サンドバッグな人生
わりにサンドバッグな人生であるな、と突然思いついた。
現在、ケーキ屋さんではサンドバッグのポジションだなあ、と思っている。誰かがやったことも怒られているし、そんなことは言われなくては分からないということでも怒られている。理不尽な怒り。
オーナーさんは、そうやって誰かに理不尽に怒らないと駄目な性格なのだ。そしてときどき、妙に優しい。これって、DVの基本だよね。
思えば、わたしの母もそうだった。
いつも理不尽な怒りを向けられていた。
突然怒り出す。いつも、何で怒るか分からなくて、どうして怒るのかも分からなかった。昨日は大丈夫でも今日は大丈夫じゃなかった。
殴られていたわけじゃない。
だけど、小学五年生のときに死のうかな、と思う程度には傷ついていた。
両親に「勉強しろ」と言われたことは一度もない。
そのことにずっと感謝していたけど、自分が親になって気づいてしまった。
彼らは、わたしがどんな人生を送るか、とか、どのように生きていきたいと望んでいるか、とか、そんなことはどうでもよかったのだ。「普通に」結婚するのだから、個人の「女性の人生」などというものは存在しないのである。ゆえに、勉強なんてしなくていいのである。「普通」だったら。幸いわたしは成績がよかった。
「結婚しろ」「誰とでもいいから結婚しろ」「結婚すれば幸せだ」
文字通りこういうことを言われ、わたしはちゃんと教えてあげた。
本当に、ただ結婚して欲しいだけなら、大学へ行かせなければよかった。高卒で就職させればよかった。大学へ行って、いろいろなものを見て、いろいろなことを考えた。世界が広がったんだよ。
親の思うような「女の人生」に大学は必要ない。ほんとうに必要ない。ついでに言えば、ばかだとよかった。頭が悪い方がよかった。
でもきっと、わたしの母は「勉強が出来る娘」が密かに自慢だったのだ。
くだらない。
ときどき闇落ちするのは、こういう、心の奥底の基盤が欠落しているからだと思う。わたしはずっと「いいこ」だったし、真面目に努力して生きてきたと思う。
でも、そういう生き方そのものが、ほんとうにばかばかしくなる瞬間がある。
一生懸命とか、そういうことを全否定されているから(親に)、なんかときどき、いますぐにでも死んでしまいたくなる。だって、ほんとうにばかみたいだから。
頑張って生きて、ばかみたい。ほんとうにばかみたい。
わたしには泣く場所すらない。
泣きたいときに、帰る場所もない。
わたしが帰りたいのは、一人暮らしをしていた、あの空間だけ。
誰にも傷つけられない、好きなもので囲まれた、あの場所。
あそこに帰りたい。
そうして、一人で泣きたいのだ。
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