第2話 手がかり

 両親の葬儀を済ませた桃太郎は、二人を殺した者たちを探し始めた。

 役所にも訴え出たが、簡単に話を聞くだけでろくに調べてももらえなかった。

 近所の者の話によると、二人を襲ったのは頭に角の生えた鬼のような兜をかぶった男たちだったという。噂によると、離れ島に住む「鬼頭衆」という海賊たちが角の生えた兜をかぶって船を襲っているらしい。

 だが、兜の形が似ているだけで犯人と決めつけるわけにもいかない。

 もう少し情報が欲しい。

 桃太郎は町へ出て、人が集まりそうな飲み屋の主に金を渡し、それらしい情報があったら知らせてくれるよう頼んだ。

 数日後、桃太郎のもとに使いの少年がやってきた。件の飲み屋に情報が入ったらしい。さっそく行ってみると、主がニヤついた笑みを浮かべて待っていた。

「だんな、かなり有力な情報じゃないかと踏んでるんですがね」

「聞かせてくれ」

「へえ、まあ、話すのはいいんですがね、まあその」

「なんだ」

 主はニヤニヤするばかりで話そうとしない。仕方がないので、もう少し金を渡した。

「え、いいんですかい? すみませんねなんか、催促じゃないんですよ本当に」

 言い訳がましい前置きをしてから、主は小声で話し出した。

「ゆんべなんですけどね、頭に角の生えたような兜をかぶった男たちが来ましてね、三人でしたかね、見るからに柄の悪い男たちでね、嫌だなぁとは思ったんですけどね、ここんとこ不景気でございましょ、客を選べる身分でもありませんしね、仕方なく入れたんで。そしたら、座ったとたんに気味の悪い話をし始めましてね、なんでも、どこかの村のじいさんとばあさんをやっちまったって話で」

「どこの村か言っていたか?」桃太郎は話をさえぎって尋ねた。

「いやあ、どうでしょ、言ってたかな、いや言ってなかったような」

「ほかには何か言ってなかったか?」

「じいさんには一人息子がいるそうで、えーと、名前は、なんだったっけな」

「思い出せ」

 主は桃太郎の顔色をうかがうばかりで、なかなか答えようとしない。

「欲張りな男だ。ほら」とさらに金を握らせると、へへっと笑ってすぐに金を懐にねじ込んだ。

「さあ、話せ」

「確かね、えーと」

 主はいかにも今思い出したような顔で答えた。

「そうだ、桃太郎とか」

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