『面白い女』・2
――アンリミテッドの少女が気絶してくれたのは幸いだったかもしれない、と彼は思った。
故郷でも散々蔑まれ恐れられ、自分ですら吐き気がするほど憎いこの“姿”を、見られなくて済むのだから。
『次は お前の 足か? それとも 頭 か ? お前なら 、 いい義体 になる』
「これを見てもそう言えるか?」
全身に魔力が巡って、骨格を再形成していく。
なるほどこれは、ほかの魔物や魔族連中、神霊どももこぞって欲しがる訳だ。
体の具合だけじゃない、気分までハイになる。
「さて、俺の右腕――返してもらおうか!」
『お前 その 姿 なんだ …… ! ひ 、 化物、 来る な』
聞き飽きた言葉だ。
彼は“本来”の目線に戻って、怯え切った寄生型の魔物を見下ろした。
『い いやだ 死にたく ない おれは 力が欲しかった だけだ 。 同じ魔物にも馬鹿に されず 人間にも 狩られず 自分だけの力で …… 。おれが 生きられる 力が 。 あの少女は 諦めるから だから』
「知るか」
冷たく吐き捨てて、彼は魔物を掴んだ。
『お前だって その姿で ヒトの心 を 持ったのなら わかるだろう』
魔物は、彼の地雷を踏み抜いてしまった。
「なあ――お前は、何になりたい?」
『え』
裁定の時間だった。ここは悪魔の裁判所。魔王の関所。
真実を口にすれば裁かれ、虚偽を見抜かれれば罰される。
『おれは おれ以外の なにかに 成りたい』
彼は、この場の最高権力者は、判決を下すだけ。
「なら死ね」
魔物は彼の手のひらで、自分の血に生まれ変わった。
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