第7話 マネージャー
「失礼します」
ちゃんとノックをしてから会議室に入る。
「やだ!収録今日は休む!響くんのマネージャーがどんな人か見極めてあげるんだから!」
「そんなこといつでもできるでしょうが。早く行きなさい」
中では駄々をこねているお母さんの姿と、それの相手をしている木葉さんの姿が。
「お母さん、何やってるんですか」
おっとついつい敬語が。
そんな救世主が来たみたいなキラキラとした目でこっちを見ないでよ。
「聞いてよ響くん!私には響くんのマネージャーがどんな人か見極めるという何よりも優先しなきゃいけない仕事があるのにね、木葉ちゃんったら早く収録に行けって言うの。ひどくない!?響くんからも言ってあげてよ!」
……ん?何を言ってるんだこの人は。
「早く収録に行ってあげて」
「うわ〜ん、響くんまでそんなこと言う!」
めんどくさいモード全開だ。
木葉さんは今までこれを相手にしていたのか。
お疲れ様です。
だが僕には必殺技がある。
————— 必殺!!!!
「早く行かないと、これからお母さんって呼ばないよ」
「そんなぁ…ぐすっ…行ってきます……」
「はい、行ってらっしゃい」
効果は的面だ。
お母さんはトボトボと会議室を出て行った。
「こうして見ると、どっちが母親なのかわからないわね……」
「ははは……改めましてこんにちは、木葉さん。えっと、僕のマネージャーさんはどこに?」
会議室にはそれらしい人は見当たらない。
「えぇ、こんにちは。今から来るわよ」
お母さんに聞いたことだけど、木葉さんのコミュ症は初めて会った人限定らしい。
一度会った人は普通に話せるんだってさ。
それと、五十嵐って名前は堅苦しいから下の名前で呼んでほしいそうだ。
木葉さんからこの後のレッスンの話を聞いていると、扉がノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは背の低い大学生くらいの女の人だった。
「来たわね」
「はじめまして。
「よろしくお願いします!」
カチッとしてるなぁ。
とても仕事ができそうな感じだ。
ザ・キャリアウーマン!
「こう言っちゃなんだけど、響くんにしばらく仕事は入らないと思うわ。けどレッスンには来ないと行けないし、いつもノラに時間があるわけでも無いしね。これからの送り迎えは河合さんにやってもらうわ」
まぁ、それはそうだろう。
影井さんは本来、お母さんのマネージャーだし。
「それじゃあレッスンに行ってらっしゃい」
「はい!行ってきます」
河合さんがドアを開けてくれる。
そんな従者のような感じじゃなくていいのに……。
ちょっと気まずいな。
やっぱり僕から話しかけるべきなのだろうか。
「あ、あの!河合さんは…えっと、彼氏さんはいますか?」
あぁ…やってしまった。
これもっと気まずくなるやつじゃん。
「ふふ、いませんよ。そうですね……自己紹介も兼ねて、お互いの趣味などを言い合いませんか?」
「はい!もちろんです」
おぉ、ここに神がいらっしゃる。
河合さん、あなたはいい人です。
「ではまず私から。好きな食べ物はトマトスープ。なすびは苦手です。趣味はゲームをする事ですかね」
意外だ。
見た目によらないとはこのことか。
* * *
レッスン室に着いた。
河合さんのことは大分知ることができたと思う。
聞きたいことがあったらまた聞こう。
中から先生っぽい人の声が聞こえる。
すごくハキハキとした聞きやすい声だ。
木葉さんの話によると、今日のレッスンは発声のレッスンらしい。
「失礼します。こんにちは」
部屋に入ると男の人が本を音読していた。
すごい。声だけで肌がビリビリしているのがわかる。
「ん?おう、お前が響か。俺は
「七瀬響です!よろしくお願いします」
良さそうな先生だ。
レッスン楽しみだな。
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