっているそうだ。

ちょっと日本の着物に似ているかも。

帯にも刺しゅうが刺してある。

足元もブーツが軽い。石階段も軽やかに上がれそうだ。


「海風も強いので、帽子は必須です」

男性も小さな帽子をかぶっている。

女性のは刺繍と共に小さな宝石も縫い留められている。

結婚するときに、帽子を新調するのだが、親の帽子から一つ宝石を譲り受けるそうだ。

「そうやって代々受け継がれる宝石が、各家庭にあるんですよ」

笑顔で着替えを手伝ってくれた侍女は、シンプルな帽子だ。

「皆さんの帽子は、お城勤め専用のものですか?」

「はい。ついている宝石は、シシィ様からいただいています。城下がりするときに、このままいただくんです」

退職金代わりね、と中身がアラサーのビオラは納得した。

「シシィ様が、朝食を一緒にとお待ちです」

ひええー

「あ、あの私作法とかわからなくて…」

にっこりとして、大丈夫です、と強引に城の謁見の間に連れていかれた。

どうぞ、と通された部屋は、巨大なホールだ。


一番奥にある高い場所の椅子に島主、シシィ・ラブロフスカは座っていた。

隣には若い男性が座っている。

その場に、膝をついて頭を垂れた。

「ビオラート・スコットリアでございます」

「もう少し近くに来てほしい」

静々と真ん中あたりに止まろうとしたら、もう少し近くにと言われ、かなり前に来てしまった。

「貴方が、ビオラさんですか。父から色々と聞きました。大変なお役目らしいですね」

「これ、カイト、自己紹介をしてから話せ」

「ああ、失礼しました。私は、カイト・ラブロフスカ。シシィの息子です」

「カイト様、ありがとうございます。またシシィ様にご心配をおかけしました」

「眠ったまま移動させて申し訳なかった。かなりお疲れのようだったから、強力な回復薬を飲ませてしまったよ」

わははと愉快そうにシシィは笑った。

それは誘拐では?と息子が心配そうに聞く。

楽しそうに話す二人を見て、ビオラも少し笑った。

「そうそう、そうやって笑っていてほしいね」

「昨日は、見苦しいものを見せてしまって、申しわけございません」

「何の。もうその話はやめだ。その衣装もよく似合っている。外に食事を用意したから食べられるものだけでもいいから口にして欲しい。元気がでないぞ」

テラスのような外に出ると、思わず声が出た。

きらめく海が真下に見え、緩やかに下った先には町が広がっている。

「素敵な眺めですね!」

「そうでしょう?私もこの眺めはとても好きです」

隣にカイトが並んで立って、あっちは何とかという港、こっちは遺跡があって、神殿があってと説明が続いた。

言葉一つ一つにうなずいたり、相づちを打ったり、質問をしたりビオラもとても楽しそうに話が盛り上がっている。

「表情が豊かな娘だな」

「シシィ様、そろそろお食事が運び終わりますが」

そっと側近の男性が耳打ちをした。

ふっと笑って、指を立てた。

若い二人が会話に盛り上がっている。

邪魔をするのも悪いだろうと思ったのだ。

カイトは、17歳。

王島の学園には、半分しか行っていない。

島主の仕事見習いもしているため、かなり忙しいのだ。

それに。

「なかなかお似合いかもな」

ぽつりとシシィが言った時、ドン!とワインが置かれた。

「おう!久しいな、弟よ」

答えずに、その男はずんずんと若い二人の所へ歩いて行った。



「ビオラさん、体調が良ければ明日から島の中を色々回りませんか?」

わあ、近くでみるとカイト様はシシィ様によく似ているわ。

眉間のしわがないだけかしら?

ふっと笑ってしまった。

「どうしました?」

「いいえ、シシィ様によく似てらっしゃるなと思って」

「よく言われるんです。あんなに難しい顔していますか?」

カイトは眉毛をむん!と持ち上げて眉間にしわを寄せて言った。

「いいえ」

笑いながら、二人でシシィの方を見ようとした時、ビオラが体制をくずした。

「あっ」

「危ない!」

カイトが手を取るのと同時に、ビオラの背にぶつかる人の気配がした。

「大丈夫ですか?」

懐かしいその声。

見上げると、そこには、ボタニカル島の竜騎士ルーク・バレンタインがいた。

「ルーク様!」

「お知り合いですか!?」

「お前には10年早いっ!」

そういうや否やカイトの手をビオラから振りほどいた。

「え?え?」

ビオラは、何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。

一つ言えるのは。

「お久しぶりです、ルーク様。お元気そうですね」

「ビオラさんこそ。大きく、いや、綺麗になりましたね」

ビオラは顔に血が上っていくのがわかった。

そのくすぐったい言葉もそうだが、ルークはビオラを右腕に抱えたままそう言っているのだ。

ビオラも成長しているので、背が伸びている。

竜騎士の制服を着ているルークの顔が近い。

「だ、大丈夫ですから、ルーク様」

「叔父上、お知り合いなのですか?」

再度カイトは驚いて聞き返した。

「叔父上?」

「ああ、そうだ。俺の守るべき人だ。お前には早い」

「って、叔父上、そんな若い女性が好きだったのですか?」

「はっ!」

ルークは、中身が34歳の女性という事ばかり考えていて、見た目を忘れていた。

「ああ、いや、まあな。騎士の忠誠を誓っているからな」

「ですから、それはお断りしたではないですか」

ボタニカル島から王島に移動した時、ルークは騎士の誓いを立てると言って聞かなかった。

騎士の誓いは、一生に一度の事だ。

簡単に誓うものではない。

だから、ビオラはルークからの誓いを断っていた。

「騎士の誓いの前に、早く王島竜騎士団に入ってくださいな」

いたずらっ子のように笑って、ルークに冗談を言った。

くーっとルークは顔を真っ赤にして、言葉を失った。

「王島竜騎士団って確か、何年かに一度試験があるんですよね?」

朝食のテーブルに着きながら、カイトが聞いてみた。

「ああ、3年に一度な。他の島からたくさん竜騎士が集まるんだ。色々試験を受けて晴れて王島竜騎士団に入ることができる」

「で、お前は受けたのか?一度は」

「…二度受けて落ちました」

「ちょうど試験の日にお会いしましたね。でも難しいのね。王島の竜騎士が一番偉いのですか?」

「王様がいるし、王島がすべての中枢だからね。その島を守る警護だから、厳しい規律もあるんだ」

「ふーん」

「そういえば、王妃様と仲が良いんだって?」

ルークは、相変わらずパンに色々はさんでかぶりついている。

「ええ、お茶会によく招いていただきます。お話がとても楽しいです」

「ビオラ嬢は、貴族なのか?王妃様に会うほどの階級ということか?」

シシィが不思議に思って、質問をした。

ビオラとルークは、思わずレモン水を吹いた。

大丈夫ですか?とカイトがお手拭きを渡す。

酸っぱかったから、とビオラが言い訳をする。

彼女が渦巻人というのは秘密だ。

どんな人間が聞いているかわからないからだ。

「朝飯を食べたら、街を案内するよ。いいだろう?兄貴?」

「ああ、まあな。お前がいるなら大丈夫だろうし。念のため護衛を付けるが」

「いらんよ。これでも竜騎士だぜ?」

椅子の横に置いている剣を指した。

「でも、ルーク様はダイヤ島に行かなくてよいのですか?」

「実家に寄ってから行きますと言ってあるから大丈夫だろ?せっかくだ。色んな景色を見せたいし。さっ、行くぞ!」

「相変わらずせっかちだな、お前は」

「兄貴ほど気が短くありませーん」

ちょっと待って、とビオラは急いで席を立つ。

私も行きますと、カイトも急いで口に詰める。

「まったく…」

若い3人を見送り、シシィは楽しそうに微笑んだ。

「シシィ様」

執事が声をかけた。

無言でシシィは手をさっと上げる。

命令は二つ。

一つは3人の護衛。

もう一つは。

「さあ、何者なのかな?ビオラート・スコットリア」

身元調査だ。



「なかなか、綺麗な街だろ?」

普段着に着替えたルークは、短剣を携えて、ビオラと町に降りた。

カイトも付いてきたが、先ほどカイト付の護衛と目くばせをして、わざとはぐれた。

「良かったんですか?カイト様置いてきてしまって」

「いいんだよ、御付きの人間が大変だろう?今頃、ぶりぶり怒りながら城に戻っているよ。で、これは預かりね」

ひょいっとビオラの帽子を取り上げた。

「わあ、何をするんですか?」

胸ポケットにしまいながら、ルークは指を立てた。

「敬語なし、様なしって約束したのに、破ったから、罰だよ」

「えー、無理です」

「ほら、まただ」

そう言って、ルークは手を繋いだ。

わああああ!

ビオラは心の中の爆弾が破裂した。

「きゅ、急につ、つながないでくださいっ」

真っ赤な顔をしてしどろもどろになる。

「ルーク、だ。はい、言って」

「る、るー」

「ん?」

ニコニコしてルークは待っている。

「るぅく…」

「うん、よし!今日はあちこち行こう」

ぐぃと引っ張られたその手は固く大きい手だった。

…何か暖かくて気持ちいい。

久しぶりに安心する暖かさだった。


色々買い物をし、買い食いもして城に戻ったのは夕方だった。

カイトにかなり恨み言を言われたが、ルークは素知らぬ顔をしていた。

夕食は、カイトやシシィ、ルークと共に取り、にぎやかに食事が進んだ。

街中で、実は、途中カイ兄弟に会ったのだ。

その時、ビオラの短槍を受け取った。

ビオラの後をつけ、城に連れられたことを、ヘンリーに教えたらしい。

すると。

「ペリカンのトトから、渡して欲しいって」

槍を渡されたそうだ。

グッドジョブ!トト!

にやっと笑って、ビオラは受け取った。

「それと、竜はこちらに飛んでこれないけど、ペリカンの俺なら大丈夫だからいつでも呼んでくれって」

「呼ぶって言ったって」

「俺たちが行くからさ!何かあったら、すぐに呼んでよ。この路地を上がった所の食堂が家なんだ。いつもいるからさ」

「お前たちはどうやって行き来してんだ?ペリカン持っているのか?」

「もちろん!」

「それに、ヘンリーって人にこれは仕事だって言ってもらえたし」

ルークはしばらく考えていたが、懐から小銭を出して、兄弟にヘンリーへの言付けを頼んだ。


次の日から数日間、街を回り、神殿をめぐり海上島の教会にも足を運んだ。

「これでほぼ海上島のほとんどを案内できたよ」

遠くに街が見える丘にきた二人は、お昼用に買った色々な食べ物を広げた。

「ここからの眺めが好きなんだ」

横は崖になっていて、波がぶつかる音がする。

その度に海の潮の香りがしてくる。

ビオラは深呼吸をして、王島では味わえない香りを楽しんだ。

そよ風に吹かれてルークは、ピザのようなものを食べている。

お店によって味が違うから、同じものでも食べ飽きないそうだ。

「こんなことしていていいのかな」

ビオラはぽつりとつぶやいた。

「何もダイヤ島の方から言ってこないから大丈夫だろう?魔石が結構取れているらしいし」

「そうなの?」

「ああ、かなり魔物を退治しているって。しばらくは退治をしなくてもいいくらいに」

「そう」

「君の体の負担を考えると、大きいのがいいんだが、まあ大丈夫だろう」

「ルークも知っているのね、私の力」

「おお。竜騎士の間ではな。俺も有名だよ」

「どうして?」

「小さな渦巻人にしつこく騎士の誓いを押し付けているイカレた奴だと」

あははっ!とビオラは大笑いをした。

「私も成長して小さくないのにね」

「そうだね」

しみじみルークはビオラを見た。

「綺麗になったよ」

真っ赤になって、ビオラは前から思っていた疑問を投げかけた。

「魔物ってどうして生まれるの?」

「んー俺も原理は知らないんだが、魔王という中心人物が普通の動物を魔物に変えて島に放っていると聞いている。後は噴火だね。でも、誰も魔王に会ったことがない」

「ルークも見たことがないの?」

「竜騎士で退治しに行くときは、班行動だからね。魔物と対峙するときは、一人は危険なんだよ」

「…行くときは気をつけてね」

真顔で心配するビオラに、ルークは度肝を抜かれた。

「っ!お、おう!無事に帰ってくるさ」


たまに、見た目の年齢じゃない顔をする。

今の顔なんて、大人の女性だ。


「だって、こんなに手がボロボロになるまで鍛えていて…」

傷だらけの分厚いルークの手を取った。

痛そうにとなでる。

「ビオラ…」


誰にも取られたくない。

ずっと見続けているんだ。

これからもずっと側で見ていたい。


右手の甲に忠誠の口づけをする。

片膝をついた。

「ビオラート・スコットリア殿。私の良心も身体もすべてをかけて貴方を守ります。どうかこの忠誠を受け取ってほしい」

真剣な表情のルークは久しぶりに見た。

ああ。そうか。

シシィ様を見た時にどこかで会ったことがある気がしたのは、ルーク、あなたに似ているからなのね。

あなたの目を、髪を覚えていたからなんだわ。

深い海の色の瞳。

吸い込まれそうだわ。


「私でよければお受けいたします」

よしっ!とルークはガッツポーズをした。

もう、とビオラは真っ赤な顔をしてレモン水を口にした。

「幼児趣味とか言われない?」

「15才だろ?大丈夫さ。それに中身は違うと俺たちが知っていればいいさ」

まあ、そうだけど。

カイト様はそうは思わないと…

帰り道も手を繋いで丘を歩いた。

シシィは腹違いの兄であること、父親は厳しかったこと、執事は長いこと、侍女は力持ちが多いこと…

色々話しながら帰った。

「そうそう、帽子は最初のはかぶらない方がいいよ」

「どうして?」

ルークは初日に取り上げた帽子を出した。

綺麗な宝石が3つついている。

裏返すと、見事な刺しゅうが刺してあった。

「マーレ島のマーク。城の人間である証だ」

「身分証みたいなもの?」

「そう。一応この島は安全ではあるけど、たまに悪さする奴がいるからね。城の人間だとわかると危険なときもあるからさ」

しまっておけ、と言われてビオラは上着のポケットに大切にしまった。


翌朝、カイトから質問が浴びせられた。

「毎日毎日、どこへ行かれているのです?叔父上」

「マーレ島を案内しているんだよ。俺の故郷は知っておいて欲しい」

「その、叔父上とビオラは婚約とか交わされているのですか?」

「さあな?」

にやっと笑ってルークははぐらかした。

「待て、ビオラ、話は終わってない」

するっと逃げようとしたビオラの肩をカイトは掴んだ。

その瞬間にカイトは、ステンと転がるように投げ飛ばされてしまった。

「女性の体にさわるからだ」

ルークは、ニヤニヤしながら床に転がって仰向けになっているカイトを覗き込んだ。

「な、何ですか」

「お前みたいに体をベタベタさわる奴から身を守るためだよ。ここの侍女も教えてもらうといい。ボタニカル島のお屋敷の女性はみんな教わっていたぞ」

へえ、と侍女たちは喜んだ。

簡単な護身術である。

酒に酔った人間から逃げるのに使えそうだ。

ビオラは簡単なものはこう、と早速2人の侍女に教えている。

「こんの!大人しく接していればつけあがって!衛兵っ!」

ばらばらと兵士が広場に出てきた。

「ビオラを捕まえろ!俺の前にひれ伏せてやる!」

はあ?

ルークとビオラの怒りに火が付いた。

同時にそこにいた侍女の怒りにも触れた。

「カイト様!」

「何言ってんだお前!」

「叔父上はいい!その人は竜騎士だ!かなわないぞ!」

「あらあら、私ですか?困ったな」

ビオラは、突進してくる兵士をちょいっと交わした。

「ああ、なるほど、そうするのですね?」

侍女たちは、実践をみて納得していた。

「カイト、やめろ!兵たち、下がれ!」

7~8人ほどの兵に声をかけるが、戸惑いながらカイトの言葉に従う。

もう、しょうがないなと言いながらビオラは短槍を出した。

「ケガしない程度にね」

ニコニコしながら、兵士の武器を落とし、腕をきめすねを叩き確実に動けなくしていった。


そんなビオラをシシィは上からずっと見ていた。

本当に何者なのだ、この娘は!

自分よりも体の大きな兵士に恐れもせず向かっていく度胸。

笑っているではないか!

ルークは知っているのだな。

ああ、槍の使い方が独特だ。

加えて体術にもたけてる。

あれでは、かなうまい。


「もうやめろ!」


シシィが一喝した。

広場が一瞬止まる。

「ですが、父上。あまりにも侮辱が過ぎます」

「お前にかなう相手じゃない。下がれ」

その時だった。

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