第6話 ママ?
今日の晩ご飯はエビフリャー!
サクサクとした
「そういえば七瀬さんは普段どんなお仕事をしてるんですか?」
「私?私は最近はドラマの収録とエンタメ番組のロケかなぁ」
あれ?七瀬さんって女優さんなの?
そういえば影井さんが自分のことを、光のマネージャーって言ってたような……。
「あの、この状況って大丈夫なんですか?」
「この状況?響くんと一緒に住んでること?」
「はい」
女優さんならファンの人がたくさんいるだろうに。
七瀬さんは多分結婚してないだろうし、養子ができたなんて発表をしているそぶりなんてなかった。
「まぁ、大丈夫でしょ。木葉ちゃんがなんとかしてくれるわ。ああ見えて実はすごくやり手なのよ」
「そんな簡単に……」
まずい気がするんだけどなぁ。
「それで?いつまで敬語なのよ。ずっと待ってるのに『お母さん』とか『ママ』って呼んでくれないし」
「いやだって」
「だってもかってもない!これからは敬語禁止ね!私のことも七瀬さんって呼ぶの禁止」
えぇ……そんな強引な……。
「だってそうじゃないと世間にバレた時にどうするのよ。不仲の親子って言われちゃうじゃない!」
「それはずるくないですか!?」
そんなことを言われてはもう呼ぶしかないじゃないか。
「ひ、光ママ……」
「………」
頑張って呼んでみたのに返事がない。
目を開けてみると、七瀬さんは「ほへ〜」と言ってそうな顔をしてどこか遠い場所を見ていた。
「七瀬さん!?」
* * *
火曜日になった。
今日は初めてのレッスンの日だ。
結局、七瀬さんのことは『お母さん』と呼ぶことで決定した。
学校が終わると、影井さんが車で待っていてくれた。
なんかすごい高級車に見えるような。
ぽるちゃんじゃない?あれ。
「ま、また明日な〜」
「うん、また明日ね」
引き攣った笑みを浮かべた巧と別れて車に乗る。
「おかえりです。それじゃあ行きましょうか」
影井さんがそういうと、車は低い音のエンジン音を鳴らせて揺れなく走り出す。やっぱりこの車、ぽるちゃんだよね!?
ただの学校の迎えでなんて車を……。
「す、すごい車ですね」
「今日の迎えはたまたま私の車だっただけです。次からは普通の事務所の車ですよ」
まさかの個人所有。
影井さんって本当にただのマネージャーさん?
「はい、そうですよ」
え?心読まれてる?
「マネージャーの
絶対違う。
普通じゃないよ!
僕の心境とは反対に車は安定とした走りを見せてくれる。
さっきから全く揺れないんだけど。
高級車ってさすがだな。
いや、影井さんの技術なのかな?
「そういえば光のことを『お母さん』と呼ぶようになったそうですね」
「えぇ、まぁ」
なんで知ってるんだろう。まさか盗聴器!?
「今日ずっと光が自慢して来ました」
ですよね……。
なんかすみません。
「その、私のことも下の名前で読んだりしても…いいんですよ?」
「勘弁してください……」
15分くらいすると、事務所に着いた。
やっぱりでかいよなぁ。
この間、どうしてこんなに大きいのか影井さんに聞いてみると、女優や俳優だけでなく、モデルや歌手、芸人さんなど、さまざまな芸能関係の仕事をしている人たちが所属しているからだそう。
影井さんとは仕事があるとのことでビルの前で別れた。
すでに僕は事務所に所属しているから受付を通す必要はない。
ビルに入ってそのままエレベーターにのる。
今日は僕のマネージャーさんを紹介するから会議室に来てくれと言われている。
「確か35階だったかな」
「36階ですよ」
一緒にエレベーターに乗った人が教えてくれた。
「ありがとうございま…え?」
「こうして話すのは初めてですね。七瀬響さん」
振り向くとそこには姫野さんがいた。
「は、はい。よろしくお願いします」
「姫乃由香里です。よろしくね」
びっくりした。
巧から女優をしているって聞いていたけど、まさか同じ事務所だったとは思わなかった。
エレベーターで二人きり、気まずいなぁ。
「今日はマネージャーさんの紹介でしょ?」
「うん、そうだけど。どうして知ってるの?」
今日が話すのは初めてだし学校でも言ってない。
「前に影井さんに言われたのよ。もし火曜日に同じ学校の子がエレベーターで迷ってたら助けてあげてって」
「なるほど」
影井さんのことも知っているのか。
まぁ同じ事務所だし七瀬さんとも話すだろうから当然っちゃ当然か。
それにしても影井さん、読心術に予知能力ってますます何者かわからないよ。
「ついた。ここね。またわからないことがあったら聞いて。一応先輩だし」
そういえば歳は同じだけど先輩だった。
「あ、ありがとうございます」
「ふふ、タメ口でいいわよ。同年代からかしこまられるのって変な感じだし」
「わかったよ」
良かった、怒られないで。
さて、会議室の中から七瀬さんの駄々をこねる大きな声も聞こえてることだし、入ろうか。
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