浮気

『弁当男子の白石くん』のネタバレがあります。






『弁当男子の白石くん』を読んで、そうだ、わたし、主人公の女の子と同じくらいのとき、母親が浮気をして男のところへ行ったことがある、ということを思い出した。

 思えば、母は髪にストレートパーマをあてたり、下着にこだわったりして、ちょっと変だった。今ならすぐ気づくのに、恋愛モードでなかった、高校一年生では分からなかったのである。


 思えば、小学校のときからおかしかった。

 近所のおじさんと仲良くしていたりして、「こいつは俺の女だ」などと言われていたことを鮮明に覚えている。


 母の浮気と、母からの「結婚するまでは処女でいなさい」という呪いでもって、十代のわたしは、結局のところ男性が怖くてうまく恋愛出来なかった。ああ、勿体ない! もっといろいろしておけばよかった!

 でもまあいいや。

 楽しい二十代だったから。


 父と母は結局離婚しなかった。

 でも、いろいろもめて(当然だけど)、お金のこととか親戚のこととか、いろいろ見てしまった。


 そのようなことがあったのに、母に「結婚が女の幸せ」「結婚すればすべてがうまくいく」「とにかく結婚しろ」「あんたが結婚しないから、わたしは不幸だ」と言われ続け、わたしは傷ついたのです。

 いやあ、傷つくよね?

 意味が分からないよ。


 あのようなことをしでかしても、母にとっては「なかったこと」になっていて驚く。天晴れだ! ほんとうに天晴れ! ある意味尊敬する。絶対に真似しないし出来ないけど。


 自己反省もないから成長もない。

 いや、そんなこと、望んでいない。

 自分で働く気はさらさらなく、誰かに寄生していく人生。

 

 まあいいんだけど、わたしはそうは生きたくない。


 浮気するのは勝手だけど、子どもを巻き込まないでね。

 それから、男を見る目を養っておいて欲しかったな。変な男に捕まったんだよね、結局。それでお金を持って行かれた(と思う)。


 母親と言えど人間だから、心が動くのは仕方がない。

 だけど、母の場合はなんだかなあ、と思う。

 子どもを傷つけた自覚もない。自己反省もない。

 あるかもしれないけど、実に浅い。

 その場がよければそれでいいみたい。




 母から受け取ったのは、主に呪い。

 女性蔑視の呪い。

 男尊女卑の呪い。

 

 母から教えてもらった料理は一つもない。

 家事も、全部自分で学習した。


 離れて、ほんとうによかった。

 母のミニチュアみたいな妹からも、離れて、ほんとうによかった。




 わたしは浮気はしないなあ。

 もし、男性とそういう関係になるとしたら、うっかりの間違い(でも子どもの顔が過るから間違いもない)か、本気だと思う。


 本気で恋の淵に落ちたら、それはもうどうしようもない。

 したがって、それは浮気ではない。



 でもまあ、そんな事態にも陥らない。

 そんな時間もパワーも、ついでにお金もないから。


 たぶん(人生に「絶対」はないので)。



 ちなみに、母が出ていっても、うちにはおばあちゃんがいたので、まあなんとかなっていた。そもそも、わたしの母は家事が苦手だった。特に料理が苦手。

 思い起こせば、この後から、わたしは自分のお弁当は自分で作っていたような気がする。

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